守田です。(20130427 11:00)
汚染水問題の続報です。
4月25日付の東京新聞によると、福島原発の汚染水量は、実は1月にすでに地上タンクの要領を超え、貯蔵計画が破綻していたことが明らかになりました。
東電はその後、もともと新型の放射性物質除染装置であるアルプスを作動させ、トリチウム以外の核種の多くを除いた汚染水を投入する目的で作られた貯水池に、これまでタンクに貯蔵してきた汚染水を捨て始めました。
しかし、このことを全面的に隠し、なんと1月15日以降の公表資料において、池に投入した汚染水量の分だけあたかもタンクが増設されて、容量が増えたかのように偽って発表していたのです。またも明らかになった東電の大嘘発表です。
このような対処を行いながら、一方で1月末には汚染水の海洋投棄の可能性を示唆し、さらに2月にトリチウムの危険性を非常に小さくみせる発表を行うなど、海洋投棄への布石を着々と打ち続けてもいます。
東京新聞の連続報道は、東電が隠していることを的確に暴いていて見事ですが、ここから大きく見えてきていることは、東電が事故処理を続けることの無理です。
にもかかわらず、こうした事態に対して、政府は「汚染水処理対策委員会(委員長・大西有三京都大名誉教授)」の初会合を開き、汚染水を減らす対策の議論を始めたと報道されています。
なんという遅さでしょうか。1月にはすでに破綻が明らかになっていたにもかかわらず、東電の発表を検証せずに、危機が深刻化した今になって議論を始めているわけです。しかも繰り返し危機の深化を作り出している東電のあり方が俎上に上がっていません。
これでははじめからここでの議論に実りを期待することはできません。
すでに繰り返し述べていることですが、こうした東電の杜撰な対応と、政府の「押取り刀」の対応が示しているものこそ私たちの危機です。このことにけして慣れてしまってはいけません。
東電のひどさ、杜撰さは、そのまま福島原発の現状の危機として受け止めるべきであり、同時にその中で、トリチウムなどによるさらなる甚大な海洋汚染が意図的になされる可能性があることに私たちはもっと注意を向けなければなりません。
現状でも多くの人々が、海産物の放射能汚染を恐れて、買い控えや食べ控えをしています。しかし日本に住む人々が、これまで普段に食べてきた海産物をまったく採らなくなることは、栄養上の面で非常にリスキーなことでもあります。
しかしここで大量のトリチウムが海洋投棄されてしまえば、海の汚染の深刻さは増してしまい、しかもトリチウムは、検出がセシウムなどよりも難しいため、汚染の度合いを測ることも難しく、より広範な地域の海産物を避けねばならなくなってしまいます。
それらさまざまな点からトリチウムの海洋投棄は許されてはならない行為です。
みなさん。けして今の状態に慣れてしまうことなく、福島原発の今への注意を持ち続けましょう。僕もそうした問題意識を強く保持して、ウォッチを続けます。
以下、2つの記事をご紹介しておきます。
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福島第一 汚染水 破綻明かさず
東京新聞 2013年4月25日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013042502100007.html
東京電力福島第一原発の汚染水量が一月にはすでに、地上タンクの容量を超え、貯蔵計画が破綻していたことが分かった。危機的状況にもかかわらず、東電はタンクには余裕があると発表。その裏で、水漏れ事故が起きた地下貯水池に汚染水を投入していた。この時点で危機を公表し、真剣にタンク増設に取り組んでいれば、四月五日に発覚した汚染水漏れ事故は防げていた可能性が高い。
東電の計画は、セシウム以外の放射性物質も除去できる新たな除染装置が昨年九月に稼働することを大前提とし、新装置でさらに浄化された水を池に入れる予定だった。しかし、新装置の安全面の問題により、昨年九月と十二月の二度にわたり稼働を延期した。
計画は新装置が予定通り動かない場合の備えをせず、汚染水量がタンク容量をぎりぎり超えない程度の甘い内容だった。慌ててタンクを増設したが、年明けには水量がタンク容量を超えてしまうことが確実になった。
このため東電は一月八日、3番池に一万一千トンの汚染水を入れ始めた。続いて二月一日には、2番池にも一万三千トンを入れ始めた。
だが東電はその事実を説明せず、毎週公表している汚染水処理状況の資料で、厳しいながらもタンク容量は順調に増えていることを記載していた。
一月九日の記者会見で、本紙記者がタンクの残り容量が一週間分の処理量(約二千八百トン)を下回った点をただすと、尾野昌之原子力・立地本部長代理は「タンクは約三万トンの余裕があり、足りなくなることはない」と強調し、池に汚染水を投入したことには触れなかった。
一月十五日付以降の処理状況を示す公表資料では、実際にはタンク増設は全く進んでいないのに、池に投入した汚染水の量をタンク容量が増えた形にして公表していた。タンクが増設されたのは、二回の池への投入が終わった後の三月になってからだった。
東電広報部は「タンクの増設はすべて計画通り進めており、問題はなかった。地下貯水池に(新装置で浄化していない)汚染水を入れることも想定していた。漏れたら別の池に移し替えるつもりだったが、全ての池が使えなくなる状況は考えていなかった」とコメントした。
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原発汚染水減らす対策、5月中にも提示…政府委
読売新聞 2013年4月26日17時38分
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130426-OYT1T00684.htm?from=ylist
政府は26日、東京電力福島第一原子力発電所の汚染水問題を検討する「汚染水処理対策委員会(委員長・大西有三京都大名誉教授)」の初会合を開き、汚染水を減らす対策について議論を開始した。
建屋への地下水流入を防ぐ遮水壁を新設するなど、複数の計画の有効性を検証したうえで、新たな対策の方針を5月中にも示したい考えだ。
汚染水は、原子炉建屋などに地下水が流入することで、毎日約400トンずつ増えている。同委員会は、遮水壁を新設したり、建屋のすき間を埋めたりするなどの対策が有効かどうか議論する。汚染水の総量を減らすため、試運転中の除去装置では取り除けない放射性トリチウムを処理する方法も探る。
初会合で赤羽一嘉経済産業副大臣は、「汚染水の処理は廃炉を進める上で最重要の課題。学界、産業界、国が協力、連携し一日も早く対策に道筋をつけたい」と述べ、同委員会がまとめる汚染水対策を、6月に改定予定の廃炉工程表に反映させる考えを明らかにした。
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