守田です。(20130828 23:30)

明日に向けて(729)で、福島のこどもたちからすごい勢いで甲状腺がんが見つかっていることを論じましたが、記事の中で、国際水準との比較数値を間違えてしまいました。
現在の発症は19万3千人中約40人ほど。国際水準は100万人に1人とされているので約210倍、100万人に2人として約105倍になるのですが、僕の記事では誤って2100倍から1050倍と書いてしまいました。読んでくださったからの指摘で気が付きました。
センシティブな内容での数値を10倍も間違えてしまい、申し訳ありませんでした。慎んでお詫び申し上げます。なお当該の記事には訂正日時を明記したうえで、すでに修正を施してあります。

さてこれを機会に再度、福島県の発表の際に提出された資料をじっくりと読み込んでみました。8月20日に出されたものです。

県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況についてhttps://selectra.jp/sites/selectra.jp/files/pdf/250820siryou2.pdf

これをよく読み込んでみると、実は19万3千人中の約40人という発表の仕方にも大きな問題があることが見えてきました。
なお実際の発表は確定18人、疑い25人、疑われたけど良性だったのが1人というものです。疑いは医学的に90%の確率と言われているので、もともと疑われていた26人に0.9をかけると23.4という数字が出てきます。これと18を足すと41.4人になります。話を見えやすくするためここでは約40人としてあります。

さて何が問題なのかを明らかにするために、まず甲状腺検査の進め方の概略を見ていきます。初めに行われるのはエコー診断で一次検査と呼ばれます。
この結果が4つに分類されます。
A判定 A1 結節やのう胞を認めなかったもの
A判定 A2 5.0ミリ以下の結節や20.0ミリ以下ののう胞を認めたもの。
B判定 5.1ミリ以上の結節や20.1ミリ以上ののう胞を認めたもの。
C判定 甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要するもの。

判定への対処が以下のように説明されています。

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A判定は次回(平成26年度以降)の検査まで経過観察。
B、C判定は二次検査を実施
A2の判定内容であっても、甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した場合、B判定としている。

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ここから非常に重要なポイントが浮かび上がります。何かと言えば、A判定といえども現時点では甲状腺がん発症の可能性を否定できたわけではないということです。
実際、チェルノブイリでも4、5年目から発症数が急上昇しました。そのことでもって政府は、今、見つかっている甲状腺がんは福島由来のものとは言えないと主張しています。僕はそうではなく、現時点でも原発事故の影響が出ていると考えますが、しかし今後、発症が本格化しうる可能性は確かに高いと思います。
そうであるがゆえに、つまり福島原発の被曝では、まだがんが形成されておらず、この先、発症する例も十分にあることになります。その点で、A判定の子どもたちを経過観察をすることは正しい。しかも、がんはできるだけ小さいうちに発見することが望ましいのですから、可能な限りの頻度で行うことが求められます。
ともあれ、この点が19万3千人中約40人とは言えないことの一つ目の根拠です。少なくとも、「現在約40人が見つかっている」と言うべきで、今、見つかっていない子どもたちからも、残念ながら、将来、がんが発症する可能性を否定できないのです。

次に二次検査とは何かを見ていきます。これは次のように説明されています。

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一次検査により、結節等が認められた場合は、福島県立医科大学において二次検査(詳細な超音波検査、採血、採尿、必要に応じて細胞検診)を実施している。

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資料の4ページ目にこの二次検査の実施状況の一覧表が掲載されているのですが、そこを見ると平成23年度から25年度の調査で二次検査対象者となったのは1280人であるのに、二次検査終了者は625人にしかなっていないもとが分かります。残り655人がまだ検査が終了していないのです。
ということは現在の約40人が確定という検査結果も、この625人の受診結果に過ぎないことが分かります。すでに検査が終わった625人とまだ終了していない655人は住んでいる地域が違うので単純比較はしにくいのですが、それでも仮に同じ比率であると考えた場合、約42人がさらに確定になる可能性があります。
そうするとここでの確定数は約82人になることになります。19万3千人中約82人が確定の可能性ありということです。福島の子どもの総数は約37万人ですから、同じ比率で確定者が出てくるとなんと約157人にもなることになります。もちろんその場合も、がんと診断されなかった子どもたちにも発病の可能性が残り続けます。
しかも憂慮されるのは、ヨウ素が相当量流れたと思われる、いわき市の子どもたちが今回の調査にはほとんど入ってないことです。(実際には一地区の341人のみが検査対象になり、3人が二次検査対象に。二次検査は未終了)。このため同じ比率が適用できるとは限りません。

さてここでまた国際水準との比較を論じたいと思います。国際水準は100万人に1人ですから、19万3千人中約82人という数はその424倍にもなります。
しかもこれは現時点での確定数であり、繰り返し述べてきたように、現在、がんが発見されていない子どもからも見つかる可能性があるので、424倍以上という必要があるでしょう。ちなみに100万人に2人とした場合は、半分ですから212倍以上です。
ともあれここでは、19万3千に中、確定18人、疑い25人、良性1人という発表の仕方が、誠実なものとは言えないという点を指摘しておきたいと思います。まだ二次検査が半分しかすんでいないことを明示すべきなのです。
資料にはこのことが並べられているので、ウソの発表とは言えないわけですが、これでは意図的にミスリーディングを誘うようなものです。

こうした現実に対してどうするか。すでに(730)で述べたように、僕は免疫力を上げて、がんを抑え込んでいくべく、みんなで努力することが大切だと思います。
もちろん食事療法は当事者や近親者が担うものですが、けして個人任せにせずに社会的ムーブメントを作る必要があります。
同時に、これまでも各地で行っている保養キャンプの実施、あるいは可能な限りの避難の促進も重要です。
放射性ヨウ素の半減期は短いですからすでに被曝は終わってしまっています。だとするならば、被曝した体に可能な限り、ストレスの追加を防ぎ、免疫力を上げることで、がんを抑え込んでいくことが大事なのです。

そのために良いものを食べる必要がある。いいところにいって、いい空気を吸う必要がある。そして何よりもいい人たちに囲まれて、自分は大切な存在なんだ、大切にされているんだという思いで胸を膨らませてあげる必要がある。
現時点ではA判定であろうと今後、がんが発症する可能性を否定しきれないのであれば、発症数を可能な限り抑え込む努力を私たちの手で積み上げようではありませんか。
そのために決意を作るために、腹を決めるために、現時点で国際水準の200倍から400倍とも推定しうる発症数を、ありのままに見据えることが必要だと思います。

この点を踏まえて、甲状腺問題のウオッチを継続します。