2013.02.14

明日に向けて(624)自治体自らの判断に立った原子力災害対策を!(京都市への意見提出から)

守田です。(20130214 14:30)

12日に国の原子力規制委員会に、原子力災害対策指針に対するパブリックコメントを提出し、これを援用しつつ、13日に京都市の「京都市地域防災計画 原子力災害対策編」(骨子)に対する意見書を提出しました。
その際、他の自治体に意見提出しようとしている知人から、京都市に出したものも参考までに見せて欲しいとの依頼があり、すぐに送ったのですが、これもこの場に掲載しておこうと思い立ちました。
自治体の多くが、国の指針を鵜呑みにしているのが現状だと思われますので、「そのままでは過酷事故を前提とした原発の運転という政府方針の大転換を認めてしまうことになる」というところから初めて、原子力規制委員会の指針を無批判的に前提にしてはいけないことを強調しました。
これも一つの参考に、ぜひそれぞれの自治体の原子力災害対策指針を市民の側からチェックし、より現実的な防災体制を築くことを訴えてください。

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京都市自らの判断に立った原子力災害対策を!

「京都市地域防災計画 原子力災害対策編」(骨子)に対する意見を申し上げます。
まず概論を申し上げます。骨子の策定にあたっては、国がきちんとした対応をとらないがめにご苦労されたと思いますが、結果的に国(原子力規制委員会)が2012年10月31日に提出した「原子力災害対策指針」(以下「指針」と略)を鵜呑みする形で、そこでの諸規定を無批判的に踏襲するものになってしまっています。何よりもこの点に大きな問題があります。ぜひ国の「指針」を批判的に捉え返し、京都市独自の立場を打ち出していただきたいと思います。以下、より具体的にな点について述べます。

第一に「指針」は、福島第一原発事故と同様の過酷事故が起こりうることを想定して作られていますが、これはこれまで「重大事故は絶対起きない」と国民・住民に約束してきたことからのなし崩し的な大転換です。このようなことは絶対に認められませんが、このことを問わずに「指針」の規定を受け入れてしまうと、あたかも京都市が、過酷事故(設計上の想定を越えた事故のこと。設計士がお手上げの事態)が起こりうる原発の運転を認めたことになってしまいます。それで良いのでしょうか。絶対によくないはずです。
国はこれまで国民・住民に、重大事故など絶対に起きない、だから運転を認めて欲しいと約束してきたのですから、福島原発事故と同様のことの起きうる可能性を認めた限り、即刻、稼働中の大飯原発を止め、全ての原発の廃炉を決定し、その上での防災対策を策定すべきです。まずもって京都市は国にそのことを問うてください。仮にそれをせずに国の「過酷事故が起こりうることを前提とした運転」を認めるのであれば、市民にその理由を明らかにしてください。

第二に、「指針」では、このように過酷事故を想定するとしながら、現実に最も可能性のある福島4号機の燃料プールの崩壊、およびそれに伴う原発サイト全体からの撤退という最悪の事態に対する防災対策が何も盛り込まれていません。同様に各々の原発にある燃料プールの危険性も指摘されておらず、この点に大きな欠点があります。現実の防災対策は、全ての原子炉を止めた上で、4号機がなお危険な状態になった場合、また運転を止めていても、核燃料プールなどから危機が起こることを想定して立てるべきなのです。
その場合、2011年3月に政府自らが4号機の崩壊の可能性に即して試算した、半径250キロ圏からの避難を射程に入れるべきです。これに踏まえて、京都市でも(1)4号機崩壊などによる福島原発サイトの危機の極限化の際の、東日本からの避難民の受け入れを準備し、(2)福島原発から新たに放出された膨大な放射能の京都市への接近に対するモニタリング態勢の構築(国や他県との連携が必須)、(3)京都市にも放射能が到達することを想定した避難・退避の準備を今から行っておく必要があります。
再度、述べますが、福島原発は極めて脆弱な状態に置かれており、再度、巨大地震や津波に襲われれば、容易に深刻な危機に陥ってしまいます。だからこそそれへの対処を京都市でも進めてください。

第三に、大飯原発をはじめとした他の原発においても、最も脆弱なのは燃料プールです。ここは「指針」に書かれているような多重の防護壁など何もありません。すぐに崩壊してしまいます。それが福島事故の重大な教訓です。従って防災の観点から、使用済み核燃料を早急に安全な体制に移すことを検討すべきであり、ぜひそれを京都市から関西電力に申し入れてください。プール保管から乾式保管に移行するなど、早急に少しでも安全マージンを広げることが、防災対策の重要な柱とならねばなりません。

第四に、「指針」がこのように、福島原発事故を受けた見直しを語りながらも、現実の危機をリアルに想定できていないのは「放射線被曝の防護措置の基本的考え方」として「国際放射線防護委員会等の勧告、特にPublication109、111や国際原子力機関のGS-R-2等の原則にのっと」るとしていることに根拠があります。しかし前二者は2008年に採用されたものであり、後者は2002年に出版されたものであって、福島事故以前のものにすぎません。これに則ることは、福島原発事故の教訓を無視することで認められないのです。このことを国に対しても明らかにし、福島事故の教訓をいかした独自の防災方針を立ててください。

第五に、同じく「指針」における「原子力災害対策重点地域」の設定も、2011年以前の指針に則っているため、あまりにも楽観論に支配されて、極端に狭いものになっています。「指針」は本来、福島原発サイトの大地震などを起因とする危機の再度の進行や、各原発や六ヶ所施設の燃料プールの崩壊を想定して重点地域を策定すべきなのです。福島原発事故にあっては、東京電力さえもが、一度、現場からの全面撤退を検討したのであり、事故の破局的進展の可能性がありました。4号機のプールは、僥倖の産物として冷却が可能になったのであって、次にこの規模で事故がとどまる保証など何もありません。従って、このとき想定された最悪の事態を、今回の指針での「仮定」にしなくてはなりません。

第六に、以上から「原子力災害対策重点地域」の設定においては、まずは福島原発の再度の危機を想定し、そのときの政府の試算通り、半径250キロ圏を「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」として設定すべきです。ただしあまりに膨大すぎて資産的に対処しきれないのであれば、国民・住民に、完璧な対応が不可能であることを十二分に説明した上で、アメリカが採用した半径80キロと設定することもやむをえないと考えます。
これに対し、他の原発および原子力施設の場合は、運転していないことを前提に、これよりももう少し狭い区域とすることもありえますが、その場合も、絶対に安全な範囲で線を引くことが不可能であることを十二分に説明し、住民の合意形成をしながら線引きを行うことが必要です。
京都市はかかる観点に立って、国に対して、これらの地域の区分そのものを、原子力規制委員会が一方的に天下り的に下ろすあり方を批判し、その策定そのものに参画することを表明すべきです。

第七に、「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」については、福島原発との関係では、当然のことながら、前述の半径250キロ圏内を入れなければなりません。またこの区域は、被曝の「確率的影響を最小限に抑える」ことをめざす区域ですから、福島原発事故の経験から沖縄を除く日本の過半の地域が該当してしまいます。当然、京都市も全域がここに入ると考えるべきです。そのため国内で、区域を設定するのは無意味であり、沖縄を除く日本全土とするのが合理的です。

第八に、これに伴って、安定ヨウ素剤の確保も、全ての自治体で行う必要があり、京都市も確保する必要があります。大量の人々が一斉に飲んだ場合の副作用の発生も勘案し、必要な医療的バックアップ体制も取る必要があります。

第九に、過酷事故が想定しうる最悪の結果を招くときは、日本のみならず、海外にも大量の放射線被曝を招くことになります。従って国は諸外国にこの可能性を呼びかけ、頭を下げて、災害対策を行っていただくことを願いでるべきです。とくに4号機の不安定性をきちんと伝えることが重要です。それは日本国の国際的威信にかけた責任問題です。
国際観光都市としての京都も、京都を愛する世界の人々への信義にかけてこのことを発信する必要があります。また海外からの訪問者が京都滞在中に大事故が発生した場合の保護の体制、海外の方の連絡センターを特別に作り、このことを海外にアピールすべきです。

第十に、事態の深刻さに鑑みて、これまでの国の姿勢、とくに「指針」の作られ方自身があまりに拙速に過ぎます。起きうる事態の想定からして、全住民参加の討論を起こし、国民・住民の十分な合意のもとに指針を策定していく必要があるのであり、京都市もその一員として参画すべきです。かなり広域の協力が必須であることを見据え、十分に論議を尽くした防災体制の構築をなすべきです。

以上、福島第一原発事故を教訓とし、起こりうる事故をリアルに想定した場合の、原子力規制委員会による「原子力災害対策指針」の誤りを指摘しつつ、京都市がこれを前提とせず、独自の計画を立てるべきであることを述べました。
市民の命、京都市へのゲストの命、そしてまたこの国に住まう人々の全ての生命を大事にする京都市政を実現してください。このことをお願いして意見書を閉じます。

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