守田です。(20180118 10:00)

民衆の力、とりわけ平和力を高めるための考察の5回目です。
今回は「軍隊は人殺しを作る場」であって、「必要悪」などではなく、なくしていかなければならないものであることをみなさんと確認したいと思います。
いま日本には自衛隊という明確な軍隊がありますが、しかし一度も、他国の軍隊や武装グループと交戦もしていないし、いわんや他国の民を殺害したこともありません。

その意味では自衛隊は特殊な軍隊、「軍隊になり切っていない軍隊」です。
そして私たちが人殺しの部隊を持っていないがゆえに、私たちの暮らしはまだまだ穏やかなのです。
なんといっても町の中を歩いている殺人者の数が、戦争大国アメリカと比べて圧倒的に少ないからです。

僕はこの「軍隊になり切っていない軍隊」が「本当の軍隊」=人殺し集団に変わってしまうために解体し、災害救助隊として再編すべきだと考えています。
その点で「憲法9条の下でも個別的自衛権は否定されていない」とする「自衛隊合憲論」にはまったく反対です。なぜってほとんどの戦争は「自衛」の名のもとになされているからです。

こうした考察を深めるために、前回はアメリカ社会の暴力性を問題にしました。
その根拠として、映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』の中で、アメリカ白人がアメリカ・インディアンや黒人を長く抑圧してきたがゆえに、報復を恐れる暴力的な感情があるからと洞察されていることを紹介しました。
なるほど、深い分析だと思うのですが、僕はそれだけでは足りないと思うのです。やはりこれに加えてアメリカが戦争を続けていること、だから人殺しをさせられている人間がとても多いことに、銃犯罪多発の大きな根拠があると思うのです。

アメリカ映画の中には「軍隊が人殺しを作る場」であることを鋭く告発している映画もあります。スタンリー・キューブリック監督による『フルメタルジャケット』です。アメリカ海兵隊を描いたものです。
「フルメタルジャケット」とは「完全被甲弾」のこと。弾芯が金属(メタル)の覆い(ジャケット)で覆われている貫通性の高い弾丸で、軍のライフルで使われています。

作品は二部構成になっています。前半は海兵隊員の訓練風景、後半はベトナムでの実際の戦闘風景です。
前半で海兵隊の実際の訓練に近い映像が流されますが、この訓練はもともと「徹底して個性を否定するためのもの」。若者たちを殺人マシーンに変えるものです。

見どころとなっているのは教官の「ハートマン軍曹」による訓練風景。実際に海兵隊の教官を行ったことがある男性が演じています。
一部がネットにアップされていたのでご紹介します。

ハートマン軍曹
https://www.youtube.com/watch?v=dxLUtipeke4

字幕つきのものを紹介したかったのですが、かなり意訳されているものしかでてきませんでした。
ここにはいわくがあります。この演説がもの凄いのです。人種差別や性差別など犯罪的な内容が連呼されるのです。こうした言葉の暴力によるいたぶりに、訓練兵たちは「イエス・サー」と連呼させられます。
特徴的なのは、性的な差別・罵倒が、スラングもまじってふんだんに出てくること。性が人間の尊厳に深く関わっているからです。それを踏みにじることで「個性を徹底的に否定する」のです。

海兵隊の訓練の象徴としてミリタリーケイダンスというものもあります。走りながら全体で復唱する歌で、『フルメタルジャケット』にも出てきます。
これも字幕のない画像がありましたのでご覧下さい。同じくハートマン軍曹が歌い、兵たちが復唱します。

Military Cadences USMC 1 2 3 4 I Love The Marine Corps.wmv
https://www.youtube.com/watch?v=oRKhGRfM8R4

これは実際に海兵隊で歌われていたものだそうです。歌詞の冒頭だけ紹介します。

Mama and Papa were laying in bed.
ママとパパはベッドでゴロゴロ

Mama rolled over and this is what she said;
ママが転がり、こう言った

oh,give me some…
お願い、欲しいの・・・

…P.T.!
しごいて!

P.T.とはフィジカル・トレーニングの略で、性的意味と軍隊でしごくという意味とかけあわされています。

より調べてみたらこれでもまだ穏健な方で、ベトナム戦争時にはこんな歌詞も連呼されていました。

ナパームをガキどもに

村を爆撃 皆殺し
広場にナパームを落とせ
日曜の朝、敵が祈りに出かける途中に殺せ
学校のチャイムを鳴らせ
ガキどもが集まるのを見ろよ
M240機関銃は撃つ用意
クソガキどもをなぎ払え

こんなものもありました。

I wanna Rape Kill Pillage’n’ Burn,annnn’ Eat dead Baaa-bies
レイプするぞ ぶっ殺すぞ ぶんどって 焼き捨てて、死んだ赤ん坊を 食ってやる

訓練兵たちは毎日、毎日、性的スラングもふんだんに盛り込まれた人格の罵倒を浴び、「イエス・サー」と叫ばされる。
あるいはこんな歌を復唱させられ、個性を、尊厳を、押しつぶされていくのです。こうしたことが性犯罪に親和的な軍という組織を生むことにもつながっています。

私たちが注目すべき点は、こうしたトレーニングに名を借りた虐待を経なければ、平均的な若者は、とても残虐な殺人者などになれないのだという点です。
大事なのは、人、とくに若者が暴力的な行為に及ぼうとしたとき、両親の存在、とくに母親が心の中の抑止力になっていると言われていることです。だから軍隊は、兵士たちの心の中の両親、とくに母を殺すのです。

僕はすべてのみなさんに問いたいです。
「若者たちを殺人マシーンに変えてまで自分を守りたいですか?」と。
僕はまっぴらごめんです。

だから僕は自衛隊が「本当の軍隊=殺人集団」に変わってしまう前に、災害救助隊=救命集団に変えたいと切に思うのです。
みなさんも一緒に声をあげてください。

続く