守田です。(20130614 08:00)
『調査報告 チェルノブイリ被害の全貌』の著者、アレクセイ・ヤブロコフ博士の京都講演の3をお届けします。ノートテークはこれで完結です。
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チェルノブイリから学ぶ
アレクセイ・ヤブロコフ講演・・・3
2013年5月22日 京都
チェルノブイリの後で何が起きたかということでありますが、当局は危険なことは何もない、ガンにかかる人が増えることも起きないですよと言ったわけです。
しかし何年か経って、「確かに影響はありました。ガンに罹る人が増えました」ということは認めたわけです。
日本でも現時点では、恐ろしいことはおきませんと当局は言っていると思います。しかし何年か後に必ずそれは打ち消されるであろうと私は思います。
ヨーロッパの幾つの国では、事故後の2~3年間において、乳児死亡率が上がったことを幾つかの例で説明しました。
日本ではどうであるのか。2011年の日本の公式の乳児の死亡率の統計があります。それまでに比べて上がっています。なぜかという理由、それまで年々下がっていた乳児の死亡率がなぜ2011年に上がったのでしょうか。
福島の事故の影響以外、私には原因が考えられません。これは日本政府がとっている公的な統計数字に表れていることです。このことは福島の事故において危険は発生していないという当局の発表がウソであることを証明しています。
さきほどは日本全体の数字でしたが、こちらは福島県の数字とウクライナの首都のキエフ市の数字の比較です。キエフに関してはチェルノブイリの9ヵ月後に、出産数が急激に減っています。
日本の福島県でも、事故から9ヶ月後に出生数が急激に減っています。チェルノブイリの結果を踏まえると、ここから日本はどうなるか、何が待っているのかを予想することができます。
はっきり言えることですが、染色体の突然変異が増えます。また先天性の異常というものの確率も増えていきます。そして新生児の死亡率、とくに周産期の死亡率が上がります。
そして甲状腺のがんが増えます。来年から高くなると思いますが、とくに増えたということが見えてくるのは2015年です。男性における精子の数の減少がすでに始まっていて、これから何年間か続くはずです。
チェルノブイリの事故の後、世界全体でみられた現象ですが、生まれる子どもの性別の比率が変わります。もともと男の子の生まれる比率の方が高いわけですが、チェルノブイリの事故後は男の子の比率が減りました。
ホルモン関係も変わります。性的成熟度、何年何歳でそうなるのか、その構造も変わります。これはチェルノブイリの事故の後に見られたものです。更年期の状況に関しても変わってきます。糖尿病などの罹病率も高くなります。
チェルノブイリのもうひとつの教訓についてお話します。
事故によって放出された放射性核種による汚染は、年々下がると思われていました。実際に、事故後5~7年ごろまでは、汚染は減少していったわけですけれども、その後、急に汚染度があがったということがありました。
これはどうしてかというと、放射性核種が土壌の深いところに降りていって、植物の根が集中しているところまで到達してしまいます。そうすると植物の根が放射性核種を吸い上げて、地表に再び出してしまうことが起こったわけです。それで実際に放射性物質による汚染度が高くなりました。
被曝をしてしまった、あるいは汚染されてしまったというところに住んでいる人々ですけれども、対策をとることは可能です。どういう方法があるかという点ではすでに幾つかのものが使われていますので、おそらく質疑応答の中でお答えすることになるかと思います。
ただ前提条件として申し上げたいのは、線量がいくらかということを、ミリシーベルトでは基準にならないということです。まあ20ミリシーベルトであれば、状況は大変良くないと私は思います。1ミリシーベルトというのも、私自身は良くない数字だと思っています。
しかしいずれにせよミリシーベルトで表示される線量は、相当ルーズに、平均的な状況をただ表しているだけであって、個人個人についての条件はどうなのかということは、一切、語ってくれないのです。
このミリシーベルトで測られる線量が意味を持つのは、企業の中で、あらゆる条件がきちんと確立されている中でのみです。核爆弾を作る工場、電力を作るための原子力発電所といった屋内であり、放射線核種の数も少なく、その量もコントロールされている、しかも定期的にチェックがされているところです。あくまでも企業のための条件であります。
一方でチェルノブイリの事故や福島の事故では、何百種類の放射性核種が、どれだけのものがどれだけ散ってしまったのかわからない状況で、ばら撒かれてしまっているのです。
私がみなさんに呼びかけたいのは平均的な数値、どこどこの地域の平均的な数値というものを基準にして欲しくないということです。一人ひとりがどれだけ現実に放射性核種によって、負担を受けてしまったのか、それを判断する必要があります。
ではどういうものをサンプルにして計測ができるかというと、歯のエナメル質をサンプルにすることで、どれだけの放射性物質が体内を通過していったのかということが分かります。また血液、骨髄の染色体を調べてもらう、眼の水晶体のチェックもできます。
またホールボディーカウンターで、どれだけ体内に取り込んでいるかを、ガンマ線のチェックで調べます。
ということで、「この病院の平均気温は何度ですよ」ということで、全般の人々に当てはめる数字で安心をしないで、ひとりひとりの数値を調べるということをしてもらいたいと思います。
そしてベクレル/キログラムということになりますと、子どもに関しては体重1kgあたり20ベクレル、成人では50ベクレルが対策をとる必要がある値です。
今申し上げた子ども1kgあたり20ベクレル、大人50ベクレルというのは、あくまでもγ線に対してだけの数値です。
事故から1年経った時点での福島県の子どもたちについては、体重1kgあたり20ベクレルのγ線が出ているのは、調査された子どもの1%未満であると聞いています。
しかしながらチェックされたのはγ線だけであり、β線やα線がどうなっているのかということは、ボディカウンターでは示してもらえないわけです。ですからより詳しい検査を、髪の毛、つめ、染色体といったもので行うことできちんと把握して、必要であれば対策をとっていくことが重要です。
とにかくあくまでも慎重に、必要な情報やデータを集めていくことが大切です。
チェルノブイリ事故のあとのベラルーシの実際の経験が証明しているわけですが、季節によっても体内に取り込む量がちがう、体内被曝の状態が変わるということが証明されています。とくに子どもに関してはそれが顕著です。季節によって食べ物の種類が変わるということもあるのでしょう。日本で言えば、タケノコを食べるとか、魚を食べるとかがあると思います。
こうした季節のものの中に、急に放射性物質が含まれるということもあるでしょうし、キイチゴやキノコなど、季節によって変わるものもあります。ですから子どもに関しては変化が激しくて、一回測定すれば済むということはなくて、定期的に測ることが大切です。
福島の事故の影響ですけれども、すでにそれが出ていることを認めなければいけないと思います。これから何年も影響が出てくることも、きちんと認識する必要があります。
チェルノブイリと福島の両方の事故の一番の教訓ですが、原子力産業というものが人類と地球に与える危険性の度合いは、核兵器にもけして劣らないとういのが私が引き出した結論です。
どうもありがとうございました。
(講演収録終わり)
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