守田です(20220206 23:30)

● 「宮崎・早野論文」のあまりの酷さを克明に描いた動画です。ぜひご覧下さい

今回のタイトルは、最近、ネットにアップされた動画タイトルから撮ったもの。
正確には『調査報道 通称「宮崎・早野論文」 『科学的』の正体 私たちは実験台だったのか』です。

作成されたのは「個人被ばく線量データ利用の検証と市民生活環境を考える協議会」。
代表の島明美さんが、レポーター件ナレータを務められています。素晴らしい内容です。
福島原発事故を始めとするあらゆる核災害から命と身体を守るために必見の動画です。

前編 調査報道 通称「宮崎・早野論文」 『科学的』の正体 私たちは実験台だったのか

後編 調査報道 通称「宮崎・早野論文」 『科学的』の正体 私たちは実験台だったのか

● いい加減なデータから作られた「宮崎・早野論文」

問題の論文は福島県伊達市に関わるもの。伊達市は原発事故で全村避難した飯舘村の隣町です。市の一部も年間20ミリシーベルトを越える「特定避難勧奨地点」となるなど、広範囲に放射性物質が降ってしまいました。
このように年間1ミリシーベルトを越える放射性物質が降ってしまった場合、本来、国と東電が全面的にお金を出して、希望者の避難移住を可能にし、せめてもの徹底した除染を行うことや損害賠償を行うことが当然の務めです。しかし国はきちんと責任を果たさず、伊達市はむしろ除染範囲を切り縮めようとしました。
具体的には当時の市長が市内を3つに区分、島さんも居住する7割の市民が住むエリアの多くを除染対象外にしてしまいました。年間1~5ミリシーベルトまでの地域でした。そこでは地表面で3マイクロシーベルト以上のホットスポットのみが除染対象、しかも自己申告制とされてしまったのです。

また伊達市民にガラスバッジが配られましたが、これにも島さんは不安を感じました。ガラスバッジを常時つけていることは誰にに難しく、正確な測定などできてないのに、このデータで伊達市の線量についての論文でも書かれたら大変だからです。
しかし島さんの不安は的中し、このいい加減なデータで論文が作られ、イギリスの科学誌Journal of Radiological Protection(JRP)に掲載されました。その執筆者が福島県立医大助手宮崎真氏と東大名誉教授早野龍五氏でした。

島さんは高エネルギー加速器研究機構名誉教授の黒川眞一さんからの連絡で、この論文のことを知り、JRPのサイトからダウンロード。また情報公開制度を利用して伊達市が研究者に渡したデータやその時のやり取りなどを把握し、黒川さんと共に分析されました。
すると論文があまりに多くの不正や誤りに満ちており、伊達市の方針を正当化したものであることなどが分かりました。

そもそも論文はデータを使う際に必要な伊達市民の合意を得ておらず、これだけでも倫理的にアウトでした。さらにガラスバッジが配られてない時期のデータが書き込まれていた。データねつ造という科学者として失格の重大な不正でした。
島さんは他の不正や誤りと合わせ、これらを東大と福島県立医大に告発しました。すると論文は2020年7月にJRP誌から撤回されました。しかし市民の合意を得なかったことだけが理由とされ、他の不正に満ちた内容は撤回されませんでした。
そこで島さんは黒川さんと共に、論文の完全撤回を求めるとともに、こうした「科学」の名の元の不正が福島で行われていることを広く知ってもらうためにも、この不正の告発を続けています。とても重要な訴えです。

スライドは動画前編から拝借しました

以上、前編のあらましを紹介しました。次回、後編をご紹介します。

続く

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