守田です(20230102 23:30)

● 動画「やさしい経済の話」で社会的共通資本とは何かをお話しました

社会的共通資本に関する連載を始めます。まずは動画と文字起こしをお届けします。
全部で12本。毎回、6分前後ぐらいにまとめてあります。1回目はこれです。

もともとは2019年2月23日に宇治市で講演したもの。
宇治市政に挑戦し、その後、市会議員に当選された佐々木まゆみさんの応援の場でした。
「やさしい経済 うちらの暮らしと民営化」というお題をいただいて話しました。
その後、佐々木さんのYouTubeに上げていただいた後に、もりもりチャンネルにも動画を分けていただきました。

全編で約90分ですが、岸田政権が登場した時に、見やすいように僕の講演部分を細かく切ってアップしました。
「新しい資本主義」のまやかしの批判のためです。
2023年、みなさんと社会的共通資本についての論議を深めたいと考え、文字起こしを加えて連載することにしました。

ぜひご覧下さい。なお司会や佐々木さんの挨拶も入った全編(約90分)は以下からご覧になれます。
https://youtu.be/z0GM1Mv4XGA

● やさしい経済のはなし (文字起こしです) 

今日は「やさしい経済のはなし」ということで、社会的共通資本についてお話します。
ここに本を示しましたが、宇沢弘文先生は有名な経済学者です。
もうお亡くなりになったのですけれども、僕はその最晩年の弟子なのです。
宇沢先生からたくさんのことを学びました。

今日は「やさしい経済」とありますが、「やさしさ」には二つあります。
一つはやさしく分かりやすく経済の話をするという意味。
もう一つは宇沢先生の経済学は人にやさしい経済学だということです。

佐々木さんもおっしゃったけれど、何か経済成長と命の問題が対立するかのように言われたりしています。
昨日も他のところで講演した時にこんな話を聞きました。
「お父さんと話すと論争になる。命が大事なのか、経済が大事なのか」みたいにと。

本来、これは一つなのですよ。経済って命のことなのですよ。
人が生きていく、そのためのものをどう豊かにすればいいのかということです。

● 社会を良くしようと経済学者になったけれど

それで宇沢先生はどういう方なのというと、もともと旧制一高の時にお医者さんになりたかったそうです。
お医者さんになりたい人は、ギリシャの医の聖人、ヒポクラテスと対話します。
そのヒポクラテスが「医療はアートだ」という言い方をしている。

宇沢先生は、その「アート」というのを本当の美術と勘違いしてしまった。
自分は美術の才能がないからダメだと思ってしまったのです。

それで数学者になるのですけれども、かなり天才的な力を発揮されました。
しかし戦後に人々が飢えていることを前に悩まれた。
こんな時に「数学なんて高尚な学問をやっていて良いのか」と。

それで「お医者さんは人を救うけれども、自分は経済学者になって社会を救おう」と考えた。
それで経済学者になったのだそうですが、この話の宇沢先生の「おち」はこうなのです。
「ところが社会を悪くしていたのが経済学だったんだね!」

宇沢先生の盟友でジョーン・ロビンソンさんという女性の経済学者がいました。
この方もずいぶん前に亡くなられましたが、ケインズという経済学者の高弟です。
そのジョーン・ロビンソンさんはこう言いました。
「経済学を学ぶのはなんのためか。経済学者に騙されないためだ」。

今日のお話もそんな内容になります。
経済学(特にいまの主流派のそれ)ってかなりインチキな学問です。

● 投資とは何か

話のとっかかりとして、「投資と投機」の違いから見ると分かり易い。
この言葉で現代世界の矛盾をかなり説明できます。

この「投資と投機」に対し(とくに投機への)対抗概念として「社会的共通資本」を出しました。
どういうことかというと、投資というのは典型的には社会的事業、例えば鉄道建設をお金を集めて行うことです。
それを行う銀行はもともと儲けを目指してはいけないのです。

日本では古くはどういう方が担ったのかというとお坊さんでした。とくに禅宗のお坊さんでした。
鉄道はとても一人の資産では作れない。だからお金を集めてそれで事業を行う。

佐々木さんの選挙にお金を集めるのもある意味では投資ですよね。
ただし投資の場合は、「そこで儲かったらお金を返してね」ということですから、ちょっと選挙とは違いますけれど。

ともあれ鉄道を通じて社会に潤いを生み、その中で利潤を得る。
本来、これらを司るのが金融=銀行の役割なのです。

● 弁慶の勧進帳

カンパを募って社会的事業を行うことを勧進(かんじん)と言います。(仏教の言葉です)
行う人を勧進聖(かんじんひじり)といいます。
なぜお坊さんができたのかと言うと、お坊さんは自らを俗世間から絶っている人です。
だから俗世的な利益では動かないだろうということで、公共的なことはお坊さんがやる、となっていた。

これが歌舞伎で有名な弁慶の「勧進帳」の話になっています。
義経一行は、逃げていくときに山伏の格好をしていたのですよね。
ところが石川県の小松辺りの安宅関で検問にあってしまうわけです。

その時に「自分たちは勧進聖だ。燃えてしまった東大寺を再建するのだ」と語った。
「だったら勧進帳を読んでみろ」と言われて、弁慶が白紙の巻物を広げて朗々と読み上げる。
それが歌舞伎の演目「勧進帳」です。
(勧進帳に書かれていたのは寄付金をあおぐ趣旨。なおこのストーリーは後世の創作です)

この勧進は、典型的に社会的事業への投資を募る行為です。
古くから、つまり資本主義時代の前から行われていることなのです。

● 投機とは何か

これに対して投機はまったく逆なのです。
事業への投資とではなく、利ざやだけを目的に株を買い、上がったら売り抜いて儲ける。

例:鉄道会社の株を買う⇒経営陣にリストラを迫る⇒経営努力をしていると株価が上がる⇒売り抜いて利潤を得る⇒会社や事業が悪くなろうとおかまいなし。

これ、ばかばかしいことですが、労働組合を潰したり、正規雇用を減らすと「企業努力をしている」となる。
それで株価が上がるのです。上がったらすぐに売り抜いてしまう。
その会社がその後にどうなろうと「後は野となれ山となれ」なのです。
こんなことが今、横行しているのです。

特に優秀な社員の首を切るとその分だけお金が浮きます。そうすると一時的に利潤が上るように見える。
もちろん長期的に見たら、優秀な社員を切ってしまうわけだから、会社は地盤沈下してしまう。
でもその前に株を売ってしまえば、儲けだけが得られます。
それがアホみたいなのですが、全世界的に起こっていることです。

そんなことだから世界の名だたるブランド企業が、データの偽造をしたり、ごまかしをしたりするわけです。
かつてだったらあり得ないようなことが横行しているのです。

続く

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