守田です。(20150711 0:30)

Facebookの自分のページなどで宣伝しつつ、「明日に向けて」での紹介がすっかり遅くなってしまったのですが、7月11日、12日の日程で奥出雲の成瀬さんの牧場に向かいます。理想的な放牧を行っている牧場です。
この牧場とのつながりについて昨年10月15日書いた記事から抜粋します。ある日の京都での「食」をめぐる学習会での一コマです。

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ある時、成瀬さんがこう言いました。「放牧されている牛は頭がいいです。牛舎の牛とぜんぜん違います」。それで「どうやって分かるのですか?」と聞いたら「そりゃ、後姿が違いますもん」と笑いながら言う。「一目見れば分かります」とも。

それでもうどうしても成瀬さんの牧場に行きたくなってしまった!善は急げで急きょ、学習会の場を提供して下さっていたキッチンハリーナで参加者を集い、ワンボックスカーに分乗して奥出雲に向かいました。2013年12月のことでした。
中国自動車道を一路、西に走り、途中で北に折れて成瀬さんの牧場に到着。さっそく牛たちにご対面しました。
そうしたら遠くからみるだけで確かに風格が違うのが分かる。近寄って見ると毛並みがとても美しい。足がしっかりがっしりしている。そして何よりも、なんとも言えない落ち着き払った雰囲気がある。

牛たちはすぐには近寄ってきません。「あいつら僕がいるんで必ずそのうち寄ってきます。でもすぐに近づくと馬鹿にされると思って、様子をうかがっているんです」と成瀬さん。
確かに悠々と草を食みつづけながら、時々僕らをちらちらとみている。
そのうち近寄ってきたのはその群れの「格下」の牛でした。そののちにその場のボス牛がのっそりと近寄ってきました。

圧巻でした。本当に「一目見れば分かる」世界でした。とにかく存在感が凄い。うーんと唸り声をあげさせらてしまう。
そこに成瀬さんが他の牛舎から買い入れたばかりの牛を連れてきました。確かに顔つきがまったく違う。それよりも態度が違うのです。それを見ていて「ああそうか」と合点するものがあった。
牛舎にいる牛は人間に全面的に依存して生きています。ただ給餌されるのを待っている。だから人間を見るとおどおどしながら何かをしてくれるのではないかと思って近づいてくるのです。

ところが放牧されている牛たちは自分の判断で野山を駆け巡り、美味しい草を選んで食べている。常に頭を使い続けているのです。
牛舎の牛はふだん考える機会を奪われているから、野に放たれても最初は草を食べることすらできないのだそうです。先輩の牛たちに教えられて草を食べることができるようになる。そうして少しずつ能動性を取り戻していくのです。
放牧されている牛は自分の意志で生きている。さまざまな判断を繰り返しているのです。だから頭がよくなって当然なのです。「なるほど!」と非常によく分かる気がしました。

堂々と尊厳に満ちて生きている牛たちの姿は、いろいろなことを私たちに教えてくれます。牛舎が自然の中にはまったくない人工物であり、牛舎の牛たちのあり方は自然からかけ離れたものであると言う当たり前のことがすごくリアルに迫ってきます。
その意味で成瀬さんの牧場は、ただその場にいくだけで、自然とは何か、食べ物とは何か、牛と人間との関係とは何かを考えさせてくれる素敵な場でした。ぜひまたみんなで行きたいと思っています。
そうしたら成瀬さん。「あいつらは凄く頭が良いのでみなさんのことをすっかり覚えていてすでに格付けしています。今度いったら牛がみなさんをどうみなしたかが分かります!」なんて言う。どきどきしながら再会することになりそうです。

明日に向けて(952)奥出雲の放牧牛を分け合って食べる!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ee058e87f72ca981660502a8d6241fd0

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自分で読み返していても、あの時の牛たちの威風堂々とした姿が蘇ってきますが、この時に、私たちを圧倒したボス牛、なんと臨月で今回の訪問中にも出産するかもしれないとのこと。もしかしたら今回はそんな場にも立ち会えるかも知れません
なお今回の訪問は成瀬さんからの講演依頼によるもの。みんなで牧場を見学させていただいたあとに、僕とフードポリシーの研究家の平賀緑さんがお話をすることなりました。
以下、企画のFacebookページをご紹介します。

牧場(まきば)から育てる健康な食と環境
https://www.facebook.com/events/1598451993769869/

奥出雲方面の方、島根県の方、また山陰、山陽地方の方、今からでも参加ですので、良ければぜひご参加下さい!
尊厳をもって堂々と生きている牛たちとの出会いは本当に圧巻です!

以下、案内と細かいスケジュールを記しておきます。
なお奥出雲牧場は「道の駅 おろちループ」の目の前です。来られるときにはこの道の駅をランドマークにしてください。

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牧場(まきば)から育てる健康な食と環境
〜牧場交流会と講演会〜

健康な生命は、健全な土から。
自然な環境の中で元気な生草を食べた牛から初めて健康な牛乳が恵まれ、私たちの身体と心を豊かに育ててくれる。
そんな当たり前のことが、今ではとても難しい。
地元で採れたものより、地球の裏側から輸入した作物の方が安く、自然に育てた新鮮野菜より、化学物質たっぷりに育て、加工し包装した食品の方が安い。
牛乳もそう。自然の中で牛たちが自分で選んだ草を食べて牛本来の生活をしている元気な牛たちのお乳を飲みたいのに、それがなぜこんなに難しく高価になってしまったのか。
放射能汚染の時代に、内部被ばくと健康被害が広まっている今こそ、元気な食べものが必要なのに。
企業任せの食生活では、病院任せの人生になってしまう。原発のことも政府に任せていたら危険は増すばかり。
牧場の土から育てる健康な食と環境について、自然と牛たちに実際に触れながら、一緒に考えてみませんか?

日時:2015年7月12日(日曜日)
場所:奥出雲牧場(詳細は裏面)
〜牧場見学会だけ・講演会だけ・全部参加など、自由に組み合わせてご参加ください〜

①朝の牧場交流会
早朝(5時ころ)〜牛追いから搾乳
早朝6時ころ〜牧場の売店オープン(飲み物・軽食)

②成瀬さんと牧場見学会
朝10時〜 参加費500円
牛と会話できる牛飼いさんの説明を聞きながら、自然の本能に従って生きることを許された牛たちが、自分たちで健康を選んで生きている姿を五感で体験してください。ちなみにあなたも牛に観察されます!

③牧場のお昼ご飯〜各自ご自由に
牧場売店でアイスクリーム、ロールパン、ピタパンサンドチーズケーキなど、道の駅おろちループで軽食コーナーなどもあります。もちろん、持参したお弁当を牧場で食べるのも最高です!

④明日に向けて考える環境と食の講演会
午後1時〜 (参加費1,000円)

守田 敏也さん
原発や放射能汚染は東日本だけの話? 原発は再稼働していいの? 福島原発はどうなっているの?
放射能と内部被ばくや環境問題に加えて、ますます雲行き怪しい世の中で、正しい情報を得て、元気に楽しく生き延びるための具体的な方法についてお話します。

平賀 緑さん
「健康」を売りにしている食品がたくさん出回っているのに、どうしてまともな食生活がこんなに難しくなってしまったのか?「西欧化」だけじゃない、私たちの食生活を崩し、身体と心を不健康にしてきた背景には何があったのか?
本当に元気な健全な食生活を手放さないために、ラベルの裏側に広がるフードシステムの仕組みを紹介します。

成瀬 悟さん
なぜ奥出雲に牧場の場所を選んだのか? 良い牛乳を提供するために、どうやって牧場と牛を育てているか? 元気な牛の違い、元気な牛乳の違いについて、自分が最良だと思える牧場地と牛の管理方法を紹介します。

主催 奥出雲牧場
島根県仁多郡奥出雲町八川 2500
(株)ライブストック 奥出雲牧場 TEL/FAX 0854-47-0039
牛たちの日常が見られる奥出雲牧場のフェイスブック。
https://www.facebook.com/okuizumo