守田です。(20130815 09:00)

昨日の続きです!

なお、今回は最後に放射能からの身の守り方をお話ししましたが、もっとも有効な避難については触れていません。聴き手が自分で避難するか否か、極めて決めにくい小学生であることを考えてのことです。また話の主題が、「放射能を怖がるのはかっこ悪い」という言説を打破することにあったからです。そのため小学生でも確実にできる放射線防護とは何かを考えてお話ししました。

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最初に話したように、原発が爆発してたくさんの放射能が出ました。それは日本の中にたくさん降ったのだけど、実はその前からたくさん降っていました。ではいつから降っていたのかというと、アメリカは1950年代に太平洋でたくさんの核実験をしました。
水爆の実験が行われました。水爆は原爆とは威力がけた違いです。広島原爆の1000倍ぐらいの威力のあるような水素爆弾を何度も実験で爆発させました。そのころに地球上にものすごい放射能が降ってしまいました。
僕は1959年の生まれですが、核実験の放射能が一番たくさんあるころでした。だから実は僕の世代の人はそのころの放射能を浴びているのです。だから放射能を浴びる、浴びないで言えば、もう日本の中で浴びてない人はいません。世界の中でも浴びてない人はいません。それくらい核実験はひどかったのです。
そんなことまでして放射能をまき散らしたアメリカにとっても、これに対抗したソ連にとっても、同じく核兵器を作ったイギリスやフランス、中国にとっても、放射能は「そんなに害はない」ものでなければならなかったのです。
それで「放射能を怖がるのはかっこ悪い」と言い続ける必要があったのです。

それが福島の原発事故以降も、「放射能は怖くない」「放射能を怖がるのはかっこ悪い」と言われる理由です。実際には放射能は危ないです。できるだけ浴びるのを避けた方がいい。
でもどれぐらい浴びるとどうなるのかということも、実はあまりよくわかっていません。アメリカが研究させてくれなかったからです。データを全部持ったまま、死蔵させてきたのです。
とくに人間の場合、回復能力を持っています。細胞が何かによって壊されて、自分で回復していく力を動物の中で一番持っているのは実は霊長類です。サルやチンパンジー、ゴリラや人間のことだね。だから人間はもともと免疫力が高くて、自分の体を治す力が強い生き物なのです。
だから、放射線を浴びてしまうと、もうどうしようもないのかというとそんなことはありません。

たとえばショウジョウバエというハエは、放射線を浴びてしまうと、元には戻れません。放射線で壊されたままのものが遺伝していきます。しかし人間の場合は治す力も持っているのです。だから免疫力を上げていく必要がある。
そのことを僕は日本中の人が考えるときにきたと思っています。福島だけではないんだよ。実は日本中にもう放射能は降っていたのだね。チェルノブイリ事故でも降りました。スリーマイル島事故でも降りました。でもその前に核実験でたくさん降りました。
だから実はこれまで世界の中で一番、被ばくしてきたのはアメリカ人や旧ソ連の人たちでした。なぜかというとアメリカの中には核兵器工場がたくさんあります。実はしょっちゅう事故を起こしてきたのだけれど、軍事秘密なので、事故を起こしてもすぐには何も教えてくれない。ひどいところは10年間、秘密になっていました。
そこからプルトニウムという一番、怖くてやっかいなものがたくさん漏れ出してしまって、被ばくした人、亡くなった人がたくさんいます。

実は僕の親友で、昨年亡くなった安藤栄里子さんという女性がいました。その人は40歳を越えて亡くなったのですけれど、高校生のときにアメリカに留学したのですね。そこがアメリカの事故を起こした軍事工場の風下にあたっていました。この工場からプルトニウムが漏れたので、吸ってしまった可能性が高いのですね。
それで日本に帰ってきて、だいぶん経ってから、難しい言葉だけれど「多発性骨髄腫」という血液のがんになってしまいました。それで去年、亡くなってしまったのですけれど、多発性骨髄腫はいろいろな症状が「多発」する病気です。
彼女の場合は、最後は肝臓にがんができたのだけれど、プルトニウムというのは実は肝臓に集まりやすい物質なのです。だからなかなか証明することは難しいのだけれど、核兵器工場の風下に住んでしまったので、それで被ばくした可能性が高いのですよ。
なぜ高いと言えるとかというと、彼女のホストファミリーも、家族みんなが、がんになっているからです。

アメリカなどでもそういうことがありました。それで世界の中で、放射能の害をもっときちんと調べて、明らかにしていこうという声がどんどん高まっています。そういう人たちは福島原発事故で被害を受けた私たちを応援してくれています。
今日も、福島のCRMSという測定所に関わっている方も来られていると聞いていますが、CRMSもフランスの人たちがすごく協力してくれました。フランスはチェルノブイリ事故があったから、放射能がもたらす苦しみをよく知っているのです。それで最初に測定器などをカンパしてくれたそうです。
放射能の問題で苦しんでいるのは広島・長崎だけではないのです。たくさんのところで人々が苦しんでいます。日本は唯一の被ばく国と言っているけれど、間違いです。一番最初に原爆の関連で被ばくしたのは、ネバタ砂漠からウランを堀った人たちです。ネイティブ・アメリカン、あるいは「インデアン」の人たちが多い。
その次は、アメリカは広島・長崎に先立って、ニューメキシコというところで初めての核実験をしました。メキシコとの国境の近くです。だからその周辺の人が被ばくしてしまいました。その後は太平洋の島々でもたくさんやりました。だからヒバクシャは世界中にいます。

例えば、子どもたちは知らないだろうけれど、アメリカの古い映画俳優でジョン・ウエインという人がいました。カウボーイの映画などにたくさん出ていました。1950年代、60年代によく映画を撮ったのだけれど、その撮影場所の多くがネバタ砂漠だったのです。
そこで撮影した映画クルーの半分以上ががんで亡くなっています。西部劇で、砂の中を馬や馬車がパカパカパカっと走っていくかっこいいシーンがあるでしょう。そのときに砂をワーッとかぶりながら鞭をバシッとかやっていますが、あれは実はみんな被ばくシーンだったのです。

もう一度、今までの話をまとめます。放射能の問題というのは、広島・長崎原爆から始まっています。「放射能は怖くない」とか、「放射能は身体にたいして害はない」とか言い出したのはアメリカ軍です。一番、放射能を撒いた人たちです。
戦争犯罪である原爆の使用を行ったアメリカ軍が、「放射能は怖くない」と言い続けてきたのですから、やっぱり、それに騙されてはいけないのです。そのために被ばくの害から体を守ることを、みなさん、ぜひ考えてください。

では放射能の害から身を守るために、みなさんはどうしたらいいのか、一番のポイントを言います。放射能はさっきも言ったように、線で飛んでくる放射線よりも、放射線を出すものが飛んでくる方が怖いです。これを体の中に入れないことが大事です。
みなさんが確実にできる、効果があることを言うと、単純ですけれども、手洗いとうがいです。それからマスク。夏はね、マスクはしんどいけどね、風の強いとき、砂が舞っているようなときは夏でもマスクをした方がいいです。
あとはとにかく手洗い、うがいです。これは放射能だけではない。あらゆる汚染物質、インフルエンザウイルスなどもそうですが、そういうものを身体の中で一番運ぶのは手です。手はあちこちを触れるからです。手にいろいろなばい菌や、ウイルスや、放射能がつきます。だから手を洗うのが大事です。
家の中でも、汚染からきれいにしようと思ったら、手が触るところ、ドアノブやスイッチなどをこまめに拭くといいです。だから外から帰ったらまずは手洗い、うがいをすることです。

僕はこのことを誰に習ったのかというと、お医者さんに習いました。お医者さんたちは、放射能だけではなくて、たくさんの患者さんが来ますから、どのような病気に出会うかわかりません。お医者さんたちは一番、感染しやすいところにいるのです。
でもお医者さんたちはそんなに簡単に感染しません。なぜかというと繰り返し手洗いをするからだそうです。一日に20回以上も洗うと言っていました。もちろんマスクもしていますが、手洗いはとても重要ですよと教えてくれました。
今の日本の状況では、東北でも関東でも、放射能がずっと動いているし、関西や西日本は、中国から飛んでくる黄砂の影響がすごい。黄砂もすごく体に悪いです。それに中国や旧ソ連が核実験をした方向から飛んでくるから、その放射能の危険についても心配されています。
だからそういうものを除去するためには、マスク、手洗い、うがいが大事です。これは実行できるでしょう。毎日、行ってください。効果があります。

大人の方たちは、インフルエンザ対策、花粉症対策が、そのまま放射能対策に使えます。ネットなどで引けばいろいろと対策が書いてありますから、それを参考にして、できるだけ放射能が体の中に入らないようにしてください。
放射能の話はこれぐらいにしたいと思います!

終わり