守田です(20180428 07:00)

昨日行われた南北首脳会談をいかに受け止めるかを論じたいと思います。

「板門店宣言」と名付けられた共同声明は以下の3点を骨子としています。
1.南と北は南北関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げることにより、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を引き寄せていく。
2.南と北は朝鮮半島で尖鋭な軍事的な緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力していく。
3.南と北は朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のために積極的に協力していく。

それぞれに具体的な項目が並んでいますが、3のなかの(3)に以下の点が宣言されています。

「南と北は停戦協定締結から65年になる今年に、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制の構築のための南北米3者、南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした。」

朝鮮戦争がようやく終結を迎え、アジアから戦争の火種が無くなる。こんなに嬉しいことはありません。
朝鮮半島はかつて大日本帝国が侵略し、植民地支配を行った地域です。第二次世界大戦に日本が敗れたのちに統一した政府の樹立の動きもあったのに、米ソが介入し、南北が分断されてしまいました。
そして1950年に朝鮮戦争が勃発。南北にそれぞれアメリカと中国が味方し、全土が戦場になり、たくさんの民衆が巻き込まれて亡くなりました。半島全体が焼け野原になりました。

その後、戦線が膠着する中で1953年に38度線を休戦ラインとして、朝鮮・中国とアメリカ(国連軍)の間で休戦協定が結ばれました。(韓国は休戦への調印を拒否)
以来、朝鮮半島は長い間の分裂を経験し、何度か軍事的テンションが危機的に高まる事態も経験してきました。

私たちはそもそも朝鮮戦争が、かつての日本による植民地支配に次ぐものとして起こったのであって、日本が責任の一端を大きく背負っていることを痛みを持って捉え返す必要があります。
しかもより恥ずべきことは、日本がこの朝鮮戦争への経済的関わりによって「戦後復興」を遂げたことでした。
朝鮮戦争に介入したアメリカ軍が日本でさまざまな資材を調達したために「朝鮮特需」が起こり、景気が上向き、大儲けできたからです。日本はかつて自らが植民地化した地域の絶望的な戦争への経済的関与であぶく銭を手にしたのでした。

僕はその意味でも日本は朝鮮戦争に大きな責任を背負っていると思います。
だからこそ、その戦争がようやくにして終結を迎えることを、他人事としてではなく、私たちの歴史の重要な一ページとして迎える必要があると思うのです。

もっと直接的に言っても、もし朝鮮半島で第二の朝鮮戦争が勃発すれば、再び南北のものすごい数の人々が亡くなり、大変な被害が発生していたでしょう。
多数の米軍の出撃拠点を有する日本も戦火を受けることは確実で、場合によっては計り知れない犠牲を伴ったはずです。

そうであるがゆえにアジアにおいて一番大事なのは朝鮮戦争を終結させること。戦争当事国が和解し、国交を樹立し、平和条約を締結することが重要であることを僕は繰り返し述べてきました。
同時に指摘し続けてきたのは、実は朝鮮の側の長年の主張が「朝鮮戦争の終結と米朝平和友好条約の締結」であったことでした。
日本政府はこの点を意図的に無視し続けてきましたが、マスコミのほとんどもまた政府に同調して、この点をきちんと報道してはきませんでした。いや野党の多くもそうだったと思います。

今回の宣言の中で印象的なのは「朝鮮戦争の停戦協定から平和協定への転換」と「恒久的で強固な平和体制構築のため」に南北米3者、南北米中4者会談の開催がうたわれていることです。
従来の6者会談からロシアと日本が抜けています。「両者は停戦協定の調印国ではないから」という解釈もありますが、しかし実際はそうではなく、この和平プロセスに日本政府が何の関与もしてこなかったから入れる必要がないのです。

この点について、昨日、安倍首相の記者会見の時に「日本は蚊帳の外なのではないか」という突っ込みがなされました。嘘つきの安倍首相は「そんなことはまったくない」と語りましたが、誰がどうみても「蚊帳の外」あることが透けて見えています。
しかし僕は日本の多くのマスコミや野党にも真剣な反省を促したい。「蚊帳の外」にあったのは日本政府だけではないからです。

アメリカと朝鮮を比較するならば、広島・長崎への原爆投下や1000回以上に及ぶ核実験の実施など、圧倒的にアメリカの方が核の被害をもたらしてきた当事者でなのでした。
朝鮮の行った核実験は6回で、いずれも地下実験でした。しかし政府もマスコミもそして野党も、朝鮮だけを悪者扱いし続けてきたのではないでしょうか。
そして朝鮮の側が繰り返し和平を求めていることを取り上げず、かつまた和平の実現に向けた積極的な動きをまったくしてこなかったのがこの国の政府とマスコミ、野党だったのではないでしょうか。

いま私たちはこの点をしっかりと捉え返し、東アジアの平和を守り、発展させる主体としてこの事態に向き合わなくてはならないと思います。
そのためにも今回、私たちの命にも直結している和平の流れをここまで作りだしてくださった南北朝鮮の人々、そしてまたアメリカの人々に、私たちは深く感謝しつつ一生懸命に学び、遅れを取り戻していく必要があります。

今回の首脳会談を私たちはこのように受け止めなければならないと思うのです。