守田です。(20130920 06:30)

昨日の続きを書きます。

安保条約があったから日本が平和を享受できたというのは間違いだ!

「安保条約があったから日本はが平和を享受できた」という論に応えて欲しいとのことですが、その場合の平和とは何でしょうね。僕は人殺しが少ない!という意味での平和は享受できていると思いますが、それはアメリカの核の傘のせいではないです。
なぜかと言えば、傘を持っているご本人が、ものすごい殺人社会の中にいるのですから。その意味でこの平和を守ってきたのは、核の傘の下に置かれようとも、軍隊の戦闘を認めてこなかった憲法9条とそれを守ってきた人々の営々たる努力だと僕は思います。

一方で、「核の傘のもとでの平和」という場合は、産業の発達のことを指す場合が多いと思うのですが、この点では血塗られていて恥ずかしい面も多いです。なぜって日本が戦後復興に向かったのは朝鮮戦争の特需があったからでした。かつて日本が植民地化して踏みしだき、戦後不幸にも分断支配を受けた朝鮮半島で戦争が起こったからこそ、日本は景気が回復し、特需で伸び上っていったのです。
さらに高度経済成長は、ベトナム戦争特需が大きな支えになりました。アメリカが戦争物資を主に日本で調達したがゆえに、私たちの国は大儲けしたわけです。団塊の世代の方たちによる学生反乱は、このことへの抗議を中心にしていましたが、それでも沖縄から連日、ベトナムに爆撃機が飛び立って、信じられないほどの爆撃が行われました。ベトナムは今もその後遺症で苦しみ続けています。
非常に悲しいのは、この朝鮮戦争の空襲も、ベトナム北爆も、同じ司令官が指揮していたことです。名前はカーチス・ルメイというのですが、実はこの人物は東京大空襲の作戦立案者であり、その後の都市空襲から原爆投下の総責任者でした。ルメイは、日本空襲で味をしめたことを朝鮮半島で、ベトナムで繰り返したのです。しかも今度は日本を出撃拠点にしてです。
そのルメイに日本は最高の勲章を送っています。航空自衛隊の創設に貢献したからだそうです。僕はこうときにこそ使う言葉が「国辱」なのだと思っています。

こうしたアメリカへの協力のために、第二次世界大戦におけるアメリカの戦争犯罪は一つも訴求されず、むしろ日本政府は被害隠しに奔走しました。その最たるものが原爆被害のものすごい過小評価でした。そのために原爆の熱線と放射線を浴びたヒバクシャが悶絶の苦しみを経なければなりませんでした。
しかもアメリカは、ビキニ環礁核実験以来の世界の核兵器反対の声を抑え込む秘策として日本に原子力発電所を持ち込みました。そのとき、広島・長崎での被害隠しに使われた非常に緩い放射線評価が持ち込まれ、それが今、東北・関東の人々を苦しめる元凶になっています。
こう考えるならば、確かに私たちは、人殺しがうようよいるような状態から解放されてきましたが、アメリカの属国として戦争に協力させられ、手を汚してきた暗い過去を持っています。

さらにアメリカへの戦争協力の下で、かつての戦争のときの人権侵害がなんら正されずに社会に構造的に残ってしまい、そのことがかつては「社畜」と言われるまでに働かされた日本の人々の姿を作りだし、今は正規雇用が激減してまともに働けない若者が激増するような社会構造が生み出される根拠になっています。
日本社会に特有の構造的暴力を象徴する数字があります。さきほど日本はOECDの中で、人に殺される可能性が一番低い国だといいましたが、実は自殺率は韓国についで2位と非常に高いのです。背景にあるのは人権が弱く、構造的暴力にさらされている人々を守る力が社会的に弱いことです。
その意味で、アメリカの暴力にくみしだかれてきた私たちの国は、本当の意味での「平和」にはまだまだ遠いところにいると思います。沖縄に基地の矛盾が押し付けられ続けていることを考えても、とても平和とは言えません。真の平和を創造する努力が問われています。

朝鮮半島は今、戦争の中の休戦状態であるころが知られていない。

昨日のやり取りで気になったのは、北朝鮮ないし、朝鮮半島情勢をいかに捉えるかです。
というのは、少なくとも建前的、つまり原則的には、北朝鮮はアメリカと交戦状態にあります。交戦状態の中の休戦状態なのです。正確にはアメリカを中心とする国連軍と北朝鮮が交戦中なのですが、その北朝鮮が国連に参加しているというネジレ状態です。
その中で北朝鮮が望んでいるのは和平条約を結び、戦争状態を終結させることです。ところがアメリカは、戦争状態がなくなると在韓、在日米軍の駐留根拠が失われるので、現状維持を望んでいます。対して北朝鮮は、核カードなどを使い、アメリカを交渉に引っ張り出そうとし続けているのです。

この大前提がほとんどの人に理解されていません。まずはここに大きな問題があります。もちろん報道が悪いからでもあります。その最たるものは「六か国協議」という言葉の使い方についてです。
というのは、これは戦争当事者を含み、互いに国家として承認しあってないものたちを含む会談です。だから英語では、必ずsix partyによる会談とかかれるのです。六つの国家による対話などとは書かれないのです。
いや英語だけでなく、試しに外務省のサイトをご覧になってください。そこにも「六か国協議」などとは書かれていません。「六者会合」と書かれています。外務省のサイトは海外の日本語のできる人が読むことが多いのため、「六か国協議」などとは書けないのです。

六者会合関連協議(外務省サイトより)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/index.html

実際、北朝鮮の地図上の領土は朝鮮半島全体で、韓国も同じなのです。互いに相手はないもの、ないし北部、南部を不法占拠しているグループという立場なのです。
ところが「六か国」と言った途端に、この軍事的緊張関係が見えなくなってしまいます。事実、大多数の日本人はこの大前提を理解していません。日本が北朝鮮と正式な国交を結んでいないこともよく理解されていない。意図的に伏せられてもいる歴史的関係性が理解できていないのです。
しかしこの大前提をしっかりと見据えるならば、日本の平和のために一番必要なのはアメリカと北朝鮮との交戦状態の解消=平和条約の締結であることは明らかなのです。その場合、南北朝鮮が互いを国家としてクロス承認することが必要で、そこにも困難があるでしょうが、今の流れではけして不可能ではないでしょう。
日本は朝鮮半島に、植民地化や朝鮮戦争への介在で多大な迷惑をかけてきたので、半島和平の促進をこそ、積極的にお手伝いするべきです。もちろんそれが日本の平和を大きく支えることになります。

ちなみに過去に戦われた「朝鮮戦争」という言葉だって、一般化などしてないことを知って欲しいと思います。あの戦争、北にとっては祖国解放戦争、南にとっては韓国戦争、中国にとっては抗米援朝戦争です。アメリカやイギリスはKorean Warと呼称しました。
このように、何気なく思える言葉に、前提的な認識や価値観が埋め込まれているのであり、それを歴史的に振り返って捉えることが大切なのです。歴史を丁寧に振り返れば、今ある矛盾の根拠もたいていは見えてきます。
反対に言えば、だからこそ私たちの国では、現代史をきちんと教えないのです。そこにこそ日本的マインドコントロールの秘訣があると言ってもいいぐらいです。だからこそ今、歴史の捉え返しが重要です。

平和を積極的に創造しよう!

以上が、「8のわ」に投稿したものをまとめたものですが、最後に、平和の積極的な創造という点を提案したいと思います。
平和は守るべきものですが、しかしただ軍隊が戦争をしていなければ平和だとも言えないことを、これまで論じてきました。社会に構造的な暴力がはびこる限り、真の平和な社会とは言えないからです。
その点で私たちの国は歴史的な反省に立った作り変えがまだまだ必要です。そのことで何よりも私たちの人権を、もっともっと強くしていかなければなりません。

僕はそのことをこそ、福島原発事故との向き合いの中で、果たしていく必要があるし、果たしていくのが、これだけ深刻に世界を汚染してしまった私たちの国の民が、世界のためになしていくべきことだと思うのです。
なかんずく、人類を本当に苦しめてきている核の時代を終わらせる真の可能性を、福島原発事故が起こった私たちの国から作り出していく必要があります。そのためには、世界中で生まれたヒバクシャのことを思い、その歴史を問い直し、被曝に終止符を打つことを目指していく必要があります。
歴史が進んで、人類が今の時代を振り返った時、「フクシマ」こそが転換点だったと言いうるような何か、核の時代を終わらせる営為を時代に刻み込むことを目指しましょう。そこにこそ今の私たちの平和の積極的創造があると思います。その手始めの一つとして、米軍基地に全国どこでもノーを突きつけていきましょう!

終わり

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再度、署名のお願いをば

京丹後(京都)米軍レーダー基地計画を考えなおしてほしい!
http://goo.gl/LL5JSg