守田です。(20151023 0:30)

前回の続きです。
既に述べたように今、行なわれている三菱重工製の原発の再稼働強行や、強引な輸出への動きは、ほとんど死滅しかかっている原子力産業を、なんとか生き延びさせようとさせるためのものです。
日本政府にとってこれ以上、原発の再稼働を引き延ばすわけにはいかない。なぜか。
実は日本の原発はこれまで平均でほぼ4年4カ月も停まっています。それなのに日本は電気が足りている。何ら困ってない。それどころかこの体制下で株価の大幅な上昇さえありました。
原発などまったくいらないのだということが内外にどんどん分かってきてしまいました!だからこそ強引にも「原発ゼロ状態」を「無くす」必要があったのでした。

二つ目に原発そのものがこれ以上、停めておくと動かなくなることです。平均で4年以上といいましたが、世界最大の出力を誇る柏崎刈羽原発等、すでに8年以上も停まっています。
おそよあらゆる機械の常識からいって、これほど動かしてなければもう機械としてダメなのです。だから今、動かし始めないと、すべての原発が技術的にも動かせなくなってしまう。
さらにこれではウランが売れないし、メーカーも点検料も入らないので、原子力産業全体が「もうどうしようもない」状態に陥りつつあります。
事実、ウラン濃縮会社の世界4大メーカーの一つ、アメリカのユーゼックが2014年3月に倒産してしまいました。ちなみに東芝はここにも投資していました。このままでは原子力村の斜陽がさらに続いていく。
これらから、再稼働と原発輸出を強行することでなんとか「どうしようもない」状態を打破し、延命の道を探ろうとしているのが原子力産業です。

ここに表れているのは私たち日本民衆の力の大幅な増大です。福島原発事故を契機に本当にたくさんの人が覚醒しました。覚醒してどんどんデモを始めた。スタンディングをはじめた。全国で毎週、毎週、集会が行われてきました。
それがもう4年も続いています。こんなことはこれまでのこの国の歴史になかったことです。
このため国会では野党を完全に蹴散らしてきた与党が、原発の再稼働をなかなかできなかったのです。昨年末の総選挙の時に与党が配ったパンフレットなど、原発の「げ」の字も書いてなかった。再稼働は避け続けられてきたのです。
しかし時間的余裕がないがゆえに、今日、再稼働が行われていますが、こうした政府の姿勢は攻勢とはまったく言えません。このままでは死滅するがゆえに再稼働に踏み切ったのでしかないのです。

だから私たちがこれまでの運動を継続し、政府と対決していけば、必ず矛盾が露呈し、この流れを止めることができます。何せ、二大メーカーである東芝と三菱重工がボロボロなのです。
むしろ私たちは東電だけでなく、東芝の粉飾決算問題=経済犯罪を追及し、三菱重工の原発の危険性を世界に広く訴える中で、さらに原子力村を追い詰めていきましょう。そのことはまったく可能です。

ただし楽観ばかりできない重大なことがあります。このままでは死滅するからとなりふりかまわぬ再稼働に政府と電力会社、メーカーが走り出したため、原発事故のリスクが大きく高まっていることです。
とくに川内原発は欠陥のある蒸気発生器を付けたまま再稼働しています。欠陥は1号機にも2号機にもあります。1号機は新型に交換しました。しかし新型はアメリカでは2年も持たなかった欠陥製品です。
これに対して2号機は交換予定を中止して古いままの蒸気発生器のままに動かしました。そもそも交換を予定していたのだから現行の蒸気発生器はポンコツなのです。しかし新型も危ないがゆえに交換できなかったのです。
だから新型の蒸気発生器を付けている1号機も、旧型のままの2号機もともに危ない。どちらがより危ないのかはおそらく三菱重工自身が分かっていないでしょう。

なりふりかまわぬ再稼働の強行だからこそ、事故リスクはいや増しています。
これに対しては、民衆の側から原子力災害対策を逞しく作り上げていく以外に対抗手段はありません。これにぜひとも各地で取り組んで欲しいのです。
そもそも原発は燃料プールに核燃料が入っている限り、動いてなくても危険ですから、それだけでも原子力災害対策は必要です。
同時に、原子力災害対策に真剣に取り組むと、原発の是非をいったん横において、原発がどれだけの危険性を抱えているのかをあらゆる場で討論することができます。討論の結果、放射線被曝から身を守る力を身に着けられます。

世界の原子力産業も同じことが言えます。完全な斜陽状態です。しかしそれでもまだ原子力村が生き延びようとしているので、世界中で悲惨な原子力災害が発生する可能性が高まっています。
その上にイラク・シリアをめぐる戦闘の激化で原発が戦火に巻き込まれる可能性すら拡大しています。だからこそ、世界のどこでも原子力災害対策を民衆の側から積み上げ、放射能からの身の守り方を身に着ける必要性があるのです。
このような状況にかんがみて、今回、新著『原発からの命の守り方』を書き上げたので、ぜひこれを各地で活用していただきたいです。それこそが戦争に反対することと並ぶ平和を守るための重要行動だと僕は思います。
幸いにして出版社である海象社さんが懸命に努力して下さり、出版が今回の講演会にぎりぎりで間に合うことになりましたので、24日尾道の会場で新著の初売りをします!広島会場でも売らせていただきます。

ちなみに尾道市では「福島原発の今」に即しつつ、現在広がっている健康被害について詳しくお話します。内部被曝のメカニズムについて、またこれに対してどう対抗すれば良いのかについてきちんとお話したいと思います。
同時にこれまで尾道であまりお話できてこなかった原子力災害対策についても触れ、時間の許す限りで、汚染水問題、帰還問題、そして戦争法などにも触れたいです。

広島市ではこうした中でのトルコの方たちの原発反対運動への取組についてもじっくりお話します。
僕は原発大国のトルコに原発を日本から輸出することが道義的に許せないので、日本人としての責任にかけてこの問題に関わってきました。
しかし最近思うことは、トルコの方の頑張りで輸出が停まったら、日本の原子力産業の息の根が止まり、その分早く、私たちが核の悪夢から解放されるということです。
まさに「情けは人のためならず」・・・。トルコの方たちに一生懸命に連帯することは、私たちの幸せにも直結することなのです。この点についてトルコの様子を交えて詳しくお話します。

尾道、広島方面の方、ぜひ会場にお越しください。
またぜひとも『原発からの命の守り方』をお買い求めください!

連載終わり

以下、集会案内を貼り付けておきます。

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10月24日尾道市

福島の今 守田敏也講演会

10月24日(土)午後2時~4時
図書館大会議室  室内に子どもスペース設けます。
参加無料
主催 フクシマから考える一歩の会

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10月25日広島市

■グローバリゼーション講座
「日本が原発輸出するトルコ訪問報告」
~トルコ市民4万人の声を聞こう~

■講 師:守田敏也さん(フリー・ジャーナリスト)

■日時:2015年10月25日(日)14:00~16:30
■場所:ゆいぽーと(広島市男女共同参画推進センター)5階研修室4
(広島市中区大手町5-6-9、電話:082‐248‐3320、鷹野橋電停から3分)
■参加費:500円(学生無料)

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