守田です。(20151019 21:00)

みなさま。
講演会の場では何度かチラシで発刊予定をお伝えしてきた新著がようやく完成直前に漕ぎ着けました。
今、印刷にまわっており、遅くても来週には手元に届きます。

表紙をFacebookで公開しましたので、アドレスを貼り付けておきます。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10206321896144603&set=a.3300903639751.2140616.1182740570&type=3&theater

なぜ今、本書を上梓するのか。まえがきの冒頭から引用します。
「『原発からの命の守り方』と題した本書は、原発事故の際の身の守り方と、福島原発事故(以下、福島第一原発事故と同義)で、すでに放出されてしまった放射能からの身の守り方について考察した本です。
福島原発事故から2015年9月11日で4年半が経ちましたが、事故はいまだに収束していません。原子炉格納容器が壊れていて高濃度の汚染水が漏れ出していますが、内部は放射線値が高すぎて詳細が分からず、修復ができない状態です。
もちろん、事故の詳しい進展状況も分かっていません。にもかかわらず、政府は川内原発の再稼働を強行し、さらに停止中の原発の再稼働を進めようとしています。恐ろしい軽挙です。
この動きに対して、2014年5月に福井地方裁判所が、大飯原発3号機と4号機の運転を禁ずる判決を下しました。この判決においては「人格権」という言葉が使われました。
人格権は「生命や身体、自由や名誉など個人が生活を営むなかで、他者から保護されなければならない権利」と規定されるもので、憲法13条と25条に根拠を持つものです。
福井裁判所は、原発事故が起きたときの被害が、原発から半径250キロメートルに及ぶと断定し、その中に住まう原告166人の人格権の保護のために、原発の運転差し止めを命じる判決を下したのです。
本書もまた、福井地方裁判所が示した人格権を、いかに守るのかという観点に立ちつつ、「原発事故が起こったときにどうするのか」「福島原発から飛び出した放射能に、いかに対応するのか」を検討しました。
この先、万が一、原発事故に遭遇したときを考えて、あらかじめ知っておくべきことを網羅しておくとともに、すでに福島原発から飛び出してしまった放射能による被曝からの身の守り方について述べました。」(本書p12より)

本を作るにあたっては、これまでの放射線防護活動へのさまざまな取り組みと、兵庫県篠山市での原子力災害対策への取組を通じて実践的に積み上げてきたことをベースにしました。
そのためタイトルも「原発災害」だけでなく「原発」からの命の守り方としました。
本文の中で強調しましたが、原子力災害対策の観点から言っても、原発の再稼働はあまりに危険であり、絶対にやめるべきものです。その点で、災害対策を網羅した本書はけして再稼働を容認するものではありません。
しかし原発は稼働していなくても、燃料プールに使用済み核燃料が入っているだけで大変危険であり、私たちは原発をすべて完全に止めたあとも、廃炉を進め、安全な状態を確保するまでは常に原子力災害に備え続ける必要があるのです。

一方で原子力災害対策は原発への是非をいったん横において進めることができる性格も持っているため、この問題に取り組み、避難のリアリティを考えることで、広範な方と原発が抱えている危険性とはどんなものかを学びあうことができます。
その点でぜひ本書の内容を把握することの中から、より多くの人と原発について論じる可能性を広げていただけたらと思います。
そうすると、これまでもいまも政府や電力会社が、原子力災害対策にきわめて消極的な理由も見えてきます。リアリティをもって備えようとすると、原発の抱える巨大な危険性が多くの人に具体的に見えてきてしまうからです。
その点からも、つまりまだまだ多くの人々が実感していない「いまそこにある危険」と向き合うためにも、本書を参考にされ、ぜひさまざまなレベルでの原発災害対策に取り組んで欲しいと思います。

主に読んでいただきたい方、読者として想定した方は一般の市民の方ですが、同時に消防署員、警察官、自衛隊員、あるいは地域の消防団の方など、いざという時に原子力災害に向かいあわねばならない可能性の高い方にも読んでいただきたいです。
現に今、福島第一原発の本当の収束の為に奮闘されている方にも何らかの知恵となると思います。
また原発の運転には何の責任もないのに、避難計画の策定をいきなり政府に押し付けられて四苦八苦している各地の行政の担当者の方々にも読んでいただきたいです。

同時に本書は災害全体に共通する事項についてもかなりのページを割いています。
そもそも地球的規模での気候変動のために、風水害のあり方もこれまでの「想定」がやすやすと突破され、大災害にいたるケースが増えています。
とてもではないけれども市民の側が行政に頼りきっているだけでは私たちの命を守れない。行政の側も市民の能動的な力必要としているのです。さまざまな災害への対応力を逞しくして命をまもる力を育てていくべき必然のもとに私たちは生きています。
その意味では「原発」からだけではなく、さまざまな災害から、みなさんの命を守るために、ぜひ本書を手にとっていただきたいです。

本書は海象社から10月末までに発行されます。A5判並製272頁 本体1380 円(税別)です。ものすごく奮闘して書き上げた自信作なのでぜひお買い求めください。
海象社のホームページをお知らせしておきます。
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo57.html

僕自身も受付ますので以下のメールアドレスにお申し込みください。
morita_sccrc@yahoo.co.jp
FBページからも受付ます。メッセージからご注文ください。
https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

なんだか恥ずかしいというか恐縮な言い方ですが、僕に直接お申し込みの場合で、もしサインをお求めの方がいらっしゃれば、記入してお送りさせていただきます。
僕からの購入の場合は税込み1490円、送料無料です。ご注文のあった方に振込先をお知らせします。
また僕が講師となる講演の場にご参加いただけた場合は、特別価格で販売させていただくつもりです。ぜひ講演の場でもお求めください。

以下、目次の各章各節までを貼り付けます。

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『原発からの命の守り方』

まえがき

第1章 原発事故とはどのようなものか
1- 1 2011年春の危機
1- 2 今後、どのような事故が起こり得るか
1- 3 原発を再稼働させないことが一番
1- 4 実際に避難はできるのか

第2章 あらゆる災害に共通する「命を守るためのポイント」がある
2- 1 災害心理学から考える
2- 2 避難時の行動を災害社会工学から考える
2- 3 災害対策の見直しが問われている

第3章 原発災害への対処法
3- 1 原発災害を想定したシミュレーションを
3- 2 原発の事故情報をどう見るのか

第4章 放射能とは何か、放射線とは何か、被曝とは何か
4- 1 放射能とは何か
4- 2 被曝のメカニズム
4- 3 内部被曝の危険性と過小評価

第5章 放射線被曝防護の心得
5- 1 被曝を防ぐためにーその1、ヨウ素剤を飲む
5- 2 被曝を避けるーその2、放射線をかわす、被曝を減らす
5- 3 被曝したらどうするのか

第6章 行政はいかに備えたらよいのか(兵庫県篠山市の例から)
6- 1 原子力災害対策において地方自治体の置かれた立場
6- 2 兵庫県篠山市の原子力災害対策への関わりを振り返って

あとがき