守田です。(20130417 11:00)

前回に引き続き、一二三館での子どもたちとの対話の後半部分をお届けします。

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何をどうやって食べることが大切か
一二三館で子ども達と考えたこと(後半)

では次の話をしましょう。食欲を進める魔法の白い粉があります。

男の子 「白砂糖」

え、よく知っているねえ。そう。白砂糖はすごく身体に良くないです。

女の子 「色をつけているから」

うん。確かにそれもある。白くしているのだね。でも一番良くないのは「精製」ということをしていることです。例えば沖縄などにある黒糖という黒いお砂糖があります。それにはお砂糖の糖分以外にいろいろな栄養素が入っているのですよね。
ところが白い砂糖は、糖分以外をとってしまっているから、それを食べると、本当は糖分と一緒に身体に入らなければいけないものが、身体の中から使われてしまう。例えば骨が使われてしまいます。骨からカルシウムというものを出します。
だからね。白い砂糖ばかり入ったものをたくさん食べると、成績が落ちちゃうんだね。

男の子 「じゃあ俺、食べないようにしよう」

どうしてかというと、集中力や、やる気が落ちてしまうからです。ではそういうことであまり食べない方がいいものは何かと言うと、マクドナルドのハンバーガーです。

一同 「あー」(どよめき)
女の子 「ハンバーガーはもともとあまり食べないからいいや」

あれはね、砂糖をいっぱいかけているのです。なぜかというと、砂糖がいっぱい入っていると、人間は食欲が進むんです。

男の子 「子どものうちにマクドナルドの味を覚えさせれば大人になっても離れられない」

ピンポン!今のはマクドナルドの社長が言っていること!そうなんだよ。ひどいの。じゃあ、子どものときにその味を覚えさせるといいというのはどうしてだと思う?

女の子 「大人になっても買うから」

うん。大人になっても買うのだけれど、なぜなのだろう。これはちょっと難しいかもしれないな。

女の子 「美味しかったから」

美味しかったからだけど、なぜ美味しいと感じるのだろう。・・・これはもう答えをいいましょう。みなさんは味はどこで感じますか?

一同 「ベロ」

みなさんのベロの中に味蕾(みらい)という美味しさを感じる細胞があります。でもみなさんはまだ小さいので、その味蕾が十分に発達していません。だからどんどん大人になるに従って、舌がだんだん発達していくの。
そのように舌が発達する前に、砂糖をいっぱい食べてしまうと、あまり舌が発達しなくなる。だからね、大人はどうしてこういうものが美味しいと思うんだろうなということあるでしょう?ちょっと苦かったりとか。大人になるとああいうものが美味しくなるのです。
でも子どものときに糖分べったりのものを食べていると、舌が発達しない。だからいつまでも子どものときに感じる「美味しさ」から出ていけないから、だから子どものうちに食べさせれば勝ちだとマクドナルドの社長は言っているのですよ。みなさん。
だからあんなにおもちゃをくれるの。(大人の女性からどよめき)みなさんを一生、マクドナルドにつなぎとめておこうという戦略なのです。

女の子 「でもあのおもちゃ、すぐに壊れるから、途中でやめることができそう」

だって!すごく粗悪なおもちゃだそうです。(大人から笑い)
マクドナルドは世界の中でもどんどん伸びています。伸びているのは、ものの売り方がすごくうまいというか、ひどいからです。例えばマクドナルドはアメリカで発達しました。アメリカ人は今、とても太っています。

男の子 「たしかに」

太っているけれども、アメリカ人の多くはキリスト教を信じていて、キリスト教にはやってはいけない7つの大罪というものがあって、そのうちの一つは大食いなのです。だからマクドナルドは、このキリスト教の大食いの戒めをどう壊すかを考えたのです。
とくにフライドポテトで研究を進めました。それでマクドナルドが考えたこと。人は大食いだとは思われたくないから、絶対にポテトを二個は買わない。だけど一個食べたあとにみんな箱の中の塩を舐めたりしている。もっと食べたいはずだということで、結論、サイズを大きくしました。
フライドポテトの入れ物を大きくしてね。そうしたら大きくなった分だけ人は食べてしまう。それでコカコーラもビックサイズにしました。

男の子 「外国の野球場を見ていたらすごく(コーラが)大きくてやばいって思った」

やばいよね。あれはね、実は何十年か前はあんなではなかったのだね。年々、大きくなってきました。実はそういうこともあって、アメリカはこの20年間の中で劇的に太っているのです。
今日は本を持ってきました。『デブの帝国』(注 原題はFAT LAND)という本です。ちなみに今、ここに「デブ」な人はいませんよ。「デブ」とはどういうことなのか。アメリカの場合はずいぶん、深刻なのです。
体があまりに太ってしまうと心臓が悪くなりやすいのだよね。それで心臓が痛いということで、救急車を呼ぶでしょう。救急隊が到着しました。救急隊が唖然としました。救急隊が家から出せないのです。

女の子 「タンカに乗れない?」

タンカに乗れないどころか、250キロとか体重があって、ドアから簡単には出れないのです。どうするか。

男の子 「壁をぶち壊す」

そう。そうやって救出したなんて話がアメリカでは増えているのです。ではその人は幾つぐらいか。18歳だったりする。そういう劇的な太り方をしている人が増えているのです。日本にはほとんどいないのだけどね。

もう一度、マクドナルドハンバーガーの怖さを話すとね、ちょっと難しいのだけれど、私たちの頭は糖分で動いています。だから糖分が少なくなると、人間は頭の働きが鈍ってしまうのだよね。だから人間は糖分がどれぐらい身体の中にあるかをコントロールしています。
少し難しい言葉だけれど、糖分の血液の中にある値と書いて、血糖値というものをコントロールしています。

女の子 「血糖値が上がりすぎたり下がりすぎたりすると良くないから」

賢いねえ、君。(大人から唸り声とどよめき)そのとおり。血糖値が上がりすぎたり下がりすぎたりすると脳が不安定になるので、血糖値をいつも安定させようとする仕組みがあって、そのために身体の中から出る成分って知っている?これは知らないかな?

女の子 「尿?」「糖尿?」

尿ではないね。今、あなたが言っているのは、この血糖値のコントロールが壊れてしまった時に尿に糖分が出てきてしまうことで、それを糖尿病といいます。尿に糖が出てきます。
身体の中にはすい臓という器官があって、ちょっと難しい言葉だけれど、インシュリンというものがすい臓の中から出ます。それが出ると、身体の糖分がコントロールされるのだけれども、例えばマクドナルドハンバーガーを食べるとどうなるか。
普段、生物としての人間にはそんなにたくさんの糖分だけが入ってくることはありません。だから血糖値が一気にあがってしまう。そうすると体はコントロールしなければならないということで、インシュリンをいっぺんにたくさん出してしまいます。
そうすると、一旦上がった血糖値がいっぺんに下がってしまう。

男の子 「低血圧?」
女の子 「低血糖」

そうだね。血圧ではなくて血糖値が下がるから、低血糖状態というものになります。そうすると体は低血糖状態は良くないから、糖分を欲しくなってしまう。
これを僕は、マクドナルドハンバーガーを一つ食べると、もう一つ食べたくなる法則と言っています。一個食べると、二個目が食べたくなってしまう。だからあそこで食べると、もっともっと食べたいという欲求が強まってしまう。そうなると実は人間は簡単に止まらないのです。どこまでも食べれてしまう。
だから250キロとか、太っても太っても、まだ食べれてしまう。

ではどこからが太っているというか。肥満という言葉がありますよね。健康状態を越えて太っている人のことです。みなさんはOECDというものを知っていますか。アメリカや日本やフランスやイギリスなど、世界の中の有名な、お金持ちの国のグループをさすのだけれど、その中で一番、痩せている体型をしている国はどこだと思いますか。

男の子 「ドイツ」

ドイツではない。ドイツはけっこう太っている。

女の子 「インド」(注、インドはOECD外)

インドは最近、どんどん太りだしています。ヒント、もっと近い国。

女の子 「韓国」

韓国は2番目!

女の子 「台湾」(注、台湾はOECD外)

男の子 「中国」(注、中国はOECD外)

中国も今、太りだしている。

一同 「ロシア」「タイ」「イタリア」(注、ロシアは加盟申請中、タイはOECD外)

もっと近い国!

男の子 「日本」

そう。日本なのです。世界の中でというのではないけれども、お金持ちの国の中では、一番痩せている国は実は日本なのです。何がいいのかというと、お魚とかを砂糖をかけないで食べていることなどだね。和食は身体にいいものが多いです。
(注 ただし食の研究者の中からは、そもそも和食という概念はあいまいで、牛丼など和食ファーストフードもあることや、最近は日本の子どもたちも太りだしていること、一方でやせていればそれで健康だとは言えないことにも警戒すべきだという指摘の声も出ている)
だから日本と韓国は世界の中でも痩せている国です。ではさっき言ってしまったけれど、一番太っている国はどこでしょう?

一同 「アメリカ」

ピンポン!ではどれぐらい太っている人がいるか。OECDという世界のお金持ちの国の平均が、14.7%、100人のうち15人が太っています。日本は100人のうち3人です。(注、体重を身長の二乗で割ったBMI値が30以上をWHOは肥満と規定。統計は2005年のもの))
ではアメリカは100人のうち、どれぐらいだと思いますか?

一同 「25人」「50人」「195人」

100人のうち、195人がいることはできないね。(笑)答えを言いましょう。32人です。100人のうち32人が激太りなのだよ。

男の子 「わおー」

わおーなんだよ。すごく身体に悪い。それで心臓病などとても多いのです。でもさっきもいったように、そのアメリカも30年前だと100人のうち16人ぐらいだったのです。この30年、とくに20年ぐらいの間にどんどん悪くなってきたのです。
何が悪いのかというと、非常に悪い油を使った食べ物がすごく増えたことです。パーム油、ヤシの油だね。それから大豆油。
あとは砂糖の中身も変わってます。昔は蔗糖といって、ピートなどからとってきたのだけれど、今はトウモロコシから採った糖分に変わっています。これも身体によりよくない。だからトウモロコシの成分が入っているもののあまり良くないんだね。

男の子 「コーンポタージュ」

うん。それもあまりよくないね。(注、コーンポタージュは本物はけして悪くはないが、多くの、安価に売られている粉末ものは加工でんぷんなど多くの添加物で底上げされてる。コーンの問題よりも、添加物の問題の方が大きい)

男の子 「じゃあ、コーンフレークも良くないんだ」
女の子 「コーンフレーク、大好き」

コーンフレークは、砂糖のかけすぎがより良くないかな。モノによるのだけれど。(注 コーンフレークもコーンの栄養素部分が削られていて単純な糖質になっている)

男の子 「表面が白いのがある」

そうでしょう。白いのがかかっているのがあるでしょう。あれの中には全体の半分が白砂糖のものがあるんだよ。

男の子 「ギクッ」

そういうものを食べると、どんどん体が悪くなってしまいます。だから甘いものを食べるなら、どちらかというと和菓子の方がまだいいかな。

男の子 「お母さんがそう言っている」

今までの話をまとめたいのだけれど、よく噛むと消化がよくなりますね。そのときもう一つ大事なことは、よく噛むと、時間がかかるので、そんなに食べなくても満腹になるのです。

女の子 「脳が、お腹がいっぱいだと感じてくる」

そう、それだね。脳の中に満腹中枢というものがあります。その通りだよ。噛む回数を増やすとそれだけ脳は満腹を感じやすくなるのです。

女の子 「いっぱい食べたと感じる」

だから噛まさないものをたくさん売っているのです。柔らかくしてあまり噛まないで、飲んでしまうようにする。

男の子 「あと、脳を活性化する」

そう。噛むことでね。顎が動いてね。だからみなさんは、お家に帰ったら、意識的に今までよりも噛む回数を多くしてください。それだけでとても健康になります。それだけで成績が良くなります。

女の子 「100回、噛んでる」

100回、噛んでるの?凄いね。

女の子 「口の中でなくなっちゃったよ。食べ物」

そうだね。なくなっちゃうよね。でも本当にそうやって食べた方がとても身体にいいんです。

男の子 「徳川家康は、ご飯を一回口にいれると48回噛んでいたそうです」

おー、すごいこと知っているね、君。(笑いと大人からのどよめき)
それは本当にそう。戦国の人たちはどうやって食べると身体にいいかを知っていました。とくに徳川家康がなぜそれを考えたのかというと、戦場でご飯を食べるときは、早く食べないといけないので、湯漬けといってお湯をかけて飲み込んでしまう癖がついていました。
そうするとお腹を壊したり、身につかなかったりします。それで徳川家康はもっとよく噛んで、身につけることを知って、それで強くなっていったんだね。すごいことを知っているね。
だからよく噛むことを身につけてください。それから白い砂糖がたくさん入っているものを避けることですね。

甘さというのは仄かな方が美味しいのです。さっき言った、でんぷんってあるでしょう。お米を噛んでいると、でんぷんに唾液が混じります。その唾液の中にはアミラーゼという物質があります。この二つが交わっていくとだんだん甘くなる。だからお米はゆっくり噛んでいると美味しくなる。
ところがそれだとたくさん食べてくれないということで、昔、小僧ずしというお寿司を売るチェーン店が、最初にご飯に砂糖をかけました。そうすると最初から甘いから、あまり噛まないで食べてしまいます。
お寿司を握っている職人の人たちは、そんなことは昔から知っていました。知っていたけれど、絶対にやってはいけないことにしていました。本当のお寿司の美味しさではないからです。
そんなわけで買ってきたものには砂糖が多く使われているので、より甘いものが多いのです。だから甘いオカズが多かったら、お父さん、お母さんに、こんなに甘いものではないものを食べようよと言ってください。

女の子 「もうそれ、はじめてる。ママもアトピーだから」

そうか。そうだね。アトピーなどにもそれはいいことです。そのことでみなさんが身体を強くしていけば、放射能の害とかはあるけれども、それに負けない身体を作っていくことは必ずできるので、とにかくよく噛むことを続けてください。
ただしね、今、みなさんは成長期だし、今の日本にいて、それほど太ることを心配する必要はないです。
とくに女の子は大きくなると、「痩せてないといけない」という声が聞こえてきますが、それには巻き込まれずにね、ゆっくり、一生懸命に噛んで、それで自分が食べたいだけ食べていれば大丈夫なので、そういう食べ方を覚えてください。
それでここから帰っても、みんな元気で、またここでこうやって集まれたらいいね。

はい。それではこれで話を終わります。(拍手)

続く 次回は僕も追い詰められた?質問コーナーを掲載します。