2013.02.11

明日に向けて(621)過酷事故を前提とした「原子力災害対策指針(原子力規制委員会)」を批判する!(1)

守田です。(20130211 23:00)

福島第一原発事故を踏まえた、国の新たな「原子力災害対策指針」が、「原子力規制委員会」より昨年10月31日に打ち出されました。そこでは緊急時のおける判断や防護措置実施基準、および安定ヨウ素剤配布の基準が、検討課題として残されましたが、本年1月24日の会合でそれが決められました。
原子力規制委員会は、この原子力災害対策指針案へのパブリックコメントの募集を始めましたが、たったの2週間しか日をおかず、明日12日に締め切ろうとしています。非常に拙速です。

以下、昨年10月に出された「原子力災害対策指針」と本年1月に出された細目の付け足しのアドレスを示しますので、ぜひ参考にしてください。
また市民グループのFoE JAPANより、この指針に対する包括的な批判の文章が出されていますので、参考にしてください。パブリックコメントについては、締切が明日で、ギリギリの紹介になってしまって恐縮ですが、同じくFoE JAPAN から雛形が出ていますので、可能な方はぜひ挑戦してください。FAXやメールでの提出が可能です。

原子力災害対策指針
2012年10月31日 原子力規制委員会
http://www.nsr.go.jp/activity/bousai/data/saitai_shishin.pdf

原子力災害対策指針(改定原案)の概要について
2013年1月 原子力規制庁 原子力防災課
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130130/130130-02.pdf

原子力災害対策指針(防災指針)に関する問題点
2013年1月30日 FoE Japan
https://dl.dropbox.com/u/23151586/130123_bousai_factsheet.pdf

☆みんなの声を☆原子力災害対策指針がパブコメに【締切2/12(火)】
2013年1月30日 避難の権利ブログ
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-0971.html

指針の概要と、包括的な批判については、上述にゆずり、ここでは最も重要なポイントを指摘しておきたいと思います。
原子力規制委員会が策定中の、原発の「新安全基準」と等しく、この原子力災害対策指針では、原発防災に関する重大な変更、一言で指摘すれば、過酷事故が起こりうることを前提とした対策が出されつつあり、この重大な意味をまずはおさえなくてはいけません。
これは従来の、「原発は5重のシールドで守られているから、環境に影響のあるような放射能漏れは絶対に起きない」としてきた立場からの大転換です。いわば「過酷事故は起こります。だからその場合の防災対策を決めます」と言いだしたということです。
僕はこの点が最も重要で、是非とも全国津々浦々で、この重大な意味を受け止め、大討論を巻き起こして欲しいと思います。

具体的なポイントを「指針」から引用します。

***

「前文」より
「平成23年3月に東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故が起こり、従来の原子力防災について多くの問題点が明らかとなった。」

「第1原子力災害」より
「原子炉施設においては、多重の物理的防護壁が設けられているが、これらの防護壁が機能しない場合は、放射性物質が周辺環境に放出される。その際、大気へ放出の可能性がある放射性物質としては、気体状のクリプトンやキセノン等の希ガス、揮発性のヨウ素、気体中に浮遊する微粒子(以下「エアロゾル」という。)等の放射性物質がある。
これらは、気体状又は粒子状の物質を含んだ空気の一団(以下「プルーム」という。)となり、移動距離が長くなる場合は拡散により濃度は低くなる傾向があるものの、風下方向の広範囲に影響が及ぶ可能性がある。また、特に降雨雪がある場合には、地表に沈着し長期間留まる可能性が高い。
さらに、土壌や瓦礫等に付着する場合や冷却水に溶ける場合があり、それらの飛散や流出には特別な留意が必要である。
実際、平成23年3月に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故においては、格納容器の一部の封じ込め機能の喪失、溶融炉心から発生した水素の爆発による原子炉建屋の損傷等の結果、セシウム等の放射性物質が大量に大気環境に放出された。また、炉心冷却に用いた冷却水に多量の放射性物質が含まれて海に流出した。
したがって、事故による放出形態は必ずしも単一的なものではなく、複合的であることを十分考慮する必要がある。」

***

一見して明らかなように、この「防災対策指針」は、原子炉の「防護壁が機能しない場合は、放射性物質が周辺環境に放出される」ことを認め、それを前提にした防災対策を施すことを目的にしています。大前提として「私たちは過酷事故の可能性を承知で原発を動かします」ということが織り込まれているのです。
まずはこれを許容するのかどうなのかを、国民・住民の間で十分に論議しなくてはなりません。もちろん、僕はこんなもの、絶対に受け入れてはいけないと思っていますが、しかしこの最も重要な点を、どのマスコミもきちんと報道していない。だから「こんなものをみなさんは受け入れますか?」という点を広く訴える必要があるのです。福島原発事故前まで続いていた、「絶対に重大事故は起こさない」という大きな約束が捨てられていることをです。
この点をスルーさせてはなりません。このような「防災指針」を持ち出しただけで、即座に、すべての原発の永劫停止と廃炉を決するべきなのです。そのことを私たちはハイライトしていく必要があります。

そもそも、これまで原発の危険性を唱える多くの人々が、過酷事故の可能性を指摘していたにもかかわらず、原子力推進サイドがまともな防災体制をとってこなかったのは、この可能性を認めたくなかったからです。なぜか、認めれば運転ができなくなると想念されてきたからです。しかし今、事故があまりにも大きく、人々の感覚がともすれば麻痺もしている中で、過酷事故を前提にした運転に漕ぎ着けようとしているのです。
そのために拙速で作られようとしてるのが、新たな「防災対策指針」の中身でしかありません。このことに批判を集中しなければなりません。

そのことは実は次の点に如実に現れていいます。事実上、過酷事故を前提にするといいつつ、他方で、福島第一原発事故の重大な教訓をすっぽり欠落させていることです。それは福島第一原発4号機の燃料プールの問題です。
「原子炉施設においては、多重の物理的防護壁が設けられているが」と「指針」は書いていますが、それは原子炉内にある放射性物質のこと。使用済み燃料プールは、まったくそんなことはありませんでした。多重の防護壁なんか全くなかった。だから冷却できなくなって、すぐに大量の放射能が飛び出してきてしまいまいた。それがこの事故が明らかにした重大教訓でした。
しかも事故で壊れたプールからの核燃料の取り出しがあまりに困難なために、4号機の危機は未だに深刻なままに継続中です。大きな地震が原発サイトを襲った時に、再び現場が大危機に陥る可能性があります。最悪の場合は、溶け出した燃料棒に対処できなくなり、原発サイト全体を放棄せざるをえまえん。そうなれば、福島第一原発の全ての原子炉が破局を迎えてしまいます。(この他、共用の巨大燃料プールもあります)

したがって、「防災対策指針」には、福島第一原発事故の悪化、破局化の想定と、その対策を盛り込むことが絶対に必要です。その場合の避難計画は、政府が2011年3月にこっそり作ったもので半径250キロです。これを想定することは並大抵なことではありませんが、しかし現実に可能性がある以上、絶対にやらなければならないことです。
同様に、他の全ての原発サイトでも、たとえ運転が停止していても、同じ危機があることが見据えられる必要があります。その意味で、全原発の停止と廃炉が決定されてもなお、各原発での燃料プール事故を想定した原子力災害対策が必要です。
運転中の過酷事故の可能性を、運転の完全停止によって確保しつつ、なおかつ、停止後の原発が安全状態に達するまで、私たちは深刻な事故に備え続けなければならないのです。

そうなったらどうなるのか。もちろん放射能がどう流れるかなど、なかなか予測は立てにくいし、半径250キロ圏内の完璧な避難計画など、立てようもないでしょう。しかし何もしないよりはましです。とくに有効なのは、国民・住民が、それぞれで事故を想定し、覚悟を決め、いざというときの対処をシュミレーションしていくことです。
その場合、大事なのは「やらないよりやったほうがまし」「被曝は少しでも減らした方が有利」という観点にたち、今できることから想定をはじめることです。
安定ヨウ素剤についても、原発から250キロ圏内で容易する必要がある。とても全員分は無理でしょうから、子ども、女性など優先順位も決める必要があります。またこれだけ広範囲で服用すれば、副作用の発生の可能性は十分にありますから、その医療カバーの体制も考えていく必要があります。
一つ一つ、完璧には無理でも、今からできるだけの対処を積み上げることが大事です。そのためには貴重な血税を、目的の不明確な公共事業などに使うのではなく、この原子力災害対策にこそ投入していく必要があります。そのための専門要員も増やし、雇用創出もしていくと良い。原発関連施設の雇用をそこに配分していけば、合理的な体制の創出は可能なはずです。
そしてそのためにも、原発の完全廃炉と一緒に、安全対策が進められるべきなのです。その先には、どうあっても処理しなければならない、各原発内の膨大な核のゴミへの対処も待っています・・・。

ともあれ、過酷事故を前提とした運転など認めさせてはいけません。同時に、福島原発4号機が未だ大きな危機を抱えていること、またそれぞれの原発も運転が停止してもなお燃料棒がある限り、危険性があることを見据えた原子力災害対策を打ち立てることが必要です。
そのための具体的な方策としてぜひ行っていただきたいのは、みなさんのそれぞれの自治体が、どのような対策を行おうとしているのかを問い、そこへの可能な限りの市民参加を実現することです。この点についてはまた稿をあらためて提案します。

市民の努力でこそ、少しでも安全マージンを拡大していきましょう!

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