守田です(20170114 13:00)

1月7、8日のコープ自然派脱原発ネットワークの伊方原発ツアーに参加した際に、松山センターで行われた集会での発言の起こしの3回目を載せます。
今後の脱被曝の展望について述べました。

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伊方原発を止めるために!被曝から命を守るために!
2016年1月8日 コープ自然派松山センターにて
4、放射能の危険性への目覚めを広げることが課題

ただ一方でしっかりと見ておかなくてはならない大きな課題があります。
反原発運動のこれほどの進展に対して、反被曝という側面はまだ十分に追いついてきていません。なぜかというと放射線被曝の害が非常に軽く語られていて、まだこの点での民衆の覚醒は十分ではないからです。
放射線の人体への影響は世界的にアメリカが作った教科書で教育されてしまっています。この教科書が元にしているのは、原爆の被爆者への被害調査です。
誰がこれを調べたのかと言えばアメリカなのです。ひどいと思いませんか?加害者が被害者を調べたのです。
こんな調査はあってはならないのです。当然加害者は被害を軽く見積もりますよね。しかもそれが核戦略の根っこにあることなのです。核戦略を維持するためにも放射線の害は非常に軽く語られてきたのです。
残念ながら多くの学者さんやお医者さんがこの教育を受けてしまっています。

ちなみにこのためお医者さんは被曝に対して甘い意識を持っている方が多くて、レントゲンなどで自らもかなりの被曝をしている場合が多いです。
僕の知り合いで、いまは被曝に対して厳しい感覚を持っている医師の中でも、若い時に内科にいてしょっちゅうプロテクトもあいまいなままレントゲンを撮ってしまい、かなりの被曝をしてしまっている方がいます。
そうするとどういうことが起こると思いますか?そのお医者さんの子どもはみんな女の子になるのだそうです。もちろん男の子が生まれることもあるのですが、そうすると「浴びたりないぞ」と言われるのだそうです。

だから放射線被曝に対する評価がとても甘く見られていて、福島原発事故のあとも、お子さんが鼻血を出して、しかもこれまで見たことのない鼻血だというのでお母さんたちが病院に駆け込み「放射能の影響では」というと次のように言われてしまうことが起こりました。
「お母さん、何をバカなことを言っているんですか。そんなことをあなたが言うから子どもさんが精神的におかしくなるんですよ」と。
それで社会の中でもお母さんたちが過剰に怖がっている。「放射脳になってしまっている」などと揶揄されたりしました。
そういうことが各地で起こっているのです。こういうことをなんとしても変えなくてはいけない。

僕は関東・東北を何度も取材していますけれども、ものすごい勢いで病が広がり、人が死んでいるという感じを持っています。
恐ろしいですよ。僕自身が取材している方の親御さんや周りの方にそういうことが頻繁に起こっているのです。
ただ僕には「そういうことが起こっても当たり前だ」と思える面もあります。避けられる被曝もぜんぜん避けられていないからです。

一例をいうと、僕はこの2月に群馬に行きます。4度目の訪問なのですが、その群馬で多くの人々が薪ストーブを使い続けているのです。
僕は「それはめちゃくちゃに危険です」と言って、使うのを止めることはもちろん、とにかく灰を測ることを勧めています。
それで測った方がいるのですが、「どうですか」と聞くと「一万ベクレルでました」とかいうのです。しかも「それを隣の家では家庭菜園に撒いてます」とも。

そんなことをすれば被曝影響が出ないわけがないのです。
政府はそんなことは知っているのですよ。原発事故があった直後に政府は関東・東北の広いエリアで「みなさん。薪を使ってはいけません」と言うべきだったのです。それで代替の石油などを配るべきだった。
石油では薪の温かさの代替にはならないのですが、でもそういうことをして「被曝を避けなければいけない」と言うべきだったのに、言わなかったのです。
だからそうやってかなりの高濃度の放射能を取り込んでしまった方たちから亡くなられている方が出ているのではないかと思います。

そのために放射能の危険性をもっともっと多くの方に知ってもらうことが僕はとても大事だと思います。
その点でコープ自然派のみなさんは、内部被曝の危険性をもっとしっかりつかもうということで僕を何度も講演に招いてくださいました。
また他ではあまりやられていないストロンチウムの測定にも取り組むということで、これは本当に大事なことだと思います。

さらにどうやってこの現状の中で命を守るのかというときに、もはや放射能を避けるだけでは命を守ることはできないことを踏まえる必要があります。
一つに放射能がいろいろな加工品に入り込んでしまっていて、混入したものすべてを防ぐことができないことがあります。
いろいろなものを測ってみると思わぬところから放射能が出てしまいます。例えば白砂糖の害を避けるためにいいメイプルシロップを測ると大抵、出てきてしまう。
多くがカナダ産のシロップなのになぜかというと、チェルノブイリ原発事故の影響や、何百回も行われた核実験の影響なのですね。
かつてボカボカに核実験がやられて、実は私たちは以前から放射能をたくさん食べさせられていたのです。

そのことを考えるときに大事なことは、食べ物全体の安全性を確保することです。身体にいいものを食べて、害になるものを入れないようにする。
抗生物質やさまざまなケミカルなどを避けていくことが、命を守る上でとても大事だと思います。
その意味でコープ自然派さんの活動や、さきほど秦さんがおっしゃっていましたけれど、安全な食べ物を作る場を確保していくことが、この先、ますます大事になると思います。
私たちは一丸となって食べ物の安全の確保から命を守ることに取り組んでいく必要がある。

実はこの旅の間、僕はどちらかというと原発のことよりも、よりこのことを考えていました。
というのは福島原発事故の直前まで、僕は森林保護活動に力を入れていたのです。
とくにカシノナガキクイムシによるナラ枯れという現象と格闘していました。その際、製薬会社から出されている薬を使ってもぜんぜんダメで、害しかないのですよね。
そうではない自然の摂理に準じた防除方法を、僕がとても尊敬する昆虫家の方が考えだしてくださったので、僕はその方法で京都近郊の山を走り回っていました。
それで今回、あらためてネオニコチノイドに変わる防除法をどうしたらいいのかとか、カメムシはどう防除したらいいのか、その方に何かヒントはないかと聞きにいかなくてはとも思いました。

こちらに来て、生産者のみなさんのお話を聞いていて、やはりどうしても農薬に頼らざるを得ない面があるという思いも分かりました。
ではどうしたらいいのか。どうやって農薬の害を超えていくのか、使わない道を模索するのか、もっと全国でみんなで知恵を寄せ合って考えなくてはならないと強く思いました。
安全なものをみんなでしっかり作れるようにし、何よりそのために努力している生産者を、そのリアリティをシェアしながら消費者が守っていく。
もっとそうしたことに力を入れていかないと、これだけの放射能がすでに出てしまった世の中で、命を守っていくことはできないと思います。

その意味で僕はこれからもここにおられるみなさんと一緒に手を携えて頑張りたいと思います。
とくに次に愛媛県に来るときには、伊方原発前で座り込みがされている11日を狙って来たいですね。願わくばその人が嵐であればと思います。(笑い)

どうもありがとうございました。

連載終わり