守田です(20201117 09:30)

明日に向けて(1912)で論じた「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」の考察の続きです。
世界の流れを俯瞰するために、資本主義がどんな道を辿ってやってきたのかを、少しく振りかえってみたいと思います。僕なりに世界史を切り取ってみます。

● ヨーロッパからの考察にならざるを得ないわけ

資本主義はどこから来たのか。近世からの世界史が語られる時、ヨーロッパが中心になります。本当はそこからして問題です。世界史が世界の一部から語られることになるからです。
この哲学や世界、革命を語るシリーズを始めるに際して、思想家の顔写真を並べました。多くが僕が実際にその本を読み、強く影響を受けた方たちでした。
ところがこれに対し「写真であげられた思想家が欧米人+日本人しかいない!」という指摘が飛んで来ました。実際にはロシア人も入っているのですが・・・。(レーニンとマリア・スピリドーノワ)

でも確かに最もな指摘だと思います。今後、もっと豊かな展開を進めるためには、イスラム圏で論じられていることをはじめ、アフリカやアジアなど非西欧のものにもっと視座を広げなくてはと思っています。
とくに僕はこの間、トルコに何度も招いていただきました。その際、トプカプ宮殿やアヤソフィア博物館なども訪れ、この国がかつて世界帝国であったこと、さまざまな知恵、工芸、技術などが集積していたことをしみじみと感じました。
その点でトルコの思想家を上げることができていないことを、トルコの友人たちに申し訳なく思います。

それでも僕はここから出発せざるを得ないと思うのです。
なぜなら現代社会を大きく規定する資本主義が、ヨーロッパから生まれ、世界を制圧しているためです。いままさに世界を荒らし続けている新自由主義もそうです。
そのため私たちの中に染みとおっているパラダイム=時代的思考も、西欧の影響を強く受けています。「科学」なんて言葉もそうです。多くの場合、西洋科学のことがそのまま「科学」であると考えられている。

僕個人の事情もそうです。このような支配構造の中で、社会変革を志して学んできた僕自身の思想的歩みも、残念ながらこの西欧の枠の中にあり、それ以外を十分に認識できていません。
そのため非西欧圏の思考に深く通じていて、なおかつ西欧が世界を制覇したこの資本主義の世紀を越え出るための豊かな見識をお持ちの方がいたら、ぜひとも教えを請いたいです。
その点で僕自身、自分の思想の貧困と偏りをも自覚しつつ、それでもこれまで学んできた思想家にならいつつ、世界を切り取ってみたいと思うのです。それでないといつまで経っても考察を始められないですし・・・。


僕はこうした思想家たちに学んできました・・・

● 大航海時代-世界が暴力的に商業圏の中へ

さてなにはともあれ資本主義というものがいつごろから始まったのか、始まったとされているのかから見ていきましょう。ここも数百年の歴史を数行で表すことになるのでかなり大雑把な記述になります。詳しい方、どうかご容赦ください。
資本主義以前の中世と近世の大きな違いは、15世紀から17世紀の「大航海時代」にヨーロッパから世界に人々が飛び出したことでした。中心となったのはスペイン・ポルトガルでした。
そのことで世界に商業販路が拡大し、ヨーロッパに急速に冨が蓄積されていきます。それが資本主義登場の地盤を育てていきました。

このころの商人たちは強い王の下で保護をうけながら販路を開いていきました。その政策を「重商主義」といいます。
もっとも交易自体はそれまでも広範囲で取り交わされていました。これと大航海時代との違いは、中国で発明された火薬がヨーロッパに伝わり、14世紀ごろから武器に使われだしたことでした。
大航海時代にはすでに大砲が作られており、乗組員たちも小銃で武装していました。その軍事力を背景に、世界は暴力的にヨーロッパにつながる商業圏に飲み込まれていったのでした。

火器で武装した商人たちは、しばしば海賊にもなり、略奪を働きました。とくに過酷な暴力が、アフリカや南北アメリカ、のちにアジアでふるわれました。大規模な侵略が行われました。
このため世界各地で先住民族が侵略者に圧迫され、虐殺されたり、奴隷にされたりしました。コミュニティも破壊されました。
もちろんたくさんの抵抗闘争も生まれましたが、それでも資本主義の世界制圧は防げなかった。資本主義は血塗られた侵略の歴史によって、世界に広がっていったのでした。

やがて、先に世界の分割を進めていたスペインやポルトガルを追い落とす形でイギリスが力を増し、そのイギリスから工業が生まれ、産業の時代が始まることとなります。
資本主義は正確にはここから始まります。資本主義社会とそれまでとの違いは、単に商品交換が行われるだけでなく、その商品の生産もまた商品形態のもとに行われることになったことにあります。
そのために必要なのは、雇われて働かなければ食べていけない人々=労働者階級(プロレタリアート)でした。


スペイン艦隊を率いて世界を荒らしまわったマゼラン(ポルトガル出身)


セブ島に立つラプ=ラプ像。1521年4月27日マゼランをマクタン島の闘いで倒した。後ろはマゼラン記念碑

続く

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