守田です(20180122 18:00)

民衆の力を高めるための考察の7回目です。
今回は目の前にある危険性について論じたいと思います。朝鮮半島情勢をいかにみるべきかです。

昨年1月のいかにも危険に見えるアメリカトランプ政権の誕生と、一向に核開発から引く姿勢を見せない朝鮮の強硬姿勢の中で、昨年より繰り返し「〇月についにアメリカの攻撃が始まる!」という憶測が流れています。
それである方からこんな質問をいただきました。
「アメリカの先制攻撃が遅くとも7月7日(北朝鮮開国70周年記念日)までには、実行されるだろうとのニュースが世界をかけめぐっているようです。これについての守田さんの考えを教えてくださいませんか?」というものです。
それでお答えしたメールをここに転載しようと思います。

僕もこれについて論じなければと思っていますが、そこだけをヒートアップさせるのもなあと考えて、いま「平和力を高めよう」という連載を続けています。
 
 攻撃について、僕は可能性はそれほど高くないと思っています。
 膨大な犠牲を出すことになるし、アジアの政治状況をいっぺんさせることになるからで、しかもアメリカの望む形になるとは限らないからです。単に犠牲者の数だけではなく、その後の政治バランスのことも含めて、リスクが高すぎます。
 しかしそんな 高いリスクのことが起こりうる可能性が少しでもあることについて問題にしていかなくてはだと思います。
 危機だと煽るのではないけれど、「こんな大変なリスクがある状態そのものがおかしい」と論じていくということです。

 どうも週刊誌などを読んでいると、危機を面白おかしく煽っているようなところがあります。まるでゲーム解説を行っているかのような感じで。おそらく執筆者も本気でそう思っていないのに「〇〇に攻撃が行われる」と書いているように思えます。
 おそらくそれが米日政府の利害にも合致するのです。

 アメリカにしてみればこれを煽れば煽るだけ、韓日でミサイルなどの武器が売れます。
 日本にしてみればこれこそ安倍政権の命綱 !前回の総選挙の後にも麻生副総理が「北朝鮮のおかげで勝てた」と本音を述べています。
 つまり「戦争があるぞ、大変なことになるぞ」と適度に煽った方が自民党に有利なのです。

 しかしそれにもっと信ぴょう性があるならば、株価がこんなに高いままでいることはないのではないですかね。
 それやこれやを考えて、こちらの論じ方も政府与党の有利にならない形で問題を論じていかなくてはです。

僕は今も基本的には同じように考えています。
マスコミに流れている情報ではもし戦争になったら日本でも10万人単位の犠牲が出ると言う。そもそもそんなことを絶対に起こらないようにするのが政治の役割です。
そんな大変な危機を必死になって低減するのが日本政府の行うべきことなのです。なのにこの根本問題が論じられていないことがおかしいのです。

とくにいま、韓国は懸命になって朝鮮との和平を進めようとしています。
このため冬季オリンピックで南北統一での入場を行い、ホッケーの合同チームを作ろうとしている。これに朝鮮の側も応じようとしている。あきらかに南北が和平に向かって努力を傾けているのです。
なぜ韓国はこれほどまでに必死になっているのか。当たり前です。戦争になったら自国民が一番たくさん死ぬからです。経済的にだってとんでもない打撃を受けてしまう。
それはまた朝鮮も同じなのです。戦争が始まったらとてもではないけれどアメリカに勝てるわけがない。だから戦争になったら朝鮮も壊滅的な状態に陥るのです。

同時に両サイドの多くの人々が、もう二度と、同じ民族同士で殺し合いなどしたくない、朝鮮半島を再び戦火にまみれさせたくないと思っていることがこの政策を生み出しているのでしょう。
それは当然すぎる願いであり狙いです。

こうした韓国の姿勢に対して、中国、ロシアも同調を強めています。
これまた当たり前なのです。朝鮮半島で大変な戦乱になったら国境を接している中国も、ロシアも自国に何らかの混乱がもたらされる可能性が大きいからです。
例えば大量の難民の発生です。両国ともいざとなったら人道的に受け入れざるをえなくなります。
いやそれだけではなく、状況いかんによっては戦火そのものも飛び火してくるでしょう。中国・ロシア軍とアメリカ軍との衝突だって起こらないとは限りません。

だから、朝鮮半島の当事国でも周辺国でも、なんとかアメリカが戦争を起こす可能性を減らそうとしているのに、朝鮮半島の周りにある国の中で、日本政府だけがこの和平努力に協力しようとしていません。
それどころか韓国に「裏切りもの」と言わんばかりの悪罵を投げつけています。河野外相など、明らかに韓国の姿勢に対抗して、朝鮮との国交断絶を各国に呼びかけるというトンでもない発言すら行っています。
これに対してロシアからは「国交断絶を宣言せよとは戦争宣言と同じだ」という強烈な批判すら巻き起こっています。なんということでしょうか。

そもそも戦争が起こるとすればアメリカの先制攻撃によるもの以外ではないのです。そんなもの、国際法上合法化される理由などどこにもありません。侵略戦争そのものです。
またその際、アメリカだけが本土が戦場から遠くにあるのです。それもまたアメリカだけが戦争の引き金をひきかねない根拠なのでもあります。
その際、在韓米軍とその家族など、アメリカもまた戦火によって甚大な被害を受ける可能性があり、だから1990年代に攻撃を断念したと言われていますが、それでも朝鮮半島から遠く離れているアメリカが一番被害が少ない。

日本はどうなのか。甚大な被害が出る可能性があるのです。だからそれを避けようと努力するのが当たり前のことなのです。
「では朝鮮の核開発をどう止めるのか」という声が聞こえてきそうですが、非常にシンプルで有力が道があります。「核兵器禁止条約」を推し進めるのです。
ところがアメリカに追従する日本政府は、この条約に背を向けたまま。それでどうして朝鮮の核開発だけを批判することができるのでしょうか。

安倍首相や河野外相、および日本政府は明らかに平和のための努力に背を向けています。
なぜか。実は本音では日本政府も、戦争になる可能性が低いと考えているからでしょう。その上で、「戦争になるかもしれないぞ」「北朝鮮が何かをやらかすぞ」と恐怖を煽った方が政権にとって有利と判断しているのです。
先にも述べたように麻生副総理がすでにはっきりとその本音を述べています。朝鮮半島にある危機を減らそうとするのではなく、っ危機を弄んで政権維持に利用しているのだから本当にひどいことです。

こういうあり方を「タカ派の平和ボケ」と言います。
戦争は互いの国の為政者の思惑を離れたところでも始まってしまうこともあるのであって、だからこそ、軍事的リアリティからいっても、万が一にも戦争にならないための努力を重ねることこそが重要なのです。
しかしそうした真っ当は危機管理能力がマヒしてしまっています。この政権が続く限り、そしてまた実際に他国を壊滅させるだけの軍事力をもったアメリカがアジアにうろうろしている限り、この危険性はなくならないし、利用され続けます。

危険性はアジアにおけるアメリカ軍の存在と、平和に背を向けた安倍首相、河野外相、日本政府の側にこそある。
この真実を広く訴えていきしょう!

続く