守田です。(20151022 18:30)

24日土曜日、25日日曜日と広島県の尾道市、広島市で連続講演をしてきます。

尾道市での講演のタイトルは「福島原発の今!」
主催は今回も「フクシマから考える一歩の会」。もう何回呼んでいただいたのでそうか。今年も7月後半にも呼んでいただいたのですが、わずか3ヶ月でまたお招きいただきました。
さきほど主催者の一人の大住元さんが案内を僕のFacebookのタイムラインにもアップして下さいましたので引用します。

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川内原発1号機に続き、2号機が10月15日に稼働されました。愛媛県伊方原発も規制委員会の審査を終え、伊方町議会も愛媛県議会も再稼働賛成の議決をしました。島根原発についても、同じように再稼働を目指しています。
「もうどうしようもないか。」と落胆するのですが、守田さんは決してそうではないことを、世界の政治・経済の動き、国民の運動から話されます。
福島原発の様子、健康被害の広がり、汚染水や放置されている廃棄物処理、帰還政策などについてもお話いただき、私たちの暮らしをどうするか。ベトナムやトルコの原発を巡る動きと戦争法にも触れたいただきます。
きっと希望と勇気をいただけるでしょう。是非、ご都合付けてご参加ください。

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そうですね。再稼働が強行された上に、伊方・高浜も続きそうなことが報道されると、確かに「もうどうしようもないか」と思えてきます。
しかしこれはなかなか肝心なところをつかんで報道してくれないマスコミのせいでもあるし、政府による世論操作のせいでもあります。
現実は全く逆です!「もうどうしようもないか」というがけっぷちに立っている人々こそ、世界の原子力村であり原子力産業なのです。尾道市でも広島市でもこれを強調したいです。

端的に言いましょう。東芝は粉飾決算問題でガタガタです。粉飾決算の大元は原発事業への無理な投資の焦げ付きによる巨額の赤字。経団連会長を出すなど日本のリーディングカンパニーだった会社が崩れ落ちようとしているのです。
これは相当に深刻な事態です。東芝の粉飾決算は2006年に市場価格3000億円以下だった米ウェスチングハウス社をなんと6200億円で買い取ったことが原因。早くもリーマンショックを被った2008年に不正会計を開始しています。

もちろん、これを営業の挽回によって克服しようとしたのですが、あまりに大きな打撃となったのが福島原発事故でした。理由は福島原発の2,3,5,6号機が東芝製の沸騰水型原発であったことにあります。
この時期、東芝はアメリカに初の原発輸出を行いつつありました。サウステキサスプロジェクトと言う名で沸騰水型の原子炉2基の建設が進行中でしたが、これがとん挫。共同出資していた東電が引き上げたこもあって中止に追い込まれてしまいました。
さらに日本の原発が次々停まってしまい、再稼働ができなくなりました。これで東芝には定期的に入っていた巨額の点検料も入らなくなりました。

これに対し東芝経営陣は、現場に一方的に矛盾を転嫁して、無理な営業目標の達成を強いて凌ごうとしたのですが、そんなことできるわけもなく、ますます粉飾決算が構造化。ついに耐えきれなくなった現場からのリークで事態が露見したのでした。
このようにみてくると、この問題には原発に入れ込み過ぎた東芝の大いなる失敗が横たわっていることが分かります。しかもあまりに根が深く、健全再建の道が見えなくててすでにメインバンクが見放しつつあると言う情報すらあります。
無理な投資を重ねた末に福島原発事故を起こすことによって、東芝という巨大企業が沈みつつあるのです。

これに対して、もう一つの大きな原発メーカーが三菱重工です。加圧水型原発のメーカーです。
東芝製の沸騰水型が信頼を失い、再稼働がおぼつかないことに対し、沸騰水型よりも安全だと宣言して再稼働に向けて走っています。すでに強引に動かされた川内原発も、これに続こうとしている伊方、高浜原発も同じ三菱重工製加圧水型原発です。
さらにもう一つ、僕が反対運動に関わっているトルコにも、三菱重工製の原発が輸出されようとしていますが、この三菱重工製の原発も実は今、「もうどうしようもないか」というところに立ちつつあるのです。

加圧水型原発は、構造的に「蒸気発生器」というところに大きな欠陥を抱えています。炉内を150気圧300度の温水となって回している一次冷却水の熱を、細いパイプを隔てて二次冷却水に伝える装置です。
そうすると二次冷却水が沸騰し、発電タービンを回すことになるので「蒸気発生器」と呼ばれるのですが、この細管の破断が度々起こっているのです。これが技術的にクリアできない。
その象徴が三菱重工がアメリカのサンオフレノ原発に部品輸出して2010年と2011年に据え付けた最新型の蒸気発生器でした。このうちの一つがわずか2年も経たないうちに事故を起こし、点検の結果、ともに著しく劣化していることが発覚したのです。
これに対して周辺住民が粘り強い廃炉要求の運動をする中で、アメリカ原子力規制庁はサンオノフレ原発の改修の展望がないと判断。なんと廃炉が決まってしまったのです。

このため三菱重工は原発所有者のサウスサウザンドエナジー社からなんと9800億円の損害賠償訴訟を受けています。
これ自身が三菱の経営にとって死活を制する問題ですが、同時にこのことは三菱重工が今もってなお、蒸気発生器の致命的欠陥を克服できていないこと内外に明らかにしました。
問題が知れ渡るともう世界のどこでも東芝のみならず三菱の原発も売れなくなります。もちろん国内での新規建設も望めない。ようするに二大めーがーが「どうしようもない」状態に陥っているのです。

続く

以下、集会案内を貼り付けておきます。

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10月24日尾道市

福島の今 守田敏也講演会

10月24日(土)午後2時~4時
図書館大会議室  室内に子どもスペース設けます。
参加無料
主催 フクシマから考える一歩の会

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10月25日広島市

■グローバリゼーション講座
「日本が原発輸出するトルコ訪問報告」
~トルコ市民4万人の声を聞こう~

■講 師:守田敏也さん(フリー・ジャーナリスト)

■日時:2015年10月25日(日)14:00~16:30
■場所:ゆいぽーと(広島市男女共同参画推進センター)5階研修室4
(広島市中区大手町5-6-9、電話:082‐248‐3320、鷹野橋電停から3分)
■参加費:500円(学生無料)

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