守田です。(20160203 16:30)

川内原発に続いて高浜原発が再稼働されてしまいましたが、一方で兵庫県篠山市では1月31日より万一に備えた安定ヨウ素剤の住民への事前配布を開始しました。
これは僕自身が参加する篠山市原子力災害対策検討委員会の提言に沿ったものです。篠山市ではすでに全市民分の備蓄を終えていますが、これから3月末まで15日、30回にわたって各地で説明会とともに配布を行います。
初日である31日には篠山市東部のハートピアセンターにたくさんの市民が駆けつけて下さり、約1000人分のヨウ素剤が手渡されました。

この様子を毎日放送が取材してくださり、1分に的確にまとめて放映してくださいましたので、これを僕のFacebookタイムラインに1日夜にアップしたところ、2日間で再生が約12000回され、シェアも120件ほどしていただけました。
ぜひ以下の動画をご覧下さい。またこの情報をさらに拡散させたいと思っていますので、ご協力もよろしくお願いします。

安定ヨウ素剤事前配布(毎日放送)
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90/videos/10206896106819511/?pnref=story

僕が撮影してFacebookにアップした写真、動画もご紹介しておきます。

ヨウ素剤配布の様子(守田撮影写真)
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10206887654888218&set=pcb.10206887658368305&type=3&theater

ヨウ素剤配布の様子(守田撮影動画)
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90/videos/10206887842132899/?pnref=story

安定ヨウ素剤の事前配布は、再稼働してしまった高浜原発から篠山市民を守るためのものですが、再稼働と配布はたまたま重なったのが実際なところで、計画自身はかなり前から練り上げられてきたものです。
その際の重要なポイントは、放射性ヨウ素が飛来する時は、他の放射能も飛来する可能性のある時であり、避難が必要だと言うことです。
この際、事前配布をしていた方が、避難がよりスムーズに進みます。ヨウ素剤をとりにいく手間暇が大幅に省けるからです。役所の側も配布への手間を大幅に省けますので、人員を事故対策の他の部署に回すことができます。
総じて事故への対応能力が上がるのです。しかも格段に上がります。

ここまでは多くの方が想像がつくことだと思うのですが、実は次の点もとても重要です。
一般に薬は事前に飲む理由や効能、副作用の有無や度合いを知ってないと、なかなか緊急時に飲めないものである点です。これは安定ヨウ素剤に限らないことです。
つまり事前学習を経ない緊急時の配布では、手に入れても飲めない方が多数出てしまう可能性があるのです。これは薬害が繰り返し起こっていることなどでも促進されていることがらです。

この点は僕自身も、原子力災害対策検討委員会に参加する臨床医の方に詳しく説明を受けて知ったことでした。薬については事前の教育・啓発がとても大事なのですが、この知恵は臨床医の方でしか持ちえない貴重なものだと感じました。
その点で事前配布は単に物理的な配布の時間を少なくするためだけではなく、薬を確実に飲んでいただくためにも極めて重要なのです。緊急時の配布はこの点のリアリティを踏まえないものである点をぜひとも踏まえていただきたいです。
さらに事故対策そのものも事前の準備が大事であり、その際もハード面の装備よりもソフト面の蓄積、つまり教育・啓発が大事なのです。ハードは想定を越えられると役に立たなくなりますが、啓発された人間の頭脳は柔軟な対応力を持ちうるからです。

この点も踏まえて篠山市では実に手厚い講習を繰り返してきました。
まずは市の職員に原発事故とはどのようなものか、放射能とはどのようなものであり、被曝はいかにすれば避けられるのかの講習会を繰り返し行いました。
安定ヨウ素剤に関しても、なぜ飲まねばならないのか、どのような効果があるかとともに、放射性ヨウ素以外には対応できないこと、副作用はほどんとないがアレルギーのある人には注意が必要であることなどが伝授されました。

こうした講習会は、市の看護師・保健師の方々を対象としたり、自治会の役員の方たちを対象にしたり、小学校・中学校・幼稚園・保育園の校長、園長を対象にしたりと、さまざまな形で行われました。
さらに講習を受けた市の職員400人が2人ずつのチームを作り、各自治会を訪問して出前講習会を行いました。実施された自治体学習会の数は200に及びます。
これ以外にも一般市民向けの講習会を僕が講師になって何度も行ったり、地域の土砂災害訓練の場に講習会を設けて僕が講演してみたり、原子力災害フォーラムを開くなど、本当にたくさんの催しを行ってきました。

中でも市の災害対策の中心を担う篠山市消防団は最も熱心にこうした講習に取り組んで下さり、初めに班長級以上250名の団員を対象とした講習をくみ、さらに大規模な講習を繰り返して団員1200人が僕の講演を聞いて下さいました。
さらに消防団は、放射能事故時の避難誘導の際に着用するゴアテックス製の専用カッパも購入し、放射能の降る中での活動が必要になった場合に、内部被曝を少しでも減らす対策を積み上げています。
もちろんできるだけ早く避難誘導を終えることで、結果的に消防団員もいち早く避難に移れることを目指しています。

ヨウ素剤配布はこのような活動とセットになったものである点、たんに薬を配ることにとどまらず、命を守るための知恵の伝授とセットになったものであることを強調したいと思います。
私たちの委員会ではこうした活動を全市をあげて実地で進めていただきながら、災害対策の骨子となる考え方を練り上げ、「原子力災害対策計画に向けた提言書」を昨年6月にまとめて市長と市民に提出しています。
ぜひこれもお読み下さい。ヨウ素剤配布は計画の一部です。このことがお分かりになるとともに、ヨウ素剤についてのより詳しい記述もこの中にあります。おそらく日本の中で出ている原発事故とヨウ素剤についての最も詳しい記述だと思います。

原子力災害対策計画に向けての提言
http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/assets/2015/06/teigensyo.pdf

続く