守田です。(20135024 09:30)

前回もご案内しましたが、明日25日、25日と三重県四日市市のバプティスト教会の場をお借りして、連続講演を行います。この際、とくに二日目のお話で原発に関する基礎的なことを話して欲しいとご依頼を受けたのですが、僕はそこでそもそも原発が核開発の副産物としてできたことをお話しようと思います。
そのために過去に掲載した自分の記事などを調べていたのですが、2011年の初夏に何度か出させていただいた「清水ただしの派遣村テレビ」での説明が一番、わかりやすいかと思いましたので、再掲することにしました。
文字おこしもしています。番組と合わせてご覧下さい。(ただし文字おこしが上だけでとまっていたので、後に下の部分も掲載します)

なお、今回、派遣村テレビが放映を終了されたことを知りました。ちょっとさみしい気がしましたが、清水ただしさんがご活躍で忙しいためでしょう。今後の清水さんの活動のますますの発展を祈ってやみません。

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原発は核開発の副産物
http://www.youtube.com/watch?v=GNEhFjWWOp8&feature=related

福島原発での被曝の現実

ともこ 福島で子どもさんが鼻血をだされているそうですね。
守田  大変、深刻ですね。内部被曝が進んでいるのだと思います。
ただし 20ミリシーベルトと言ったり、1ミリと言ったり、文部科学省の態度もあいまいですよね。
守田  子どもさんだけではなくて、大人の方もけっこう鼻血を出されていまして、私が聞いたのでは、東京から避難されてきた女性も鼻血を出されていました。
ただし 東京から・・・
守田  ええ、だから福島だけではないと思います。
ただし もうちょっと政府が正確な情報を出して欲しいですよね。
守田  まったく出さないですね。
ともこ 鼻血っていうと、普通に出たりすることがありますけれど、放射能が原因で出ているってどういうふうな感じなんでしょうか。
守田  内部被曝の初期症状としてあると言われています。他に下痢などがあります。
ただし そういう症状が出たらすぐに病院に行くのが大事ですよね。
守田  ええ、大事なのですけれども、現在の医療ではなかなか(内部被曝としては)診てもらえないのですよね。今日はそのことにも後で触れたいと思います。
ともこ その前に今日はさっき、村長がタイトルを言いました。「原発は核開発の副産物である」。これ漢字が並んでいるんですが、ここをお願いします。

核エネルギーの仕組みとプルトニウム

守田  それでは今日は、原発と核開発についてお話したいのですが、まずはおみせしたいのは、原子力開発、あるいは核エネルギーの仕組みです。ごく簡単にいいますと、まずウランという核分裂性の物資があります。これは天然にある物質で、そのウランが中性子を取り込むと、プルトニウムになります。これは人工的にできる物質です。ここに(ウランかプルトニウム)に中性子が当たると、分裂するのですね。分裂をしたときにエネルギーが出る。これが原子力発電にも使われるし、核爆弾にも使われます。
ただし 凄いエネルギーを多分、出すのですね。
守田  そうです。大変なエネルギーが出ます。エネルギーが出ると同時に、またこの分裂のときに、中性子が飛び出すのですね。飛び出した中性子が次のウランやプルトニウムに当たって、いわゆる核分裂連鎖反応が起きる。一言で言えば、これが一瞬のうちに爆発的に起こるのが原爆。これを制御して、ゆっくり起すのが原子力発電です。
ただし なるほど。つまり原子炉と核爆弾というのは、同じようなものだと言うことですね。
守田  ある意味では連関しているものですね。それで分裂するとどうなるか。次の図をお見せしますが、ここにウラン235と書いてあります。235というのは質量、重さですね。それが分裂すると、だいたいこの質量を二つに割ったぐらい。ここには±95と±138と書いてありますけれど、その物質に分かれます。よくヨウ素131とか聞きますよね。ストロンチウム90とか。だいたいウラン235が割れるとその辺の値の物質になるのです。これが放射性物質、死の灰とも呼ばれるものです。それが飛び出してくる仕組みなのです。
ただし それが一番人体や環境に影響を与えるものなのですね。
守田  そうです。次のグラフを見て欲しいのですが、これは天然ウランの中に、核分裂するウランがどれぐらい入っているかを示したものです。核分裂するウランはウラン235と言いまして、天然ウランの中の0.7%しかないのです。
ただし ほんのちょっとだけですよね。へえ。
守田  あとの99.3%はウラン238といいまして、これは核分裂しないのです。
ただし そうしたら無駄なものというか、必要のないものなのですね。逆に使っているのはほんの少し何ですね。
守田  ところがこれは必要のないものでもないんですが、それはどういうことかといいますと、ウランだけで考えるならば、0.7%ではなかなか核分裂が進まないので、原爆を考えるなら、これを100%近くにもっていかないといけないのですね。これを濃縮といいます。原子力発電の場合は、そこまで高濃度に濃縮しなくていいので、だいたい3%から5%に濃縮して使っています。
ただし これはなかなか技術的に難しいんですよね。ウランの濃縮に成功したとかよくいいますもんね。
守田  そうなのです。難しいし実はこれにもの凄くエネルギーがかかるのですね。それで、もっとうまい方法はないかとなって、実は人類が発見したのが、このウラン238を原子炉の中に入れておくと、ここにも中性子が当たるわけですね。ウラン235の方は、中性子が当たると核分裂しますが、ウラン238はいわば中性子を食べてしまい、違う物質に変わるのです。それがプルトニウムなのです。
ともこ それがあの噂のプルトニウムに。
守田  順番としてはウラン238に中性子があたって、ウラン239になって、ネプツニウム239になって、だんだんに変わっていくのですが、最終的にプルトニウム239が生まれます。つまりこれは人類が人工的に作った核分裂性物質なのです。これが人類の大発見と言われました。ところがこれが発見されたのが、ちょうど戦争の最中だったのですね。1940年代のことでした。
ただし 第二次世界大戦の最中ですね。

原子爆弾と原子力発電

守田  そうなんです。その過程の中で、ウランを濃縮するのには大変時間もエネルギーもかかる。だとしたらウラン238に中性子をあてれば、プルトニウムは幾らでもできてくる。だったらこのプルトニウムを使って原子爆弾を作ろうということになったのです。
ただし プルトニウムもそういうエネルギーがあるのですね。
守田  いやウランよりももっと核分裂しやすい。エネルギーもたくさん出します。それで次に見せる絵は、私は見せるのが嫌なものなのですが・・・。
ただし あ、これは原爆じゃありませんか。
守田  はい。原爆は私達の国は、みなさん御存じなように、広島と長崎に落とされたわけですが、実はアメリカには広島と長崎に二つ落とす理由があったのです。
ともこ なんで、なんで?
守田  それはですね。ウランで作った原爆と、プルトニウムで作った原爆を試したかったのです。
ともこ 実験ですか・・・。
守田  ええ。
ただし 違うタイプの爆弾を落としたかったんや。
ともこ どっちがウランでどっちがプルトニウムですか。
守田  広島がウランで、長崎がプルトニウムです。これは先程も言った、ウランを濃縮して原爆を作るのが早いのか。プルトニウムを作って原爆を作るのが早いのか。当時、アメリカも戦争中ですから、実験をして確かめている余裕がなかったのですね。それでいっぺんに両方、計画を走らせたのです。
ともこ それで6日と9日に・・・。
守田  ええ。6日と9日の分ができてしまって、正確にはプルトニウム型原爆はもう一つ作って、それは7月に実験しているんです。
ともこ どこでですか?
守田  アメリカでです。それで簡単に構造を説明しますと、こんな話はしたくないのですが・・・
ただし 一応、参考までに。
守田  ウランもプルトニウムもそうなのですが、核分裂性物質というのは、ある量をいっぺんにぐちゃっともってくると、核分裂をわっと起すのですね。だから分けていたものをいっぺんにばんとぶつけるのが核爆弾の仕組みで、ウランの場合は、両側にウランをおいておいて、その外側に爆薬をおいておいて、その爆薬が破裂すると、ウランがひっつく。それで爆発させる仕組みなのです。
ただし なるほど。一度、爆弾の中で爆発させて、その勢いやエネルギーでウランを爆発させるということですね。なるほど、なるほど。
守田  ところがプルトニウムの方は、さきほどもいいましたように、ウランよりも核分裂しやすいので、ウランは大きく二つに分けましたけれども、プルトニウムは二つに分けただけで爆発してしまうのです。
ともこ へえー。
守田  なのでもう少し小分けにして、ボールの真中に小分けしてその周りに火薬を配置して、この火薬が爆発して、一気にがっと爆縮するのです。
ただし でもたった一発の爆弾で、何万人という人の命や建物が奪われるわけじゃないですか。凄いエネルギーですよね。
守田  もの凄いエネルギーであると同時に、本当に残酷です。それから何カ月もかけて、どんどん、手の施しようもなく、人が亡くなっていきました。核心問題は、このプルトニウムを作るためにどうしたらいいのかです。さっき、原子力発電と核爆弾の違いということを言いましたけれども、実は、ゆっくり核分裂反応をさせて、プルトニウムを作るというのが、もともとの原子炉の目的なのです。つまりプルトニウムを作るときに爆発したら大変ですよね。
ともこ はい、はい、はい。
守田  だからプルトニウムを作る過程では、ゆっくり核分裂をしないと、プルトニウムを取り出すこともできないわけです。それで作られたのがもともとの原子炉なのですよ。この場合の原子炉はプルトニウム生産炉と呼びます。ところがプルトニウムを作るときに、核分裂していますから、核分裂でエネルギーがたくさん出て、熱がたくさん出るわけですね。この熱をどうしようか。それで水とか、冷却材を回すわけですね。それでそれが熱をもって出て来る。これ何かに使えないか。タービンを回してしまおう。ということで出てきたのが原子力発電なのです。
ただし ということは、もともとは爆弾というか、兵器を作る過程でそのエネルギーを何かに利用しようということでタービンを回したのですね。
守田  そうです。
ともこ だから副産物なんだ。
守田  特に戦争が終わって、それが何か他のものに利用しないと、作ったものが無駄にもなってしまう。それで一つの説としてあるのが、原子力潜水艦に使おうではないかということで、エネルギーに使うということが出てきたという話です。
ただし その当時から安全性は二の次、三の次という感じですよね。
守田  そうですねえ、その場合、二の次、三の次と言っても、作っている側にとっても、爆発したら困るのですね。ですから制御はできなくてはいけない。ただ軍事用ですから、多少、放射能が出てもそんなことは関係ないと思うような人殺し兵器ですから。そのような形で作られたということを頭に入れておく必要があると思います。

下に続く