守田です。(20130225 16:30)

再び心筋梗塞による死亡記事が毎日新聞に載りました。この方は50代男性で、原発に近い福島県浪江町から二本松市の仮設住宅に避難されていました。元原発作業員だそうです。福島民友新聞の記事では、いわき市出身で、震災時に浪江町のアパートに住んでいたと報じられています。
男性は布団の中で亡くなっており、推定死亡時刻は午前8時頃。心筋梗塞は午前中になりやすいのですが、この方も朝方に発作を起こし、手当が受けられないまま亡くなられたのだと思います。心よりご冥福をお祈りします。

この記事に関連する事実を探していて、「震災関連死」という言葉があることを知りました。災害後の避難生活の中で亡くなったことをさす言葉です。復興庁が統計をとっていますが、これによると2012年9月の時点で、震災関連死数は2303人。うち半数近い1121人を福島県が占めています。以下、「知恵蔵mini」の解説をご紹介します。

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震災関連死(知恵蔵miniの解説)

建物の倒壊や火災、津波など地震による直接的な被害ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡すること。復興庁の統計によると、2011年3月に発生した東日本大震災の震災関連死数は、同年9月末時点で2303人 (岩手、宮城、福島、茨城、埼玉の5県)。うち福島県民が約半数に当たる1121人を占める。09年1月の阪神・淡路大震災における震災関連死数(兵庫県、大阪府)921人を上回り、戦後最悪の被害となっている。震災関連死は県または市町村の審査を経て認定される。認められれば、主たる生計維持者は500万円、それ以外は250万円の災害弔慰金が遺族に支給される。
( 2012-11-18 )
http://kotobank.jp/word/%E9%9C%87%E7%81%BD%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%AD%BB

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そこで復興庁の出している資料を探すと、2012年8月21日付けで「東日本大震災における震災関連死に関する報告」という文書が出されていることが分かりました。以下のものです。
http://www.reconstruction.go.jp/topics/20120821_shinsaikanrenshihoukoku.pdf

この統計は2012年3月31日までのものですが、この時点で「震災関連死」で亡くなった方は1都9県で1632人。福島県761人、宮城県636人、岩手県193人でした。死亡時年齢別では66歳以上が約9割と報告されています。死亡時期は発災から1ヶ月以内で約5割です。
注目すべき点は、「震災関連死の死者数が多い市町村と原発事故により避難指示が出された市町村の1263人を対象」とした原因調査が行われていることです。その結果を抜粋します。

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1、男女別では、概ね半々。
2、既往症の有無については、約6割が有、約1割が無、約3割が不明。
3、死亡時年齢別では、80歳台が約4割。70歳以上で約9割。
4、死亡時期別では、発災から1か月以内で約5割、3か月以内で約8割。

5、原因区分別(複数選択)
ア 全体では「避難所等における生活の肉体的・精神的疲労」が約3割、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が約2割、「病院の機能停止による初期治療の遅れ等」が約2割。
イ 岩手県及び宮城県では、「避難所等における生活の肉体的・精神的疲労」が約3割、「病院の機能停止による初期治療の遅れ等」が約2割、「地震・津波のストレスによる肉体的・精神的負担」が約1割。
ウ 福島県では、「避難所等における生活の肉体的・精神的疲労」が約3割、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が約3割、「病院の機能停止による初期治療の遅れ等」が約2割。
  福島県は他県に比べ、震災関連死の死者数が多く、またその内訳は、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が380人と、岩手県、宮城県に比べ多い。これは原子力発電所事故に伴う避難等による影響が大きいと考えられる。

6、死亡時の生活環境等区分別では、「その他のうち病院、介護施設等」と「自宅等震災前と同じ居場所滞在中」がそれぞれ約3割、「避難所滞在中」が約1割。
7、自殺者は、13人。

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この報告を呼んでいると、あの震災と原発事故で、多くの方がいかに亡くなっていかれたのかが彷彿としてきて胸が痛くなります。亡くなられた全ての方のご冥福を祈るとともに、ご家族の心の痛みが癒えることを心から願うばかりです。
その上で、この結果を分析させていただく中で見えてくるのは、津波被害で亡くなった方の総数は宮城県の方がかなり多いのに、「震災関連死」で亡くなった方は、福島の方が多いという事実です。復興庁も指摘するように明らかに原発事故関連死が多い。
(なお臨海部全体の被災状況、死者数は「社会実情データ図録」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4362a.htmlを参照しました)

では何が原因だったのか。同庁は「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が突出して多いことを指摘しています。つまりかなり無理な移動が強いられたということです。しかもはじめは原発3キロ圏内から、続いて5キロ、20キロと避難区域が拡大することで、避難が繰り返されたケースもたくさんありました。このことで多くの方が衰弱し、命を落とされたのです。
これは地震・津波という天災のためではなく、明らかに原発事故という人災によるものです。事故のリアルな想定をせず、避難対策を怠ってきたがゆえに、準備のできていないかなり強引な避難をせざるをえなかった。しかもそれを繰り返さねばならなかった。明らかに東電と政府に責任のある「死」です。

同時に考えられるのは、多くの方がかなりの量の放射能を浴びてしまったことです。全体として「既往症」が約6割とありましたが、移動のストレスだけでなく放射能被曝によっても、もともとの持病が急速に悪化した可能性が高い。
2月22日の毎日新聞の報道によれば、福島原発は、ベントを行った2011年3月12日午後2時半ごろ(4回目で「成功」)の以前に、10キロ圏が高線量になっていたことが最近になって明らかになっています。通常の700倍というものすごい値が出ていた場所もありました。それだけの被曝が人々を襲っていたのです。これが大きな原因になっているのではないか。

放射能被曝の被害に関して「高線量を浴びなければ、すぐに死亡することはない。「晩発性」の障害は時間が経ってからあらわれる」とされていますが、常々思うのは、それは健康な状態でのみ言えるのではないかということです。いやそもそも政府や国際放射線防護委員会(ICRP)などによるあらゆる被曝に関する記述は、健康な「平均的人間」が放射線を浴びたことを前提して書かれている。
しかし現実の人は健康状態も年齢もさまざまであり、とくに亡くなることにはいろいろな要因が働いています。高齢者の場合、何らかの要因で衰弱しているときに感染症にかかると、それだけで亡くなってしまうことがありますが、この場合はもともとの衰弱、ないしは重篤な病の上に、感染症が重なるわけです。そしてその衰弱や病には、長年の喫煙の影響があったかもしれず、食生活の影響もあったかもしれない。いずれにせよ、蓄積されたダメージの上に感染症がプラスされるわけです。
放射線被曝もまったく同じことが言えます。免疫力が下がっている状況では、健康な状態よりはるかに体へのダメージが大きく現れる。あらゆる他の病因がそうなのですから放射線被曝でも同じことがいえます。だとすれば、福島の場合でも、被曝が強引な避難のストレスに加わったと考えるのが合理的ではないでしょうか。

そして最も大事なことは、こうした避難のストレスとあいまった放射能の被害が、今も継続して人を襲っているのではないかということです。当初の事態を体力のある方はなんとか乗り来れれてきたでしょうが、その後の長期にわたる避難生活の中で、ストレスと放射線被曝による心身の衰弱が強まっているのではないか。
こうして考えると、1月に東京で心筋梗塞によって亡くなった49歳の方のケースも、今回、同じく心筋梗塞で亡くなった浪江町から二本松市に避難されていた50歳代の方のケースも、まさにあらゆるストレスに放射線被曝の影響が重なったものではないかと思われます。
僕が訴えたいのは、このようにきちんと事態を見据えた上で、心身のケアを行っていこうということです。とくに心不全による突然死を避けるため、心臓を守っていく必要があります。もちろん病の可能性はこれだけにとどまるものではありませんが、心臓の病は突然死に直結してしまうので、警戒を深めていただきたいと思うのです。放射線値の高い地域ではぜひこのことを周りの方たちにも呼びかけていただきたいです。
いや放射性物質の入った食材が全国に流通している現状や、肺がんや心筋梗塞を引き起こすおそれも指摘されている大気汚染物質=PM2.5が西日本を中心に大量に浮遊している現実をみたとき、どこにいようとも心臓へのケアを強めたほうが良いことは間違いないです。原発事故以降の世の中の現実にたくさんの方が深く胸を痛めてきていること、さまざまな心理的ストレスがあることを考えてみてもそうです。

では心臓のケアのためには何が必要か。次回にこの点のまとめをご紹介したいと思います。

続く