守田です。(20151020 17:00)

アフガニスタンにおける国境なき医師団(MSF)の病院に対してのアメリカ軍の空襲問題の続報です。
今回、アメリカが行った攻撃はいわゆる「誤爆」ではなく意図的なものであった可能性が非常に強くあります。
医療施設や医療従事者への攻撃はジュネーブ諸条約で禁止されています。また国境なき医師団も、誤爆などを避けるために、米軍にもアフガン政府にも病院の位置情報を正確に通知してきました。
にもかかわらず今回の攻撃は極めて正確になされました。しかも攻撃開始直後に、国境なき医師団が米軍とアフガン政府に病院が襲撃されていることを伝えたにも関わらず、その後も数度にわたって正確な攻撃が続けられたのです。

すでに明らかなる戦争犯罪と言えますが、大事なのはそのことをアメリカに認めさせることです。
そのためには加害者であるアメリカやアフガン政府ではなく、独立した第三者機関による調査が必要ですが、今のところそれが可能なのはスイス・ベルンの国際事実調査委員会(IHFFC)です。
同組織はこれまで稼働実績がないのですが、しかし今回は米国とアフガニスタンが同意すれば調査を開始すると発表しています。
そのため国境なき医師団日本支部が以下のように、アメリカに調査への同意を求める署名運動を始めました。まずはぜひこれにご協力ください。同時に拡散をしてください。

「オバマ大統領が病院爆撃の調査へ同意するように、協力してください! 国境なき医師団」
https://www.change.org/p/%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E3%81%8C%E7%97%85%E9%99%A2%E7%88%86%E6%92%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%B8%E5%90%8C%E6%84%8F%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB-

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現地のアメリカ軍はこの事態をもみ消そうともしています。
攻撃された病院に、15日に軍事車両で門を突破して侵入し、証拠隠滅を図ったのです。
この件に関する共同通信の記事をご紹介しておきます。ただし「誤爆病院に米軍侵入」というタイトルは誤りです。
どうして現時点で「誤爆」と報道してしまうのか。言葉には常にどの立場から語られているものなのかというバイアスが入り込んでいます。日本のマスコミはあまりにこの点に無自覚です。というより、政府やアメリカ軍サイドに立ちすぎです。

アフガン、誤爆病院に米軍侵入 車両で門破る
共同通信 2015年10月20日 11:01
http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015102001001291.html

さて今回は多くの方に、世界の戦場で起こっていることのリアリティ、またその中での国境なき医師団の姿を知っていただくために、知人である国の難民キャンプで働いていた方から届いたメールをご紹介します。
ぜひこのメールをお読み下さい。そして戦争のなんたるかをつかんで、多くの人に伝えて下さい。
なお特定を避けるため、国名などは伏字にさせていただきました。

*****

私が○○○の国境の難民キャンプで働いていた時、MSFの病院に、○○○側で地雷を踏み、明らかに軍服姿の軍人たちが怪我をした状態で5、6人運ばれてきました。
難民キャンプ内の病院なので、私は国連の統治する病院で兵士の治療をするのは国際条約違反で、ただちに民間施設に輸送すべきだと主張しました。
しかし私の上司とMSFは、人道的に負傷した人を何もしないで放置するわけにはいかないとして、その場で治療を受けさせました。

私は我々に危険が及ぶ行為だと思い、中立性を保つ立場から反対しましたが、人道的理由でMSFがそうした判断をすることは尊重します。それが本来の、人間としてあるべき姿だと思います。
結局難民キャンプの病院では応急手当しかできず、MSFの軍用機でもっと良い病院のある首都へと負傷のひどい人達を空輸したのですが、結局途中の乗り換え地点で兵士であるという理由で、そこから搬送を拒否されたと聞きました。

難民キャンプにはいつも兵士が平服で休息や家族に会いに来ているのは周知の事実。
難民キャンプには軍人を保護しないという条項があるにもかかわらず、我々には確証がないので、そうした人々がキャンプにいても怪しきは罰せずで取り締まれないのも確か。
武器狩りはしますし、実際に発砲が日常的にあるので、武器がキャンプに大量にあるのもわかっています。
ただその一部のごく例外の兵士が紛れ込んできたことを理由に、難民キャンプを空爆したり病院を空爆したりすることは完全な戦争犯罪です。

今回の空爆は明らかに、アメリカ政府や軍人のメンタリティーの本質をはっきりさせたということで、特筆すべき出来事だといえます。
軍人にとって、ほんの数人のタリバンが病院にいるというだけの情報で、大多数の市民や人道支援従事者の命は取るに足らないもので、そうした敵を殺すことの方が、市民の命より大切だと言う判断をするということです。
正にこれが戦争の本質だと思います。

戦っている人たちは、ひとたび”敵”に固執すると、その敵を殺すためであれば、自国の人道支援従事者(国民)であろうと、その命を守るよりも数人の潜伏している敵を殺す方が大切という、非常に本末転倒した決定すら下すのだということ。
これをはっきりと指摘してください!
これが戦争、そして今回の安保条約の本質です。
軍人や軍隊にとって、敵により大きな打撃を与えるためには、自国の国民複数人の命が犠牲になってもそれが作戦である、というような発想をする人たちことが軍人なのです。

今の日本人はあまりに平和を当たり前とし過ぎていて、戦争の現場をあまりにも理解していない。戦争の汚さに完全に目をつぶっている。
おぼちゃん育ちの苦労知らずの安倍首相に一体何が分かっているのか?
まず安保法に同意した人たちが、自衛隊の最前線に戦闘要員として参加するところまで責任を取ってもらいたい。

怒り心頭です。