守田です。(20141007 23:30)

明後日10月9日に近江八幡市で集団的自衛権についてお話します。そのために何をどうお話するのか、まとめておきたいと思います。
その際、主催者とのお話の中で集団的自衛権への反対をいかに訴えるのか、いろいろと考えさせらえることがありました。
端的に言って、今、集団的自衛権に反対している方の中には、個別的自衛権は良いけれども、集団的自衛権はおかしいと考えている方もおられます。
典型的には元自衛官の泥さんという方で、彼はヘイトクライムにも身体を張って立ち向かっており、多くの人の共感を集めてもいます。僕もヘイトクライムに立ち向かう泥さんを尊敬しています。

でも僕は一方であくまでも自衛隊そのものが憲法違反なのだから解体すべきだ、解体して災害救助隊に改編すべきだと思っています。そのことをここでも何回か書いてきています。
しかしそれをいきなり主張した場合、個別的自衛権にはそれほど反対ではないけれども集団的自衛権には反対という人を味方につけられないのではないかという声がありました。あるいはせめて集団的自衛権に反対する人を増やしたいので、そこをハイライトして欲しいとも。
確かに「うーん」とうなるところがあります。反対の声はできるだけ大きい方がいいし、そのためにはできるだけたくさんの方と合意できる訴え方をする必要があります。
また僕にそういう問いを投げかけてくれた方は、もともと戦争反対の意識を持っていなかった人にも一生懸命に訴えて日本を戦争の危機から守ろうと懸命に奮闘している方であり、だからその問いは強く胸に響いてくるものがあります。
そこでまず集団的自衛権を行使するとどうなるかをあらためて押さえておきたいと思います。そもそもなぜ日本が集団的自衛権を行使する必要があるのか。本年5月15日、安倍首相は記者会見で次のように説明しました。
「海外で突然発生した紛争から逃げようとする日本人を救助・輸送しているアメリカ船が、日本近海で攻撃を受けた場合でも自衛隊が武力行使えできない。これでは日本人を守れない。だから集団的自衛権が必要だ」と。
しかしそんなこと、実際にあるのか。民主党の辻元清美議員が6月11日に、米国は邦人輸送を想定しておらず、過去に邦人輸送の規定盛り込みを拒否していたことを国会で明らかにしましたが、政府もすんなりこの事実を認めました。
ところが安倍首相は集団的自衛権の行使の閣議決定後の記者会見で、5月に使ったフリップとまったく同じようにしてアメリカ側も日本政府も認めた「そんなことはありえない」という事実を無視し、同じ説明を繰り返した上に「批判を恐れずに行動に移した」と言い放ちました。

これは集団的自衛権に限ったことではなく、安倍首相の「答弁」での常套手段です。そもそもまともに答弁する気がない。初めに大きな嘘を言い、何度批判されても、同じ嘘を繰り返しつき続ける。
このように「大きな嘘を何度も繰り返せば人は信じるようになる」と語ったのはナチスドイツの高官たちです。宣伝相のゲッペルスなどが有名ですが、安倍首相はこれと同じことを平気で行う。それを安倍政権の広報新聞と揶揄されている産経新聞などが平気で書き続けています。
およそこのことだけでも安倍首相の説明がほんとうにひどい出鱈目であり、聴き手への誠意をまったく欠いた不誠実極まりないものであることは明らかですから、ここではこれ以上、首相発言の分析には踏み込みません。
いかに注釈をつけようとも、集団的自衛権とは日本の同盟国が攻撃された場合に、自らへの攻撃と捉えて反撃する「権利」のことで、他人が売られた喧嘩を自ら買うことに他ならないのです。そのためアメリカが行っている戦争に巻き込まれる・・・というより積極的にアメリカの戦争に日本が関与することになります。

この際、一番、重要なのはこの間、アメリカが繰り返してきた戦争はどのようなものかということです。第二次世界大戦における日本攻撃、沖縄戦や広島・長崎への原爆投下、主要都市への空襲は、すべて圧倒的多数の非戦闘員を殺害する無差別殺戮であり、戦争犯罪でした。ドイツに繰り返された大規模空襲も同じです。
これと同じことをアメリカは朝鮮戦争における北朝鮮への空襲で行い、ベトナム戦争における北爆でも行いました。さらに2000年代に入り、アフガニスタン、イラクなどでもこうした無差別殺戮が繰り返されてきました。一度も反省していないのです。
アメリカが行った戦争は他にもたくさんありますが、大事なことはこうした無差別殺戮でたくさんの同胞を殺害されたことに対して、日本政府はただの一度も批判することすらできないで来たということです。まさに自虐的です!それどころか同じようなベトナム空襲のための基地をアメリカに貸し続けた。
これに対して世界の多くの国々がアメリカによる度重なる無差別殺戮に対して批判の声を上げてきました。また民衆レベルでは日本人も含めて世界中で本当にたくさんの人々がアメリカの戦争を批判してきました。最近ではイラク戦争開始の前に世界中で1000万人以上が同じ日にデモを行い、アメリカのイラク侵略を止めようとしました。

しかしアメリカは止まりませんでした。アフガニスタンへの侵攻は、当時のタリバン政権が「オサマビン・ラディン」をかくまっているからという名目だけで行われました。タリバン政権は「彼が犯人だと言う証拠を見せて欲しい」と言っていただけだったにもかかわらず。
イラクに対しては「大量破壊兵器」を隠し持っているという名目で侵略戦争が行われました。しかしイラクはそんなものまったく持っていなかった。にもかかわらず全土を蹂躙してしまいました。その後も戦争目的がまったくの虚構だったことにも反省の一言も語っていません。
さらに重要なのは、もともとアメリカが打倒対象としたオサマビン・ラディンも、イラクのフセイン元大統領も、もともとはアメリカが育て、軍事力を持たせた人物であったということです。
オサマビン・ラディンや「アラブ義勇兵」が大きくなって言ったのは、旧ソ連に対するアフガニスタンでの軍事戦闘の中でのこと、イラクが軍事大国化したのは、イラン革命後のイランとイラクの間の戦争の中でのことでした。

とくに1990年代初頭にソ連邦が崩壊し、米ソ連戦構造が崩れるや、アメリカは軍事力の矛先を中東に向け始めました。そしてフセイン政権を挑発して湾岸戦争に持ち込み、膨大な軍事力でイラク軍への全面攻撃を行いました。
このことがイスラム圏の多くの人々の心を痛く傷つけました。イラクのクウェートへの侵攻という事態に対して、アラブ各国の側に巻き起こった自主解決の機運もまったく無視したからでした。この頃から対ソ戦闘の中で成長した「アラブ義勇兵」などを中心に、アメリカへの攻撃が高まり、2001年に911事件が起こりました。
その後、アメリカはアフガニスタン、イラクへと雪崩討つような攻撃を行ってきたわけですが、その際にも膨大な数の民間人の犠牲を伴いました。イスラムの側からはムスリムの同胞、しかも大量の非戦闘員、お年寄りや女性、子どもたちが殺され続けてきたのです。
さらに国連決議を無視して違法なパレスチナの占領を続けるイスラエルをアメリカが全面的に擁護し、イスラエルによるパレスチナへの度重なる戦争犯罪も容認し続けてきたことがますますイスラム圏の人々の怒りを書き立ててきました。

こうした中でイラクは戦乱の泥沼になってしまいました。アメリカはアフガニスタンでもイラクでも繰り返される抵抗に疲弊し、国内で反戦機運が高まることで、占領軍の撤退を開始し、自らが後押しする政権による統治に期待をかけました。
ところがこれが全然、うまくいかずに中東はどんどん不安定さを増してきました。しかもこうした中でイスラエルはガザを違法・不当に包囲し、戦争犯罪である空襲や軍事侵攻を繰り返してきました。
今日、こうした中でシリアとイラクをまたがる地帯に「イスラム国」なる武装集団が出現し、瞬く間に支配地域を拡大しています。しかも世界各国の若者にイスラム国への参加を訴え、多国籍の一大軍事グループに成長しつつあります。
アメリカはたまらずに空襲を開始しましたが、効果は限定的であると言われており、むしろたくさんの国から義勇兵が集う中で、これらの人々が自国に立ち戻った後で、軍事攻撃に出るのではないかと言う恐れすらが生まれています。

続く