守田です(20210518 23:30)

●「明日に向けて」の投稿を再開します

みなさま。しばし更新を怠ってしまい申し訳ありません。5月の連休終盤に疲れがたまったことからしばし休みを取り、その後10日から13日まで福島県内を取材、15日に埼玉県所沢市で講演し、16日に兄の一回忌に参加して日曜夜に戻りました。
旅の間中、心身のケアのためにももともとクールスポットだった温泉などに泊まり、宿でもゆったりできるようにしたため、旅の途中でのブログ投稿やツイートを断念しました。
このため「守田は体調不良なのでは」というご心配をおかけもしてしまったようです。どうもすみません。いたって元気ですのでどうかご心配なく。

福島ではとても素晴らしい出会いに恵まれ続け、たくさんの大事なことを学んできました。今後の投稿に反映させます。ご期待ください。
さて今回の投稿では、暫く後続を出せていなかった連載「国際放射線防護委員会(ICRP)の考察」の6回目として、放射線影響研究所による被曝の遺伝的影響の調査について取り上げます。
これもまた今回の福島取材と深く結びついているのですが、今回はまずは新聞記事の引用とこれに対する僕のコメントを明らかにしたいと思います。

● 放射線影響研究所が遺伝的影響に対する新たな発表を行いました

少し前のことになりますが、4月16日に放射線影響研究所が重大な発表を行いました。資料としての意義が高いので朝日新聞の記事をそのまま転載します。

両親の被爆の子への影響「一部で関係性」 放影研
朝日新聞 比嘉展玖 2021年4月17日 9時30分
https://digital.asahi.com/articles/ASP4J727VP4JPITB007.html

【広島】広島、長崎両市を拠点に日米共同で原爆放射線の身体への影響を調査している放射線影響研究所(放影研)は16日、被爆者の受けた放射線量と子どもの出生直後の死亡などの関係を解析したところ、一部では関係性があったとする研究結果を発表した。ただ、「被爆による貧困なども影響している可能性があり、放射線の影響のみで起こったとは解釈はできない」と説明している。

 生まれつき手などが変形している「先天性形成異常」▽死産と生後7日以内の死亡▽死産と生後14日以内の死亡の三つの指標と、母親▽父親▽両親の合計の3種類の放射線量との関係性について9パターンに分けて解析。そのうち、「死産と生後14日以内の死亡」と「両親の合計線量」は統計的に意味があると判断されるレベルで関係性が確認されたという。

 放影研の前身・原爆傷害調査委員会(ABCC)が調査した被爆者の子約7万人のデータを最新の統計方法を用いて再解析した。統計学的には誤差の可能性がある範囲だったものの、他の8パターンでも、親の受けた線量が増加すると、先天性形成異常や死産と出生直後の死亡のリスクが増加する傾向だったという。山田美智子・臨床研究部放射線科長は「ゲノム解析を含めた更なる研究の重要性が認識された」と述べた。(比嘉展玖)

● 被曝問題のコアに遺伝的影響がある

この放影研の発表がどうICRPの考察とつながるのか。ポイントは被曝問題のコアが遺伝的影響にあるという点です。
放射線影響研究所、そしてその前身のABCCとは何かを考えたとき、原爆で広島・長崎における大量虐殺を行ったアメリカが、その影響をできるだけ小さく見せようとして作られた組織でした。
その際、最も重要だったのは遺伝的影響を否定することでした。原爆や放射線被曝に対し最も手厳しい批判を行っていたのが、ハーマン・ジョーゼフ・マラーなど生物学者・遺伝学者で、これを抑えること抜きに核戦略が維持できなかったからでした。

この点を僕はICRPの考察5で明らかにしました。
明日に向けて(1958)被曝影響の研究はアメリカ軍が主導、主眼は遺伝的影響だった-ICRPの考察5
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/6f05c93dffc713c3d88a6b7e71e30fb2

さて問題がその研究がいま、蒸し返されている点です。それもかなり周到に。
というのは朝日新聞の記事にもあるように、ABCCが行った当時の調査を精査すると、実は二世に障害や死亡のリスクが増えることが見えてきたと、ひとたび言っているからです。
しかしその後に、それは遺伝ではなく貧困のせいだったのではないか?と話をつないでいきます。そしてその点をもっと詳しく調べるためにゲノム解析が必要だとなっているわけです。

● ゲノム解析の狙うもの

これのどこが用意周到なのかというと、まずはABCCの戦後まもなく行われた調査は「あれでは遺伝的影響が見えるわけがない」と言われた偏向したものだったので、それをカバーしようとしている点です。
それで今回は「精査してみたら実は障害や死亡のリスクが増えていた」と述べることで、ABCCの当時の調査が妥当であった(リスクの増加はきちんと押さえていた)とすくい上げているのです。
そしてその上で、ABCCも認めていた「障がいや死亡のリスクが増える」傾向は、遺伝によるものではなく貧困によるものだった思われると新たな遺伝否定論を出し、それを裏付けるためにゲノム解析をやろうというわけです。

ではなぜこの時期にこんな理屈が出てくるのでしょうか。僕は端的に言って、福島原発事故での被曝による健康被害がどんどん目に見えてきており、だから遺伝的影響への懸念も強まっているからだと思います。
同時にその懸念を抑えこみつつ、さらに多くの人々を被曝させることすらが狙われている。次の大きな核事故が起きることも折込ずみで原発を使い続けようとしているからです。次の事故の際、人々に被曝を危険なものを思わせないことが狙われている。
こう書くと「いくら何でもまさかそんなことまでしないだろう」と思われるかもしれません。でもみなさん、見据えて下さい。原子力マフィアは無抵抗の広島・長崎市民を虐殺し、核実験で世界中の人々を被曝させ続けてきた張本人です。

その原子力推進派、いや原子力マフィアが、いまいちど、遺伝的影響を強く否定し始めている。そしてそのために「ゲノム解析」を行おうとしている。新たな騙しのテクニックとして市民側からクロスチェックできない科学技術が使われようとしている。
そしてこの「科学」の「御旗」をもと、事故すら織り込み済みで原発を動かし、福島原発から放射能汚染水を海に流し、汚染土をあちこちにばら撒き、使用済み核燃料を各地で受け入れさせようとしているのです。
こんなこと、絶対に許せない。被曝の強制と立ち向かわなくては!今回、こうした問題意識をもって福島県各地を取材し、この間の確信を深めることができました。ぜひそれらをみなさんとシェアし、核から命を守る奮闘を共にしたいと思います。


ネットより

続く

#ICRP #放射線影響研究所 #ABCC #被曝の遺伝的影響 #ゲノム解析 #原子力マフィア

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