守田です。(20161012 23:30)

みなさま。このところとても長い間、ブログの更新を怠ってしまいました。大変、申し訳ありません。9月23日の投稿から書いていませんから19日間のブランクを作ってしまいました。これまでで最長です。
理由はこれまでにない密度で講演を依頼いただき、かつまた内容にも大きな幅があったので、準備に追われて「明日に向けて」を書く時間がなかったことにあります。
また四国全県や島根県、鳥取県など、これまで行ったことのなかったところに次々と呼んでいただき、講演小旅行を繰り返してきたことでも時間がとれませんでした。
けして体調不良や精神的不調のためではありませんのでごうかご心配されませんように。

Facebookを観ていただけている方には、時々の集会報告などをまめにアップしているので、けして身体の問題ではなくあちこちを走り回って時間がとれないことをご理解いただけていると思うのですが、そうでない方にはご心配をかけたと思います。
ともあれ僕は現在、心身共にとても元気です。今年の前半期にかかってしまった坐骨神経痛も完治しました。なのでご心配はご無用です。
今後、こうして飛び回っている中でも、ブログの更新を続けられるように、活動や執筆に工夫を加えることでパワーアップしていくつもりです。ご心配していただいた方がおられましたら、この場を借りてお詫びとお礼を申し上げます。

さてその講演小旅行ですが、先週の7日に島根県松江市までいきました。鳥取県境港市で8日に講演するためですが、この日は松江駅から島根原発見学に行ってきました。
僕を招いてくださった鳥取の方のコーディネートのもと、長い間、島根原発に反対してきた地元の方たちが案内してくださいました。
あけて8日には午後から境港市民会館で講演にのぞみました。新聞の折り込みや、学校でのチラシの配布のお願いと実現など、幅広い宣伝を行ってきてくださったみなさんのご尽力のもと、実数で70名以上が集まってくださいました。
境港市の人口が34000人弱であることを考えたとき、とても大きな成果だったと思えます。また境港市の防災課の方々や、鳥取県会議員さん、境港市、米子市双方の市会議員さんなども多数、参加して下さいました。

今回はこの島根原発取材と、境港市での講演についてご報告したいと思います。

島根原発は島根県の県庁所在地の松江市に位置しています。全国で唯一、県庁所在地に立地している原発です。もともとは鹿島町に建てられたのですが、その後に鹿島町が松江市と合併したので県庁所在地への立地ということになったとのことです。
松江市から原発に向かう際に驚いたのはあまりにこの原発が人口密集地の近くに作られていることです。正確には日本の原発の第一号機である東海原発の方が、周辺の人口が多いそうですが、それでも県庁所在地のすぐそばにあるのは際立っています。
もちろん人口密度の低いところに建てれば良いと言うのでは断じてありませんが、それでも人口の多い現在の松江市内に原発があることの危険性をひしひしと感じざるをえませんでした。

しかもそこからお隣の鳥取県までもわずか20キロ。島根県に接する境港市の市役所まででも21.1キロしかありません。
その境港市には米子市を起点とするから境線が運行されています。米子駅の「れい番線」から出発して終点が境港駅になりますが、現在は鬼太郎ワールドの入り口で、走っているのは「鬼太郎列車」「ねこ娘列車」「ねずみ男列車」「目玉おやじ列車」です。
境港駅からは「水木しげるロード」が続き、辿っていくと「水木しげる記念館」に至ります。たくさんの妖怪の大小の銅像を楽しみながら歩けるのですが、その記念館までも島根原発からほぼ21キロしかないのです。
僕も講演の前日に宿泊したホテルから境線の駅に出て「目玉おやじ列車」に乗り、水木しげるロードを記念館まで辿り、見学をしてから会場に向かったのですが、終始、「妖怪たちは原発をどう捉えているのだろう」との思いが消えませんでした。

さてこの島根原発は日本の電力会社が設置する原発としては美浜原発、福島第一原発に継ぐ3番目のもので、1号機は福島第一原発1~5号機と同じマークⅠ型の格納容器を使っています。
2号機はマークⅠ改良型、建設中でまだ一度も稼働していない3号機は「改良型沸騰水型原発」と呼ばれる格納容器を持っています。
沸騰水型原発の段階的改良が良く分かる原発サイトだと言えますが、そのうち1号機は老朽化を理由にすでに廃炉になることが決まっているものの、2号機は再稼働が、3号機は初めての稼働が狙われています。

これら沸騰水型原発の変遷を分かりやすく図示しているページを紹介します。(アトミカより)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02010101/10.gif

マークⅠ型から始まった沸騰水型原発が、次々と改良を繰り返してきた事実から分かるのは、この原発が致命的な欠陥を持っており、度重なる改良を加えてこなければならなかった事実です。
何よりも深刻なのは開発時にあまりにコストを抑えすぎたために、格納容器を小さく作ってしまったことでした。
どこが致命的なのかというと、そもそも格納容器は、核分裂を行っている原子炉圧力容器で何らかのトラブルが起こった時に、内部から発生してくる放射能入りの蒸気を閉じ込めることを役割とした装置です。
ところが容量が小さいために、その分、受け止められる放射能の入った蒸気の量も多くはなく、一定量を超えると破裂してしまう可能性があることが、この炉を各地に建設した後に分かったのです。破裂したら最悪の場合、破局的な事故になります。

設計者はゼネラル・エレクトリック社ですが、同社はスリーマイル島原発事故のあとにこの事実を悟り、非常事態に備えて、放射能を排出するベントを後付けすることにしました。
しかしこれはもともと矛盾した装置でした。先述のように格納容器の役割は放射能を含んだ気体を封じ込めることにあります。ところがベントは格納容器を守るために放射能を含んだ気体=猛烈な毒ガスを環境中に噴き出すためのものなのです。
実際のところ、東芝に中途入社して格納容器設計担当者となり、やがてベントの後付けを担わなければならなくなった元設計者の後藤政志さんは、これを「格納容器の自殺装置」と呼んでいたといいます。

しかもベントはいわば急場しのぎの緊急装置でしかなく、格納容器そのものの欠陥が変わるわけではありません。このためゼネラル・エレクトリック社は日立と会社的に結合するとともに東芝とも合同で格納容器そのものを新しいものに変えていきました。
まずマークⅠ型ではフラスコのような形状をしていた格納容器をマークⅠ改で大きくしました。この格納容器は「魔法瓶型」と呼ばれています。容量は約1.5倍になりました。
さらにマークⅡ型では格納容器の形が大きく変わり、やはり容量が拡大されましたが、さらにマークⅡ改良型も作られて、この時も容量がⅡ型の約1.5倍にされています。

この際、出力も大きくなっているので「出力あたりの格納容器の容積は変わらない」という見解もだされていますが、問題は深刻な事故に陥った時に、格納容器がどれだけの放射能を含んだ気体を受け止められるかなので容積拡大は重要なポイントです。
しかしそれでも安全性が確保されたと思えないがゆえにさらに「改良型沸騰水型原発」が開発されました。ABWRと略称されるものです。
もともと沸騰水型原発は英語ではBoiling Water Reactor(BWR)と表記されていて、これに「進められた」という意味のAdvancedがつくのが改良型の呼び名なのです。まだ稼動してない島根原発3号機がこの型です。

こう見てくると、マークⅠ型の危険性はかなり前から認識されていたのだから、1号機から5号機までマークⅠ型を使っていた福島第一原発はもっと早くに廃炉にすべきだったことが見えてきます。
しかも福島第一原発事故ではベントはなかなか開けられず、2号機では完全失敗したのでした。後付けのベント装置はうまく機能しなかったのです。ここでは1型の欠陥対策が十分な効果を果たさなかったことも明らかになったのです。
島根原発1号機はこの福島第一原発1号機とまったく同じ型ですし、古さも福島とほとんど同じですから、廃炉にされるのは当然のことです。むしろここまで深刻な事故を起こさなかったことは幸運以外のなにものでもありません。

これに対して2号機はこのマークⅠ型改ですが、メーカー側はその後にⅡ型、Ⅱ型改、ABWRと改良を重ねていったのですから、これまた危険性が自覚されていたことが見え見えの炉であることが明らかです。
にもかかわらず中国電力は、この炉でプルサーマル(燃料の一部にプルトニウムを混ぜて運転すること)を狙っていました。とんでもないことです。安全感覚と倫理観が麻痺しています。これらからもこの炉は絶対に再稼働すべきではないのです。

こうした1号機、2号機の危険性は現地見学でも実感しました。とくに島根原発のすぐ横にあるPR館に入り、館長代理の方から丁寧な説明も受けたことが印象的でした。
この説明は、見学に同行してくださった島根原発に長いこと反対している地元の議員さんと面識のある館員の方からのもので、その紳士的な対応には感謝していますが、しかしその内容は1,2号機の危険性を言外に明らかにするものでした。
というのはPR館では3号機=改良型沸騰水型原子炉のことが強調されていたからです。説明もそれに沿うもので、いかに3号機で安全面での重要な改良がなされたのかというものでした。
しかし聴けば聴くだけ見えてくるのは、改良を施さなけれがならなかった1号機、2号機に、明確な欠陥があるということでした。そもそも原子力が完成されたテクノロジーなら安全面での改良などされる必要はないはずなのです。

この最新型の稼働実績があるのは柏崎刈羽原発6、7号機(1996年、1997年)、浜岡原発5号機(2005年)、志賀原発2号機(2006年)だけで、島根3号機はそれに続くものだとも自慢気に語られていましたが、それなら他の炉は全て危ないことになります。
いやこのABWRもとても安全だとは言えないこと、むしろ新しい型の方が安全マージンを削っている傾向があることを元東芝の技術者である小倉志郎さんが著書で述べられています。
その点はまた別に論じますが、ともあれ中電のPRを聴けば聴くだけ、少なくとも再稼働が狙われている2号機の危険性が浮き立ってくるのでした。

続く

次回はABWRの改良点が映し出す沸騰水型原発の危険性と、この原発の直近を走る断層帯の問題について述べます。

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連載1300回越えに際して、カンパを訴えています。
今回はさまざまな取材を通して得た知見をまとめ書籍化していくための資金提供を訴えたいと思います。
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