守田です。(20130428 23:00)

今僕は、奈良県明日香村の由緒ある寺院の研修所にいます。昨日からここで行われている「半断食道場」に参加しています。今は(午後9時)一日のスケジュールが終わり、お風呂を終えて就寝前の自由時間を迎えているところ。参加されたみなさん、それぞれにのんびりとされているようです。

いきなり「半断食というエクササイズ」と言われて、「なんだそれは」と思われる方もいるかと思いますが、「半断食」とは「限りなく断食に近く、少食、少飲による心身改善法」のことです。この道場で行っている手法を開発されたのはマクロビアンの橋本宙八さん。以下にHPのアドレスを紹介しておきます。
http://www.macrobian.net/

ではなぜ僕が今ここにいるのか。もちろん身体の調子を整えるためでもありますが、何より、こうした健康法を実践してきた橋本宙八さん、お連れ合いのちあきさん、および橋本一家のみなさんに学び、今後の、東北・関東への健康支援にとって必要な何かを身体を通して学びたいと思ったからです。

実は僕は宙八さんよりも、二人の娘(明朱花さん朋果さん)と息子(卓道さん)に先に出会っています。原発事故のあった2011年夏ごろのこと、山水人たちと一緒に、京都大学の教室を借りてイベントを行ったことがあります。僕も講演と対談で出演させていただいたのですが、そのときにオーガニック食材などを振舞ってくれるお店がたくさん出展してくれました。その中に、オープン寸前だったベジタリアンレストランTOSCAがありました。現在も、3人を中心にまわしている素敵なお店です。場所は京都大学農学部の門の横。とにかくおいしいのでお勧めです!
http://tosca-kyoto.com/

このときとても印象的だったのは、企画の最後の方に発言してくれた明朱花さんの言葉でした。「自分たちは福島県いわき市に住んでいた。原発事故の直後に福島を飛び出して避難した。今、縁あって京都でレストランを開くことができた。ここから原発のない世の中を目指していきたい。そんなことも考えながらベジタリアンレストランをスタートさせます」というようなものでした。
大変、胸を打たれました。すぐに明朱花さんに直接にお話を聞きにいったのですが、彼女が言うには、「自分たちの家はチェルノブイリで被災した子どもたちを何度も受け入れてきた。小さいときから、チェルノブイリの子達と一緒で、その胸にチェルノブイリリング(甲状腺手術の痕)があることも見てきた。だから事故があったとき、ここにいてはいけない。すぐに飛び出さなくてはと思った」・・・とのことでした。

その後、TOSCAがオープンし、何かの折にうかがうようになりました。矢ヶ崎さんを京都の招いての集会のときには、ここで矢ヶ崎さん、お連れ合いの沖本八重美さんと合流し、おいしいランチをいただいてから企画に臨みました。そんなことを重ねる中で、やがて娘さんたちから、お父さんの宙八さん、お母さんのちあきさんのことを教えていただきました。ちあきさんは、直接、僕の講演の場にも来てくださいました。

宙八さん、ちあきさんが重ねてきた実践を知るうちに、僕の中に深い共感が生まれていきました。宙八さんは、自らの断食体験などを通じてマクロビオティック(穀物菜食による健康、長寿法)に出会い、以来、この道を研究・実践されながら、自ら「本断食(一切の食を断つこと)」よりも効果の高い「半断食」による体質改善法を開発。このもとでこれまで十数カ国8000人以上を指導し、数々の「奇跡」と呼べる健康回復も実現してこられました。
またチェルノブイリ原発事故に対しても、1994年から2年間、チェルノブイリの子どもたちを招いて1ヶ月の保養滞在させることを繰り返すなど、手厚い支援活動を行ってこられました。

これとは別にちあきさんは、先に紹介した3人を含む5人のお子さんを自然分娩で出産してきた方でもあり、そうした本も書いておられます。もちろん出産も宙八さんとの共同作業でした。このようにお二人は、健康・食の面でも、出産の面でも、現代社会が著しく曲げてしまった自然の持つ力、素晴らしさを、あらゆる角度から取り戻す実践を重ねられてきています。命と食の達人なのです。

こうした実践を見聞きする中で、僕は自分自身が担ってきた日本の平和運動などの社会運動、とくに社会主義的な階級闘争理論に支えられた運動の限界を垣間見たような気がしました。なぜなら社会運動の主な流れの人々は、現代科学のさまざまな限界に自覚的であったとはいえず、命の問題、自然の問題との向き合い方が十分ではなかったように思えるからです。

少なくとも僕自身はそうでした。今となっては恥ずかしいばかりですが、僕は平和運動で駆けまわる中で、会議と会議をかけもつなか、マクドナルドに駆け込んでハンバーガーを電車の中で食べながら次に向かうようなことがよくありました。コンビニ弁当などもよく食べたし、インスタント食品も常用していました。総じて体の声を聞くとか、自然を尊ぶとか、そういう精神が僕には大きく欠けていました。

なぜそうだったのか。悪いのはアメリカの戦争に追随する政府や、それを通じ儲けをたくらんでいる一部の資本家たちであって、こうした「悪者」から政治権力を奪い、「正義」の側に権力が移れば、少なくともたくさんのことが解決の道に着くと割りと単純に発想していたからです。

僕に欠けていたのは、現代社会が、ライフスタイルそのものを大きく変えてしまい、単に、儲けたいとか、自分だけ得をしたいとか、そうした観点からだけではなく、もっと違った危機をたくさん生み出していることへの認識でした。端的に言えば、そこで生み出された考え方は、正義を唱える側、平和な世の中を希求する側の胸のうちにまで、ライフスタイルとして入り込んでいるのであって、単に「悪者とたたかう」だけではなく、自分自身を問い直し、生活のあり方を変えていかなくてはいけないことに目が及ばなかったのです。

この間、放射線防護活動に走り回り、命を守ることを、本当に多角的に考える中で見えてきたのは、こうした僕自身が辿ってきた道の中の貧困であり、弱点でした。それを超えていきたい。その向こうに新たな可能性があるはずだとの思いが僕の中で膨らんできました。

そんなときに、お二人から声をかけていただき、TOSCAでお会いしてお話をする機会を持つことができました。とてもありがたい場だったのですが、そのときに宙八さんから、半断食道場への参加のお誘いを受けたのでした。とても嬉しかったのですぐに「参加します!」とお答えしました。

僕のこうした捉え返しは、もちろん橋本さんたちとの出会いの中だけで芽生えたのではありません。それこそ、山水人たちとの出会いを通じて知った、オルタナティブなライフスタイルを目指し、自由闊達に、おおらかに歩んでいるたくさんの人たち、若者たちの存在からの刺激もそうでした。また一方で、長く体を診てもらっている友人の気功師さんとの対話の積み重ねの中から学んだこともたくさんあります。

総じて、自分を自然の一部として、かけがえのない命の一つとして捉えなおすこと。ワーカーホリックの蔓延する現代社会の中で、市民運動の側のワーカーホリックとでも言えるような状態になりがちな自分を、まったく別の次元で位置づけなおしていくこと、それが僕にとって次に進むべき道であり、それは同時に、現代社会を変革していく上での貴重なモメントの一つになりうるという気持ちが僕の中で発酵してきていたのです。

そんな気持ちから僕はこの「半断食道場」に参加しました。何より、頭でよりも自分の体を通じて何かを学びたい。そうして明日に向けた、より力強いメッセージを発信できるようになりたいとそう思ったのです。

さて、参加の動機を長々と書いてきましたが、今、僕は二日の夜を迎えています。二夜とも、夕食は玄米ご飯一膳と、若干の香の物などです。とてもシンプルな食事です。玄米を200回噛み、1時間はかけて食べるのですが、そうすると玄米のおいしさが本当に余すところなく分かるぐらいに口の中に広がっていきます。そんな体験をしています。

さらに今朝、受けたフットマッサージが凄かった。二人組で体をゆっくりほぐしていくのですが、もの凄く気持ちよくて、まさに「至福の時」でした。「修行のつもりで来たのに、こんなに幸せにしてもらって良いのだろうか」と思いました。そんな感じでとりあえず、ここまでは意外な?感じで進んできています。

でもそんなにうまい話だけで進んでいくのだろうか・・・。と読者のみなさんもお考えではないかと思いますが、続きはまた明日にお届けしたいと思います。どうかみなさんも一緒に半断食を「プチ体験」していただければと思います。よい結末になることをお祈りください!

続く