守田です。(20130219 23:30)

[注意] 文中に出てくる原発30キロ圏内の自治体の対応の記述に一部誤りがありました。伊方原発と玄海の原発の情報を混在させてしまいましたので、訂正いたします。どうもすみませんでした。(0220 12:00追記)

国の新たな「原子力災害対策指針」が昨年10月31日に発表され、本年1月24日に検討課題とされていた細かい点が決まりました。これを受けて原発三十キロ圏にある二十一都道府県と百三十市町村が「災害対策重点地域」となり、この3月18日をめどに、新たな原子力災害対策計画を作ることが義務つけられました。
まさに今、多くの自治体が新たな計画の策定にてんやわんやになっていると思いますが、東京新聞の調査によると、なんとこのうちの4分の1の三十八市町村が、検討作業をコンサルタント会社などに丸投げしていることがわかりました。
大変、由々しき事態であるといわざるをえません。
この「原子力災害対策指針」については、原子力規制委員会のパグリックコメント応募に合わせて、分析と批判を書いてきましたので、以下を参照していただきたいと思います。(なお622から連番の間違いがありましたので訂正しています)

明日に向けて(621)過酷事故を前提とした「原発災害対策指針(原子力規制委員会)」を批判する!(1)
http://toshikyoto.com/press/608

明日に向けて(622)あまりに狭すぎる災害対策重点地域・・・「原子力災害対策指針(原子力規制委員会)」を批判する!(2)
http://toshikyoto.com/press/611

明日に向けて(623)福島4号機の危機を見据えた現実的な災害対策指針の策定を!
http://toshikyoto.com/press/613

明日に向けて(624)自治体自らの判断に立った原子力災害対策を!(京都市への意見提出から)
http://toshikyoto.com/press/617

最後の(624)の記事では、各自治体が国の指針を鵜呑みにせず、福島4号機をはじめ、福島第一原発が危機に発展しうる可能性がまったく除外されていることや、燃料プールの危険性の問題が排除されていることなど、指針の限界をしっかりと見据え、災害対策重点区域の設定の仕方から見直すべきであること、そのために自治体自らが判断主体となって計画を立てなければならないことを強調しました。

ところが2月8日付の東京新聞の記事では、先にも述べたように、4分の1の自治体が、コンサルタント会社への丸投げをしており、「原発が集中的に立地する福井県の若狭湾周辺では、自前で計画をつくる自治体より、外注の方が多かった」ことが分かりました。
まったくひどい事態です。そもそもこの日本で、原発の危険性をきちんと把握して、災害対策計画を作れるコンサルタント会社などあるでしょうか。
事実、東京新聞は「新潟県のある自治体担当者の元には、別の自治体から委託を受けたコンサルタント会社の担当者が「うちは原子力関係の実績がない。自治体から仕事をもらったのはいいが、困っている」と、逆に相談を求めてきたケースもある」など、コンサルタント会社側も当惑している実態の一端を紹介しています。

これに対してどうすれば良いのでしょうか。ぜひとも市民が関わる必要があります。まずはご自分の自治体に出向き、新たな原子力災害対策計画をどのように作ろうとしているのかを尋ねてください。その際、福島原発の事故の拡大や、燃料プールの危険性などを無視している、国の指針の災害対策区域にとらわれずに対話してください。
そして業者への委託の有無を含む、計画策定過程の公開を求め、そこへの市民の参画を求めてください。そうして自分たちで自分たちの安全を守る計画を立てていく必要があります。

そのための貴重な情報を東京新聞が掲載してくれているので、以下、紙面より書き写します。各電力会社の原発ごとの三十キロ県内の市町村の一覧です!

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【重要】原発30キロ圏内の自治体の、原子力災害対策への取り組みの姿勢
(×はコンサルタント会社などに外注、△は計画の一部を外注、○は自前で策定、-は策定する状態にない)

北海道電力 泊(北海道)
× 積丹町
△ 余市町
○ 北海道、泊村、岩内村、共和町、神恵内村、倶知安町、古平町、仁木町、蘭越町、寿都町、赤井川村、ニセコ町

東北電力 東通(青森)
× なし
△ なし
○ 青森県、東通村、むつ市、横浜町、六カ所村、野辺地町

東北電力 女川(宮城)
× 涌谷町、東松島市
△ なし
○ 宮城県、女川町、石巻市、南三陸町、登米市、美里市

東京電力 福島第一、第二(福島)
× 小野町、南相馬市、川内村
△ いわき市
○ 福島県、葛尾村、田村市、広野町、飯舘村
- 大熊町、双葉町、浪江町、富岡町、楢葉町

日本原子力発電 東海第二(茨城)
× 常陸大宮市、城里町、高萩市、鉾田市、大子町
△ なし
○ 茨城県、東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市、水戸市、大洗町、茨城町、笠間市

東京電力 柏崎刈羽(新潟)
× 長岡市、小千谷市、見附市、十日町市
△ 上越市
○ 新潟県、柏崎市、刈羽村、出雲崎町、燕市

中部電力 浜岡(静岡)
× なし
△ 牧之原市
○ 静岡県、御前崎市、菊川市、掛川市、吉田町、島田町、袋井市、磐田市、森町、藤枝市、焼津市

北陸電力 志賀(石川)
× 志賀町、中能登町、羽咋市、かほく市
△ 宝達志水町
○ 石川県、七尾市、輪島市、穴水町、富山県、氷見市

関西電力 高浜、美浜、大飯 日本原子力発電 敦賀(福井)
× 南越前町、越前町、おおい町、高浜町(福井)揖斐川町(岐阜)高島市(滋賀) 
× 舞鶴市、綾部市、南丹町、京丹波町、京都市、福知山市、伊根町(京都)
△ 敦賀市、越前市、鯖江市(福井)
○ 福井県、美浜町、小浜市、福井市、池田町、若狭町(福井)岐阜県(岐阜)滋賀県、長浜市(滋賀)京都府、宮津市(京都)

中国電力 島根(島根)
× なし
△ なし
○ 島根県、松江市、出雲市、雲南市、安来市(島根)鳥取県、境港市、米子市(鳥取)

四国電力 伊方(愛媛)
× なし
△ なし
○ 愛媛県、八幡浜市、宇和島市(愛媛)、山口県、上関町(山口)

九州電力 玄海(佐賀)
× なし
△ なし
○ 佐賀県、玄海町、唐津市、伊万里市(佐賀)長崎県、松浦市、平戸市、壱岐市、佐世保市(長崎)福岡県、糸島市(福岡)

九州電力 川内(鹿児島)
× 姶良市
△ なし
○ 鹿児島県、薩摩川内市、いちき串木野市、阿久根市、出水市、さつま町、鹿児島市、日置市、長島町

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とくに「×」の自治体に住まわれている方は、すぐに役所に問い合わせにいってください。特に若狭湾の原発群の周りが酷いです!無責任な丸投げが進行中です!

一方で東京新聞は幾つかの自治体が積極姿勢を見せていることも紹介していますので、当該部分を引用します。
「長崎県佐世保市や松浦市は既に避難ルートや避難者の受け入れ先も決め、市内各地で住民説明会を開いた。北海道ニセコ町は、地形を考慮しない規制委の放射性物質の拡散予測では不十分と、独自の予測をし、より現実に近い計画づくりを模索している。
職員不足の問題も、北海道の泊村、岩内町、共和町、神恵内(かもえない)村のように合同で計画をつくれば、ある程度は解消でき、計画に面的な広がりもでる」

これらを参考にしつつ、ぜひそれぞれの自治体で、より市民の生命を守るに足る原子力災害対策計画を生むべく、積極的にアプローチしてください。

最後に、丸投げを報じた東京新聞の記事を紹介しておきます。

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軽すぎる原発防災計画 4分の1自治体、丸投げ
東京新聞 2013年2月8日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013020802100004.html

重大事故が起きた際に住民を守るため、原発周辺の自治体は三月をめどに避難ルートなどを盛り込んだ地域防災計画をつくるが、四分の一に当たる三十八の市町村が検討作業をコンサルタント会社などに丸投げしていた。本紙の取材で明らかになった。業者任せでは、机上の計画になりかねず、住民の安全確保につながるのか疑問が残る。 

本紙は、原発三十キロ圏にある二十一道府県と百三十市町村すべてに電話で外部委託の有無を確認した。東京電力福島第一原発の事故で、役場機能が移転している双葉町など福島県内の五町は集計から除いた。
取材の結果、三十八の市町村が、計画づくりの作業全体をコンサルタント会社や行政と関係の深い出版会社に委託。八市町が住民の避難計画などを部分的に委託していた。
津波対策などと合わせて発注しているケースも多いが、委託費用は百七十万~二千八百万円と幅があった。

福島の事故を受け、重点的に防災対策を進める区域が大幅拡大され、初めて計画をつくる自治体が急増。外注している三十八市町村のうち、三十一は新たに区域入りした市町村で占められていた。
事故の際、自治体は住民の避難や内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の配布など重要な役割を担う。それだけに、地域を熟知する自治体が、自ら防災計画をつくるのが本来の姿。
だが、外部に委託した自治体の担当者に、理由を聴くと「担当職員が一人しかいない」「原子力災害の知識が不足している」などを挙げた。

外注する自治体の比率は地域によって大きく異なっていた。原発が集中的に立地する福井県の若狭湾周辺では、自前で計画をつくる自治体より、外注の方が多かった。東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や四国電力伊方原発(愛媛県)の周辺自治体も外注と自前がほぼ同数だった。
一方、中国電力島根原発(島根県)と九州電力玄海原発(佐賀県)の周辺で委託はゼロだった。

<地域防災計画> 福島第一原発事故の反省から国の指針が改定され、重点的に防災対策を進める区域(UPZ)が、原発8~10キロ圏から30キロ圏へと拡大された。これに伴い区域内の自治体数は15道府県45市町村から21道府県135市町村へと3倍に増えた。住民の避難先や避難手段の確保などを検討、3月18日をめどに計画をつくるが大幅に遅れる自治体が続出する見込み。