守田です(20150324 23:30)

3月18日、原子力規制委員会は、九州電力川内原発1号機の再稼働に必要な「工事計画」を認可しました。これを受けて九州電力は1号機の設備の使用前検査を規制委に申請。
30日から規制委員会によって再稼働の前に必要な設備の検査が始まることとなりました。九電はこのもとで7月にも川内原発1号機を再起動させ、8月に営業運転を再開しようとしています。

これを食い止めるために私たちはできるだけのことをしていく必要がありますが、その一つとして、この市民には分かりにくい「工事計画」の中身について知っておく必要があります。
情報を探したところ、元原子炉設計者の後藤政志さんが解説をしてくださっていることを知りましたが、それを聴いて、そもそものこの「工事計画」があまりに杜撰な形で提出されていること、点検などしようがないことが分かりました。
なぜか。答えは単純で、主要部分が白抜きで、隠して発表されているからです。唖然としました。

この内容をつかむために、後藤さんの解説をノートテークしたのでぜひご覧になって欲しいと思います。
こうした内容を私たち市民サイドがきちんと把握する努力を続けることが、作業の曖昧さに少しでもくぎを刺すことになり、安易な再稼働を阻んでいくことにつながります。
ぜひ後藤さんの説明に耳を傾けてください。時間のない方は、文字起こしをお読み下さい!

なお文字起こしは主要部分を要約して行っています。そのためあくまで文責は守田にあります。
守田がこう聴き取ったという内容であることに留意をしてください。正確さを期したい方はぜひ後藤さんのお話を直にお聞きいただければと思います。

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後藤政志『川内原発工事認可審査について』
2014年11月24日
https://www.youtube.com/watch?v=QcOy_-jcJbM

川内原発は新規制基準に一番最初に通った。現在、工事認可審査を行っている。
主として問題となるのは、そもそもどういう基準で満足するかという根幹だ。ところがそれをすっとばしてしまって工事認可を行っている。

例えば地震動について設定するのが立地段階、最初の話だ。こういう地震動で計算すればいいと決めたらそれを具体的にやってみて、耐震設定上、持つか持たないかというのが工事認可になる。
技術屋の方でいうと、いわゆる設計の計算、強度計算など、そういうものが含まれている。
量的に言うと、立地段階の初期の計画段階の話と後者の工事認可、これに保安規定も入るが、これは膨大な量がある。
それを審査をしているわけだが、その過程をみているとものすごい量のものを短期間にやっている。かなり無理をしながらやっている。

今回、川内原発の件で鹿児島まで行ったのは、現地で川内原発に対してGOをかけるという話があったので、技術的な側面からそれは違うのではないかという意見を表明するためだった。
原子力市民委員会の立場で行って、4名でいって記者会見をした。
私の方からはとくに原発の安全性の根幹の問題を指摘した。

工事認可の内容は耐震が主になっている。従来のものはあまり変わってなくて、地震動を変えたからそこだけを修正するとなっている。あとは過酷事故関係となっている。
私が一番言いたかったのは、入り口で見てびっくりしたことだ。膨大な、全部で万のページになるものだが、そのうちの数千ページをみた。
プラントの配置関係を全部伏せて白抜きになっている。どこに何があるか分からない状態になっている。
耐震強度を計算する時に耐震の解析モデルがあるが、それの高さ方向の値がすべて白抜きになっている。

もっとすごいのは強度計算について、例えばあるものに力がかかって、それで計算をして発生する応力、計算上出てくる力に材料が耐えられるかなどをチェックする。
ところがその途中部分も白抜きになっている。大量にそれがなっている。
ひどいものになると何の計算書か分からない。その中で構造についても伏せているものもある。

以前から工事認可で伏字はあったが、こんなにひどいものは初めてみた。論外だ。はっきりいって読む気がしなくなった。ばからしくて。
その時に特に感じたのは、これを規制委員会はどう考えているのかだ。

規制委員会の立場では、一つはテロ被害などに対してセキュリティの面で伏せるということだろう。
もう一つに企業秘密である場合もある。

しかしどう考えても大半はセキュリティに関係ない。
企業秘密といったときに、例えば水素を処理する装置がある。この性能や構造が企業秘密だからださないとなっている。
しかしこの装置は万が一炉心が溶融するような事故になると水素が大量に出る。それをどうやって処理するのか。
私は処理できるというのが怪しいと思っているが、そういうものの性能を伏せるというのは理解できない。

安全を担保する部分が伏せられているのは、説明を放棄していることだ。しかも説明されても疑わしいところがいっぱいあるのが原発なのだ。
これが福島の事故でもはっきりわかったことだ。

耐震の話にいくと、昔は地震動はせいぜい200ガルとかせいぜい200と数10ガルだった。
それが400とか500ガルとかになった。大きな地震があったので活断層など見直したら大きくなった。
それを今回さらに見直したら620ガルぐらいになった。

これを強度計算で示すが、技術的に難しいのは地震には揺れの違いがある。ゆっくりか早いか。周期がある。
構造物の方は固有周期があり、揺れやすい周期がある。配管が細かくサポートされていると細かく揺れる。広いとゆっくり揺れるが揺れが大きくなる。
地震動が来て、ものの周期と一致すると共振状態になって非常に大きな揺れになる。

強度計算で大事なのはこの共振状態。共振になった時にどうするか。
材料の中には、構造も含めて、減衰除数というのがある。振動を弱める特性で、それをどう位置づけるかによって振動が大きくもなるし小さくもなる。そのデータの作り方の問題がある。

また非常に長周期の地震が来た時に大丈夫か。これは高層ビルなどでも問題になっている。
普通の構造物は1秒かそれ以下の細かい揺れになるが、高層ビルでは5、6秒とか長いものがある。
原発の中でも一部そういうところがある。ここには長周期が関係してくる。

川内原発についての耐震設計について私の提案は、地震動設定を変更したのなら、変更の前後の全データを示すべきだということだ。
地震動を変える前はこういう応力でこうだった。変えたらこうなった。それで許容値を全部並べる。
それでその計算の内容について、過去とやり方を変えたらその根拠を示すこと。当然だが、それを全部分かる形で一覧にして示すべきだ。

膨大な計算書の中を読めというのは無理がある。
耐震上、問題になり議論になるところはきちんと抽出し、見える形にして説明すべきだ。最低限、それぐらいのことをするべきだ。

高浜原発でもパブリックコメントを求めると言っているが今のようなやり方ではまったく意味がない。
むしろあれでは人に説明して分かってもらおうと言う姿勢にまったくなっていない。大変、失礼だ。これでは信頼関係はまったく失われてしまう。

そもそも福島原発事故で電力会社や原子力保安院への信頼は地に落ちた。それではまずいということで規制委員会をつくってやっているはずだ。
それなら私たちに納得いくような説明をするのが最低限必要だ。耐震設定における結果を分かりやすく表明することを最低限やるべきだ。
技術的な話はこういうものが示されて以降の話だ。

終わり