守田です。(20151006 22:00)

米軍による「国境なき医師団(MSF)」空襲問題の続報です。
表題にも記したように、MSFが米軍空襲を戦争犯罪として批判し、第三者による調査を要請しています。
この件に関するMSFの声明を転載します。

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「MSFは、一部のアフガニスタン政府当局者が声明を発表してクンドゥーズ州内のMSF病院に対する爆撃を正当化したことに嫌悪感を覚えます。
これらの声明はアフガニスタン軍と米軍が共同で、完全に機能している病院を壊滅させる決定を下したことを示唆しています。
タリバンの構成員が現場にいたからというのが彼らの主張ですが、当時病院にいたのは180人以上のMSFスタッフと患者、付き添いの人びとであり、10月3日早朝の米国の爆撃以前に外傷センター敷地内で戦闘があったと証言しているMSFスタッフは1人もおり

ません。彼らの主張は戦争犯罪を認めたことに等しいものです。また、爆撃の正当化は当初米国政府がこの攻撃を『巻き添え被害』として矮小(わいしょう)化しようと試みたこととも全く矛盾しています。
MSF病院を標的にしたこの忌まわしい攻撃について正当な理由などあり得ません。MSFスタッフ12人と、子ども3人を含む患者10人が今回の爆撃で命を奪われているのですから。これは国際人道法の重大な侵害です。MSFは改めて、国際的な第三者機関による完

全で透明性のある調査を求めます。紛争の当事者による内部調査だけでは、まったく不十分です」

クリストファー・ストークス
MSFベルギー事務局長

引用は「国境なき医師団」日本語ホームページより
http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2510.html

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これは非常に重要な点です。「誤爆」とは攻撃目標をそれたミサイルや爆弾が攻撃する意図のなかった建物などに着弾したとき、あるいは攻撃目標と誤って断定した違う建物に着弾したときなどに使われる言葉です。
それとても重大な犯罪であり人道上の罪であって、もっと「誤爆」という言い方そのものにも気を付ける必要があると思いますが、今回はその「誤爆」ですらない可能性が高くあります。アフガン政府と米軍が明確に病院を攻撃目標にしたということです。

MSFはこれまで繰り返し病院の位置を米軍・政府軍・タリバンに通知してきていました。しかも空襲開始後にただちに米・アフガン両政府に病院が襲われていることを通知しました。
にも関わらずその後も「15分間隔の爆撃が1時間、首相施設に極めて正確に着弾」したのです。MSFはこのことを重視し、当初より「誤爆」という言葉を使わずに「戦争犯罪」の可能性を強調し続けてきました。
これにさらに重要な情報が加わりました。アフガン内務省が「病院内にイスラム原理主義勢力タリバンが潜伏していた」と発言をし、攻撃が意図的であったことをほのめかしたのです。

この点について5日、アメリカ軍も驚くべき声明を発しました。
アフガン駐留米軍のキャンベル司令官による米国防総省での会見で「アフガン治安部隊が敵から攻撃を受け、米軍に対し空からの支援要請があった」「タリバンの脅威を取り除くために空爆しその際に誤って市民の犠牲者が出た」と述べたのです。
情報元は朝日新聞です。以下に記事を示しておきます。

国境なき医師団病院誤爆 米「空爆、アフガンが要請」 医師団「責任転嫁」
朝日新聞 2015年10月6日掲載
http://apital.asahi.com/article/news/2015100600026.html

米軍の声明は、病院攻撃が「誤爆」ではなく意図的な攻撃だったことが明らかになりつつあることに対し、責任をアフガン政府に転嫁しようとしたものですが、そのことでさらに攻撃が意図的だったことが濃厚になりつつあります。
これに対してMSFはただちに「責任転嫁」を許さないと批判していますが、今、重要なのはMSFが主張するように、米軍とアフガニスタン政府をのぞいた第三者機関による調査を行うことです。そして責任者の処罰をきちんと行うことです。
もちろん加害者による被害調査など絶対に認めてはいけない。認められるはずもない。これがきちんとなされなければ、犠牲者があまりに浮かばれません。
またこうしたことを放置してうやむやにすれば、再び武力による報復が叫ばれ、実行される可能性があります。そのことで戦闘は拡大するばかりでしょう。さらなる争いを少しでも減らすためには、「公正な裁き」こそが必要なのです。

国境なき医師団はスタッフを大量に失い、かつ病院機能も完全に失ってしまったことで、アフガニスタン北部から撤退せざるをえなくなったそうです。
紛争地から医療が撤退してしまう。そのことで、確実に、今までなら助けることができたたくさんの命が失われてしまうのです。
MSFによれば、襲撃された「外傷センター」は、アフガニスタン北東部で唯一、さまざまな外傷治療に対応できる施設だったそうです。2011年開設後、高い水準の外傷治療(四肢の温存療法を含む)を無償で提供してきたのでした。
2014年だけでも、なんと2万2000人以上を治療し、5900件以上の手術を行ったそうです。米軍はそれを担った医師やスタッフを入院患者とともに殺害し、施設を蹂躙し、病院を廃止に追い込んだのです。本当に罪深いです。

日本政府も第三者機関による調査をせよときちんと声明すべきです。前回も述べたように、アメリカ軍を相手とした集団的自衛権の行使を世界に宣言したのだからです。もはや第三者の顔をしていることは許されません。
いや私たちも同じです。もはや第三者ではないのです。「こんなひどい戦争犯罪を行う米軍との自衛隊の共同行動を止めよ」という声を高める必要があります。
世界の平和を、人々の命を、みんなで守るために、アメリカの戦争犯罪と徹底して対決しましょう。それこそが真の「積極的平和主義」だと僕は思うのです!