守田です。(20141005 09:00)

大型の台風18号が接近しています。今回もかなりの暴風雨を伴うようです。再び土砂災害の発生の可能性があります。最大限の注意を払い、危険を感じたら早目の避難を行ってください。
気象庁発表の直近の台風情報を掲載しておきます。
平成26年 台風第18号に関する情報 第50号 (位置)
平成26年10月 5日07時45分 気象庁予報部発表
http://www.jma.go.jp/jp/typh/D20141004224107739.html

大型で非常に強い台風第18号は、5日7時には奄美大島の東約180キロの北緯28度35分、東経131度20分にあって、1時間におよそ15キロの速さで北へ進んでいます。
中心の気圧は945ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル、最大瞬間風速は60メートルで中心の北側220キロ以内と南側190キロ以内では風速25メートル以上の暴風となっています。
また、中心の北側600キロ以内と南側440キロ以内では風速15メートル以上の強い風が吹いています。

この台風は5日8時には、奄美大島の東約180キロの北緯28度50分、東経131度20分にあって、1時間におよそ15キロの速さで北へ進んでいるものと推定されます。(引用はここまで)
台風18号は本日5日は比較的ゆっくりと進んで15時に種子島南東約100キロに達し、その後、スピードを急速にあげて6日3時には潮岬南東約70キロに、その後、温帯低気圧に変わり、7日3時には日本の東に抜けて行くと予想されています。
http://typhoon.yahoo.co.jp/weather/jp/typhoon/

台風接近への備えについては本年7月の8号接近の時に書いた以下の記事を参照してください。

明日に向けて(887)台風8号接近中!最大の警戒心をもって対応を!-20140708
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/66f450fea4f4dacffa48f2b73a4e11a8

また新たに気象庁が台風12号接近時に発表した「推奨される対応 台風に備える」を貼り付けておきます。参考にされてください。
推奨される対応 台風に備える
全般台風情報 気象庁 台風12号接近時に発表
http://www.google.org/publicalerts/alert?aid=21148aab5b9c769d&hl=ja&gl=JP&source=web

屋根瓦やトタンを補強する
風で屋根瓦が飛べば、けがでは済まされない事故になることもあり得ます。また、雨漏りの心配がないか、外壁のひび割れはないかなども確認しておきましょう。
さらに、テレビのアンテナや倒れる可能性のある塀、自転車や鉢植えのように飛ばされる恐れのあるものは、ロープで固定したり屋内にしまったりといった対策をとりましょう。

事前に排水設備の点検・掃除をしておく
排水溝のつまりが原因で、道路や庭などに雨水が溜まると、地下室・駐車場などが被害を受けます。
ベランダの排水溝や雨どいが、落ち葉やゴミなどで詰まっていると、2階以上への浸水や天井裏への浸水などが発生することがあります。雨水の排水設備関係の点検・掃除を心がけましょう。

懐中電灯や食料などを用意する
断水や停電となる可能性があります。懐中電灯や情報を収集するためのラジオ、買い物に行けないことも考えて数日分の飲料水や食料を用意しておくといいでしょう。

家財道具を高い場所へ移す
水に濡れると高価な家財道具も台なしです。浸水被害に遭うと困るものは上階など高い場所へ移しましょう。できれば浸水被害に対応する損害保険(火災保険の特約等)にも加入しておくとよいで しょう。

低地の居住者は土のうなどを用意する
低地や川沿いの住居には、浸水をせき止めたり浸水の時間を遅らせたりすることができる土のうの活用も有効です。
土のうがないときは、ゴミ袋に水を入れて水のうをつくり、コンクリートブロックで固定するとか、水の入ったペットボトルをダンボールに詰め、簡易の堤防にするといった代替方法もあります。

地下にいる場合は注意する
地下鉄や地下街、地下駐車場などは浸水の恐れがあるので注意しましょう。 エレベータを使わない地下にある電気室や機械室などが浸水するとエレベータが停止する可能性があるため、エレベータの使用は控えましょう。

通過中は外へ出ない
台風の際は、建物内で通り過ぎるのを待つのが基本です。通過しているときは、外へ出ないようにし、河川や用水路の見回りは危険ですのでやめましょう。また、屋根の補修は台風が近づく前に済ませておきましょう。

がけ崩れに注意する
勾配が30度以上、高さが5m以上の急傾斜地は、一般的にがけ崩れの危険性が高いとされています。「急傾斜地崩壊危険箇所」と呼ばれ、自治体のホームページなどで確認できます。
がけにひびが入ったり、小石が落ちてきたり水が噴き出したりしたら、がけ崩れの危険が高まっています。丈夫な建物の上階に避難しましょう。

浸水の被害を想定する
高潮、増水の恐れがある地区では気象情報や行政からの情報に特に注意を払い、すぐ避難できるように準備しておきましょう。
避難準備情報が出された場合は、速やかに要援護者の避難を行政から避難準備情報が出たら行動能力の低い人々を優先に、自動車等を使って速やかに安全なところに移送しましょう。高齢者や障害者、乳幼児らを抱えた家族等が対象です。
高台などの避難所 、親類縁者の家、福祉施設等を利用してください。

行政から避難勧告が出た場合は、複数で行動する
行政から避難勧告が出たら戸締まりをして、近所の人に声をかけ、一緒に徒歩で避難しましょう。運動靴やトレッキングシューズなら、冠水した道路も比較的歩きやすいでしょう。(引用はここまで)
さて、これらを押さえた上で、さらにこの夏から秋にかけての災害を振り返っておきたいと思います。
まず注目すべきは7月上旬の台風8号接近時に、長野県南木曽町で、台風そのものはまだかなり遠くにあるのに、発生した前線に雨雲が流れ込んで豪雨が発生し、読書地区の梨子沢に土石流が起こって1名が亡くなったことです。以下に詳細な分析があります。

2014年7月台風8号による南木曽土石流災害
(独)防災科学技術研究所 観測・予測研究領域 水・土砂防災研究ユニット 20140724
http://mizu.bosai.go.jp/wiki/wiki.cgi?page=2014%C7%AF7%B7%EE%C2%E6%C9%F78%B9%E6%A4%CB%A4%E8%A4%EB%C6%EE%CC%DA%C1%BE%C5%DA%C0%D0%CE%AE%BA%D2%B3%B2
特徴的なことは、わずか2時間の豪雨で土石流が発生していることです。原因をさぐるとこの地域が花崗岩質で覆われていて、もともと地盤が弱かったことがあげられます。そのため過去にも災害が起こっています。
ここからすぐにも導き出せる結論は、同様の花崗岩質の斜面ではわずかな時間の豪雨で土石流が発生しうるということです。
斜面に近いところにお住いのある方は、そのあたり一体の地質が何であるかを把握し、かつまた過去に災害が発生していないかどうかを調べて下さい。これらに該当する場合は、ぜひ台風の間だけでも万が一の避難を行うことをお勧めします。

この際、注意を促したいのは地域の行政が出しているハザードマップの使い方です。地盤が弱いところ、土砂災害の発生しやすいところの把握には便利ですが、あくまでも人間の側の想定ですので、外れることもあります。
そのためハザードマップの危険地帯に記載されてないからと安心するのは危険です。危険地域外にお住まいが記載されていても、花崗岩質で過去に災害が発生している地域は念のための避難を考えた方が良いです。

この夏はもっとたくさんの方が犠牲になった激烈な土砂災害も発生しました。8月20日に発生した広島土砂災害です。
20日未明から早朝にかけて広島市内で急速に雨雲が発達。被害の発生した地区の一つの安佐(あさ)北区の降水量は、午前4時までの3時間に史上最多の217・5ミリとなり、平年の8月1カ月分を上回る雨量となりました。(広島地方気象台)被害は3時頃にはすでに発生しだしています。
この大災害の発生を受けて、同様の危険性が全国にあることを訴えた朝日新聞の記事をご紹介します。現場の空撮動画も見れます。
土砂災害、全国で発生の危険 もろい地質と豪雨が引き金
朝日新聞 2014年8月21日02時33分 佐藤建仁、野中良祐 合田禄、朴琴順
http://www.asahi.com/articles/ASG8N5HK4G8NPLBJ009.html
広島土砂災害の場合も、南木曽町と同じく花崗岩が風化して砂のような地質となった「まさ土」の地域で激甚な被害が発生しました。降り始めからわずか数時間で土石流が発生したことも似ています。
これらに対して朝日新聞の記事の中で京都大防災研究所の釜井俊孝教授(応用地質学)が次のように語ったことが記されています。
「高度成長期以前には今回のような災害は少なく、都市化がもたらしたと言える。土地の性質をよく理解した上で住まいを決めることが重要だろう」。

端的に言って、かつては家が建っていないところが開発されて居住地になってしまっているということです。つまり過去を遡れば危険地帯であって、人が住んでいないところにたくさん家が建ってしまった。
だからこそ過去を調べていけば、実は似たような災害が発生していた記録が出てくるのです。現代の都市化がモラルを欠いて進められてきた現実がここに横たわっています。
大きくは私たちの社会の建設のあり方の歪みを変えていかなくてはなりませんが、さしあたっては危険地帯での対処が優先です。というよりも危険地帯の把握と、その地域・地点での念のための早目の避難の励行で凌いでいくことが必要です。

記事の中には以下のようにも書かれています。
豪雨に弱い、もろい地質は、広島市に限った話ではない。「まさ土」は神戸市や岡山県などにも多い。雨の条件さえそろえば繰り返し崩壊するという。
「花崗岩のほかに、火山に関連する地質ももろい。引き続き各所で警戒する必要がある」と下川悦郎・鹿児島大特任教授(砂防工学)は警鐘を鳴らす。火山由来の「シラス」や「ボラ」などと呼ばれる地質も災害が発生しやすい。
これらを含む「特殊土壌地帯」は全国で約5万8千平方キロで、国土の約15・3%を占める。鹿児島、宮崎、高知、愛媛、島根の各県の全域のほか、静岡や兵庫、広島などの各県の一部に広がっている。(引用はここまで)
なおこの「特殊土壌地帯」を示す農林水産省のページも示しておきます。

特殊土壌地帯対策
http://www.maff.go.jp/j/nousin/tiiki/tokudo/

やっかいだなと思うのはこの中に長野県南木曾町は入っていないことです。ということはここに示された地域以外にも危険なところはたくさんあるはずだということです。
やはりそれぞれの地域で地質を確認するとともに、過去の災害について確認したください。

以上、この夏にあった土砂災害のうち、特徴的な二つの事例を紹介しました。それぞれの地域での安全確保にお役立ていただければ幸いです。
広島土砂災害に続いた御嶽山の噴火については別途論じます。
ともあれ今は台風18号に最大限の注意でもって向かい合い、それぞれの安全をお守りください。