守田です。(20151106 23:30)

11月中旬に台湾を訪問することになりました。

メインの目的は、日本軍性奴隷問題(いわゆる軍隊「慰安婦」問題)の被害女性のおばあさんたちを訪問することです。
もう何回目かの訪問になりますが、とても悲しく淋しいことに、その度にお祖母さんが少なくなっていってしまいました。亡くなってしまわれたのです。
今回、会えそうなおばあさんは二人。うち一人は病院への訪問ですが、僕らがいくととても喜んで下さいます。
今回もおばあさんたちの勇気に満ちた証言、そしてあれほどの苦難を経てなお、あふれるような人間的愛情と尊厳を示し続けてくれたことに対してのお礼の旅です。おばあさんたちと良い時間を過ごしてきます。

同時に今回は台北で行われる反原発イベントにも参加することになりました。
反原発の中でもとくに原発が災害を起こした時の避難の問題を扱ったイベントです。

北京語になりますが、まずはイベントページをご覧下さい。
https://gcaa.neticrm.tw/civicrm/event/info?reset=1&id=64
https://www.facebook.com/%E6%BC%94%E7%BF%92-461412837327417/?fref=ts

イベントではまず映画『演習』が上映されます。英語ではdrill、日本語では「避難訓練」と訳した方が良いでしょう。
この映画は台湾で原発事故が起こった時に、避難が可能かどうかを問うたものです。
監督は現在の台湾の避難計画にはあまりに矛盾が大きいことを指摘しつつ、あるべき避難の方法を模索している方で、僕の考えとかなり近いところがあります。

実は昨年の夏に監督と映画スタッフが日本まで来て僕にインタビューをしていってくれたのです。
同時に僕が篠山市消防団に講演することを知り、そのシーンも撮っていきました。その後、僕が手配してちょうど翌日に行われた高浜原発の避難訓練も映像に収めて帰りました。
その映画がようやく完成してテレビなどでも公開され、今回、イベントが行われることになって、僕にも登壇の機会が与えられたのです。光栄です!

台湾は今、3つの原発サイトが稼働中です。そのうち第一原発と第二原発は台湾島の北部にあり、台北市の直近なのです。なんと二つとも30キロのラインを描くと台北市がスッポリ入ってしまいます。
非常に危ない。事故が過酷化した場合、人口密集地が放射能に襲われる可能性があります。ものすごく危険です。
もう一つ、第三原発は台湾島の南の端にあります。さらに北部に第四原発が作られようとしていました。日本製の原発のため「日の丸原発」と呼ばれていましたが民衆運動によって建設が止まりました。この意義は計り知れなく大きいです。

では台北は原発事故からの避難は可能でしょうか?
正しい答えは「事故の規模と起こり方による」ということです!これが最も正しい答えです。逃げ出せる可能性もあるかもしれないけれど、あっという間に放射能に襲われて絶望的な数の急性死が訪れる可能性もあります。
ではどうしたら良いのか。一つは原発を止めるための努力を重ねることです。災害対策のリアリティから言ってこれがとても重要です。

しかし他方で、今すぐ止められないことも考えて、リアリティのある避難計画を作っていく必要性があります。
これは原発が停まっても必要なことです。燃料プールがあるからです。ここで水抜け事故が起こったり、地震などで核燃料がゆすぶられた結果、臨界が起こってしまうかもしれない。
これまでも繰り返してきたように、原発は停まってもなお、過酷事故を起こしうるので、備えが必要なのです。

その際、全員が完全に逃げ出せる完璧な避難計画は立てようがないことをしっかりと認識したうえで、事故の際に少しでも災害を減らす、被曝を減らす減災の観点にたった防備を重ねておくことが大切です。
そのために最も重要かつ有効なのは、事前の意識啓発です。原発事故の特性、放射能被曝の特性を知り、とっとと逃げること、積極的に被曝を避けることを、あらかじめ多くの人々ともに学習しておくのです。
そのことで人々の原発からの命を守る力を可能なかぎりアップしておくこと、これに勝る対策はありません。

映画について、視聴版を見せていただきましたが、その中で政府関係者がこう語っています。
「台湾と言う国の規模が分かりますか?それでどれだけ災害対策にお金を避けると思いますか?予算は凄く少ないのです。それでできることをするしかないのです・・・」
原発を稼働している側の言い方としては無責任ですが、災害担当者の苦しい胸の内としては良く分かります。だからこそ、あらかじめ人々の意識を啓発しておくことが大事なのです。

一般に事故対策においてはさまざまな機器の調達など、ハードウェアの事前準備には多額の予算がかかります。
しかもこれらはある想定のもとで行われるので、想定が破られればまったく役に立たなくなってしまう可能性もあります。
これに対してソフトを強化しておくこと、人々の意識をレベルアップし、災害対応の能動性を高めておくと、事態の変化にもかなりの程度まで対応できます。しかも予算がそれほどかからないことが大きな利点です。

この点で僕は台北の企画でみなさんに安定ヨウ素剤をお見せし、ぜひ台北在住者は手元に持ってほしい、政府をして買わせて事前配布させて欲しいと訴えようと思います。
ヨウ素剤自身、一人の1回分は日本円でたかが10円ですから大変安いとともに、大事なのはヨウ素を配る時に、学習を重ねることができることです。このことで人々の放射能に対する知識、防護に対する知恵を増していくのです。
もちろん、安定ヨウ素剤は放射性ヨウ素にしか対応できないことも強調しておく必要があります。いざとなったら安定ヨウ素剤を服用してとっとと逃げだすことが正しい答えなのです。安全確認は逃げた後にすればいい。

これらは最新刊の『原発からの命の守り方』で書いたことですが、これを台湾にも伝えてきたいと思います。
企画そのものでは10分しか発言できないのですが、僕は映画の中で結構、話しています。また企画の主催者たちに可能な限り内容を伝えてこようと思います。
通訳もつけてくださるとのことなので、本も何冊か持って行って、通訳の方の他、日本語の分かる方にプレセントしてきます。

ちなみにこの映画監督、日本軍性奴隷問題被害者のおばあさん達を描いた傑作の映画『蘆葦之歌』を撮った監督のお弟子さんなのだそうです。
期せずして台湾の映画監督の師弟の映画に出演することになってしまいました。ありがたいことです。

なおこうした海外展開にはどうしてもさまざまな面でお金がかかります。
持続的にこうした活動を可能とするために、今回の台湾の反核企画への参加へのカンパを求めたいと思います。
よろしければ以下にお願いします。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関の口座からのお振り込みの場合は以下に。
店名 四四八(ヨンヨンハチ) 店番448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

最後に企画内容として台湾側から送られてきた案内文を貼り付けておきます。

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*司会者:綠色公民行動聯盟秘書長 崔愫欣(チエ スーシン)

*講演者:
《演習》プロデューサー 鄭文堂様
《演習》監督 蔡宇軒様
北海岸反核行動聯盟執行長 郭慶霖様
日本兵庫縣筱山市核災對策檢討委員會委員 守田敏也様

‧講演者紹介
監督と守田様以外の講演者についてご紹介させて頂きます。

鄭文堂様,台湾の有名な映画/ドキュメンタリー監督です。鄭様は長い間様々な民衆運動に参加し、この映画の発想者です。2000-2012年の間に台湾宜蘭縣の文化局局長を務めて、地方政府が災害に遭った時に行われた緊急対応会議に出席しました。
ずっと原発を反対している鄭様は、もし原発で災害があったとき政府はどう対応して、民衆を助けるかを考え始めました。これも本映画の原点です。
311後,鄭様は宜蘭縣政府と一緒に福島の管制エリアへ訪問し、たくさんの日本政府の方と会話できて貴重な映像記録を残しました。今回の講座は本映画のプロデューサー、そして宜蘭縣政府元文化局局長として参加になります。

郭慶霖様,長年台灣北海岸文化と歴史に力を入れています。北海岸反核行動聯盟の執行総長です。今台湾で運行している3つの原発所の中に2つは北海岸にあります。北海岸出身の郭様は長い間故郷での原発反対活動に参加しています。
《演習》撮影期間の時も色々手伝ってくださいました。台湾は2,3年前に第4つ目の発電所が建てられることで、原発の安全性が重視されていましたが、発電所の工事が停止になったら、一般民衆がまた原発の安全性問題を忘れていきました。
ですが、1号機、2号機はとても古くて、まだ続いて使うかどうかの問題や廃棄物の処理問題はまだ解決されてないです。これも郭様がずっと力を入れていることです。

*当日の流れ
19:00オープニング挨拶、講演者紹介
19:15《演習》放映

20:20講座開始
講演者は一人10分間ございます。最後20分間の質問コーナーがございます。

順番:
プロデューサー 鄭文堂様
監督 蔡宇軒様
北海岸反核行動聯盟執行総長 郭慶霖様
日本兵庫縣筱山市核災對策檢討委員會委員 守田敏也様

21:20講座終了