守田です。(20130717 21:30)

7月12日より広島県に旅たち、尾道市、三次市でお話させていただきました。どちらも会場いっぱいに人が来て下さり、とても良い時間を過ごせました。
その後、14日、15日の日程で山口県の上関から祝島を訪れてきました。とても濃密で素晴らしい時間を過ごすことができました!
ぜひその感想を書きたいと思うのですが、今日はその前に、原発新基準をめぐって書いた記事の訂正を行わなければなりません。

というのは「明日に向けて」(698)~(701)で、元東芝の格納容器設計者の後藤政志さんの新基準をめぐる解説をノートテークし、これを僕なりの言葉で(705)(706)にまとめました。
しかしその中で誤った記述があり、後藤さんご本人が丁寧な指摘を書送ってきてくださいました。また必要と思われる点の追記もしてくださいました。
実は指摘をくださったのは7月12日で、本来ならばすぐにも訂正を出さねばならないところでしたが、旅の途中でどうしても時間が取れませんでした。ここにみなさまに間違いの訂正と二重にお詫びを申し上げます。

問題の点は、(706)に「まとめ」として列挙した九つの内容のうちの九番目です。ここで僕は以下のようにまとめています。
「第九に、しかも加圧水型格納容器は、より高い圧力に耐えるために鉄鋼を厚くしてあり、その分、沸騰水型より脆弱破壊の危険性が高いことです。このように加圧水型特有の危険性が無視されています。」

間違いは冒頭の「加圧水型格納容器は」というところです。ここは正しくは「圧力容器」です。圧力容器は核分裂が行われている炉の核心部分。格納容器はこの圧力容器を包んでいて、何かあった場合に放射能を閉じ込める容器です。
加圧水型の場合、圧力容器の内部を循環する冷却水に高い圧力をかけ、沸点を上げて蒸気化しないようしているので、圧力容器の鉄鋼が厚くなっているのです。ところがここには核分裂で生じる中性子もたくさんあたり、金属の劣化が進みやすい。
やがていっぺんに崩壊してしまうことを「脆性破壊」と言います。これも僕は「脆弱破壊」と書いてしまいましたが、ともあれこれが起こる可能性が沸騰水型の圧力容器より高いのが加圧水型圧力容器の特有の危険性なのです。

この点を後藤さんは次のように補足を加えてまとめ直してくださいました。
「第九に、しかも加圧水型圧力容器(格納容器ではない)は、より高い圧力に耐えるために鉄鋼板を厚くしてあり、炉心からの距離も近く中性子により脆くなるため、沸騰水型より脆性破壊(鋼板が低温で割れてしまう非常に危険な破壊。古いプラントで配管破断などの事故が起きて、緊急炉心冷却系(ECCSという)が働き冷たい水が原子炉内に大量に入ると起こる)の危険性が高いことです。
また、原子炉圧力容器の上蓋に制御棒を入れる穴が全面にあり、欠陥が残り安い。最近、ヨーロッパ(ベルギー)で加圧水型圧力容器の上蓋に大量の亀裂が発見されました。」・・・端的なご指摘だと思います。

さらに十番目として次のことも指摘してくださいました。
「第十に、加圧水型には、蒸気発生器という圧力容器より大きな大型の容器の中に、数千本の細い配管があり、よく詰まってしまいます。
つまっても少しなら構わないということで、止栓をしていますが、プラントが古くなると多くの配管が機能しなくなっているのです。このように加圧水型特有の危険性が無視されています。」

以上の点を踏まえて、再度、原発新基準のまとめを箇条書きにしておきます。何かのご参考にされる場合はこちらをお使いください。なおすでにネットにアップされている(706)の内容についても、このまま転送などされては申し訳ないので、訂正・追記を記して修正しておきます。

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原発新基準の十の誤り(20130717修正・追記版)

新基準のあやまったところは、第一に過酷事故を前提としていることです。過酷事故など起こすことのない原発を求めるべきで、それができないのであれば、原発からの撤退こそ、当然にも帰結せねばならないことを無視していることです。

第二に、安全思想を大きく逸脱していることです。安全装置が故障のときに必然的にプラントの停止を招くように設計されておらず、何らかの装置が稼動しないと危機を脱しえない構造になっている。安全性を担保する事故対策になっていないということです。

第三に、格納容器を放射能を位置づける最後の砦とし、機密性を守るものとしながら、内部が加熱すると外部から水を導入せざるをえず、もともと機密性が確保できない構造になっている点です。

第四に、内部の圧力が上がった場合に、放射能を閉じ込めるための容器を守るために、放射能を放出するベントというまったく矛盾した「安全装置」をかかえていることです。

第五に、そのベントも自然に作動するのではなく、バルブの開閉を行わなければならず、この装置が故障して働かない可能性を持っていることです。

第六に、放射能を外に出すために、フィルタをつけるとしていますが、出力が高ければフィルターは抜けてしまう可能性があり、放射能放出の低減も保障されないことです。

第七に、事故を確率論的に考え、それが非常に小さければ事故は起こりえないと考えて良いとしてきた発想を継承していることです。こうした考えの顕著な現れとして、加圧水型格納容器のベント設置に5年も猶予を与えてしまっています。

第八に、その加圧水型格納容器が、窒素封入がしてある沸騰水型格納容器よりも、水素対策に危険性が高いことを無視していることです。

第九に、しかも加圧水型圧力容器(格納容器ではない)は、より高い圧力に耐えるために鉄鋼板を厚くしてあり、炉心からの距離も近く中性子により脆くなるため、沸騰水型より脆性破壊(鋼板が低温で割れてしまう非常に危険な破壊。古いプラントで配管破断などの事故が起きて、緊急炉心冷却系(ECCSという)が働き冷たい水が原子炉内に大量に入ると起こる)の危険性が高いことです。
また、原子炉圧力容器の上蓋に制御棒を入れる穴が全面にあり、欠陥が残り安い。最近、ヨーロッパ(ベルギー)で加圧水型圧力容器の上蓋に大量の亀裂が発見されました。

第十に、加圧水型には、蒸気発生器という圧力容器より大きな大型の容器の中に、数千本の細い配管があり、よく詰まってしまいます。つまっても少しなら構わないということで、止栓をしていますが、プラントが古くなると多くの配管が機能しなくなっているのです。このように加圧水型特有の危険性が無視されています。

以上、新基準のどこがおかしいのかをしっかりと見据え、再稼動反対の声を大きくしていきましょう!