守田です。(20130706 11:00)

原発再稼働に向けて電力会社が動きを加速しつつあります。これに対して新潟県知事が真っ向から反対を唱えています。知事は原子力規制委員会の新基準にも反対を鮮明にしています。素晴らしい。県民と周辺の方たちの命を守ろうとする知事を応援しましょう。
同時に再稼働の動きに対抗する意味も込めて、みなさん、ぜひそれぞれの地域で、原発災害対策を進めて欲しいと思います。自治体で取り組むのがベストですが、それが不可能なら自治会レベル、市民運動レベル、職場レベル、学校レベル、友人レベルなど、それぞれの単位で対応を検討してください。

災害対策を進めるのは、再稼働を認めることではありません。原発災害は福島原発4号機が示しているように、事故は稼働してなくても起こりえます。そのため放射線防護を本気になって推し進めるためには災害対策への真剣な取り組みが必要です。
またこの取り組みを進める中で、必然的に多くの方と原発とは何か、どのようなものなのかという点をリアルに認識していくことができます。そのためにぜひ取り組んでいただきたいのです。

原発災害に対する備えとしてどのようなことが必要なのか。あるところで講演した内容を、知人がネットにアップしてくれていました。最近になって知りました。
分かりやすいようにテロップも入れてくださっています。ちょっと恥ずかしくもあるのですが、ともあれ必要なことをきれいに切り取ってくださっていますので、見ていただけたらと思います。

原発災害に備えよう
守田敏也
http://www.youtube.com/watch?v=2RxGAXsgWlQ

以下、こうした講演の時に配っているレジュメを貼り付けておきます。これまでも何回か掲載したものの更新版です。
ビデオとあわせてご活用ください。

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原発災害に対する心得(20130706更新)

知っておきたい心の防災袋(防災心理学の知恵)
1、災害時に避難を遅らせるもの
○正常性バイアス⇒避難すべき事実を認めず、事態は正常と考える。
○同調性バイアス⇒とっさのときに周りの行動に自分を合わせる。
○パニック過大評価バイアス⇒パニックを恐れて危険を伝えない。
○これらのバイアスの解除に最も効果的なのは避難訓練

2、知っておくべき人間の本能
○人は都合の悪い情報をカットしてしまう。
○人は「自分だけは地震(災害)で死なない」と思う。
○実は人は逃げない。
○パニックは簡単には起こらない。
○都市生活は危機本能を低下させる。
○携帯電話なしの現代人は弱い。
○日本人は自分を守る意識が低い。

3、災害時!とるべき行動
○周りが逃げなくても、逃げる!
○専門家が大丈夫と言っても、危機を感じたら逃げる。
○悪いことはまず知らせる!
○地震は予知できると過信しない。
○「以前はこうだった」ととらわれない。
○「もしかして」「念のため」を大事にする。
○災害時には空気を読まない。
○正しい情報・知識を手に入れる。

原発災害にどう対処するか
1、原発災害への備え
○災害対策で一番大切なのは避難訓練。原発災害に対しても避難訓練が有効。
何をするのかというと、災害がおこったときをシミュレーションしておく。
○家族・恋人などと落ち合う場所、逃げる場所を決めておく。
○持ち出すものを決めておき、すぐに持ち出せる用意をしておく。

2、情報の見方
○出てくる情報は、事故を過小評価したもの。過去の例から必ずそうなる。
○原発は最初に計器やメーターが壊れ、事態が把握できなくなりやすい。運転員も正常性バイアスにかかりやすく、事故の認知が遅れる。
○「直ちに健康に害はない」=「直ちにでなければ健康に害がある」と捉える。
○周囲数キロに避難勧告がでたときは、100キロでも危険と判断。

3、避難の準備から実行へ
○災害を起した原発と自分の位置関係を把握。基本的には西に逃げる。
○マスク、傘、雨合羽必携。幾つか代えを持つ。とくにマスクは頻繁に変える。高いものでも惜しまずに捨てる!
○お金で買えない一番大事なものを持ち出す。その場に戻ってこられないと想定することが大事。どうでもいいものは持っていかない。
○可能な限り、遠くに逃げる。逃げた先の行政を頼る。
○雨にあたることを極力避ける。降り始めの雨が一番危ない。
○二次災害を避けるべく、落ち着いて行動する。
○避難ができない場合は屋内に立て篭る。水・食料を備蓄しておく。(最低一週間分)
○立て篭る場合は換気扇やエアコンは使わない。すきま風が入る場合は目張りする。
○避難のときも立て篭るときも、外気に触れたときは、うがい手洗いを徹底する。
(放射性物質への対応には、インフルエンザ対策、花粉症対策が大変有効!)

放射線被曝についての心得
1、福島原発事故での放射能の流れと情報隠し
○福島原発事故では風の道=人の道に沿って放射能が流れた。
○被曝範囲は東北・関東の広範囲の地域。京都にも微量ながら降っている。
○SPEEDIの情報隠しなど、東電と政府の事故隠しが被曝を拡大した。

2、知っておくべき放射線の知恵
○放射能から出てくるのはα線、β線、γ線。体への危険度もこの順番。
○空気中でα線は45ミリ、β線は1mしかとばず、γ線は遠くまで飛ぶ。
○このため外部被曝はγ線のみ。内部被曝ですべてのものを浴びる。
○より怖いのは内部被曝。外部被曝の数百倍の危険性がある。(ECRR)
○外部被曝を避けるには必要なのは、放射線を遮蔽すること、線源から離れること、線量の少ないところにいくこと。
○内部被曝を避けるために必要なのは、汚染されたチリの吸い込みを避けること、汚染されたものを飲食しないこと。
○放射能には半減期(放射線を出す力が半分になる期間)があり、事故直後は半減期の短いものもたくさん出る。
○そのため事故直後が一番放射線値が高い。とにかくとっと逃げるが勝ち!
○まずは逃げて原発の状態や事故の推移はあとから確認する。安全が確認できてから戻ればよい。

3、放射能との共存時代をいかに生きるのか
○元を断つ。
○被曝の影響と向き合う。被曝した人を労わる。あらゆるヒバクシャ差別とたたかう。
○放射能以外のものも含めてあらゆる危険物質を避け、免疫力を高める。
○汚染水を避け、味噌と玄米を食べ、白砂糖を避けるのが手っ取り早い対処。(長崎原爆時の秋月医師の指示)
○前向きに生きる。楽しく生きる。意義深く生きる。そのことで免疫力がアップする。