守田です。(20121012 13:00)

10月5日に市民と科学者の内部被曝問題研究会、汚染・環境実態調査・検討部会、モニタリングポスト測定チームによる記者会見が行われました。僕もチームの一員として参加し、司会を担当しました。

会見場の自由報道協会には、たくさんのジャーナリスト、記者の方々が参加されました。この間の、自由報道協会の会見ではひさびさの満員状態だったとのこと。さっそく翌日、朝日新聞と、東京新聞が記事を掲載してくれましたが、その後にもマスコミの問い合わせがあり、雑誌などで追加記事がでる可能性があります。

この会見の様子は以下から見ることができます。
*USTREAM録画「市民と科学者の内部被曝者問題研究会(汚染・環境実態調査検討部会モニタリングポスト検証チーム)記者会見」
http://www.ustream.tv/recorded/25928641

今回の記者会見で中心的に発表したことは、福島県内のモニタリングポストの網羅的測定の結果、表示されている数値が、実測値した数値よりも傾向的に低く、住民の放射能環境を正しくモニターしているとはいえない点です。測定を行ったのは、福島県内の相馬市・南相馬市51箇所、郡山市48箇所、飯舘村18箇所です。

この発表の機軸的な点は、おって測定チームが報告してくださるそうです。それも転載したいと思いますが、ここでは会見の最後に矢ケ崎さんが語った内容を文字起こししてお伝えしておこうと思います。ここに今回の測定を通じて訴えようとした観点が鮮明に示されているからです。なお発言は、記者さんの質問に答えて行われたものです。

今回こうした行動に参加できたことはとても光栄です。放射線防護を推し進めるために、さらに福島県をはじめ、さまざまな地域での測定作業に参加を続けたいと思います。

記者会見における一問一答から
(文字起こしでは、会話体を文語体に直しています。必要に応じて語句も補っており、必ずしも発言そのままではありません。そのため文責は守田にあります)

記者による質問
配られた会見レジメの、「測定結果の特徴」のところに、チェルノブイリでの移住権利のことに触れられていますが、日本ではチェルノブイリのような明確な基準はできていません。今後、チェルノブイリのようなきちんとした避難の基準を提示していきたいというお考えはあるのでしょうか。

矢ケ崎さんの回答
これまで政府は、公衆に対する被曝基準を年間1ミリシーベルトとしてきました。事故後に政府はこれを20ミリシーベルトにつりあげました。けれども、わたしどもはこれは、命を守るという点では、たいへんな、民を捨てる行為だと思っています。

放射線に対する抵抗力が、事故が起こったら20倍になる特別な市民が日本にいるなどということはまったくありません。人間の放射線に対する抵抗力は、事故があってもなくても同じなのです。ですから1ミリシーベルトを20ミリシーベルトに切り上げるということは、生活の条件をきり縮められたということ、まさに命を削られたことに匹敵します。

福島であろうと、沖縄であろうと、すべての日本の市民が怒りを発しなければいけない、そういう法的な措置がとられてしまったのです。

今、日本は年間20ミリシーベルトで一応避難ということになっていますが、チェルノブイリ周辺3カ国では、「1ミリシーベルト以上で危ないから、移住したい人は自分の意志で申し出てください。5ミリシーベルト以上はそこにいてはなりません」という区分を行っています。

この点でも原理に即して言えば、命の放射線に対する抵抗力が、チェルノブイリ周辺の国よりも日本の方が20倍も優れているなどということはまったくありません。こういう点で、日本の市民はもっと基本的な視点で、命を守ることを掲げなければいけませんし、もちろん報道される方も、その視点で、市民の命ということを基準に、報道していただければ幸いだと思っています。

わたしどもは、市民の共同の力で、こういうことはすぐに是正しなければいけないと考えております。どうぞその点をきちんとご理解いただいて、闘うという言葉を使えば、少し言葉が不適切かもしれませんが、市民の権利を守るために報道機関がきちっと役割を果たしていただけたらありがたいと思っております。

命を守るということから言えば、事故が起こったら20ミリシーベルトでいいというような原理は、命ではなくて、原子力発電所の都合にあわせるもの、政府の賠償の都合にあわせるものです。賠償を1ミリシーベルト以上だったらたくさんの人にしなければいけないけれど、20ミリシーベルト以上だったら少しだけですむ、こういうことに法的な意味をもたせるということで、20ミリという基準が使われていますが、これはICRPという組織が勧告ということで言っていることです。このICRPは原子力発電所の防護はいたしますが、人の命の防護はいたしておりません。

その点で報道機関の方も、人の命を守る立場にあるのか、原子力発電所を擁護する立場にあるのか、きちんとこの点を見極めて、やはり主権在民の国の市民のための報道をする立場を貫いていただければと思います。

以上