守田です(20210201 21:30)

● でも本当に18000人分の不足だけ?

東海第二原発が重大事故を起こした際の広域避難計画をめぐり、30キロ圏内からの避難を受け入れる避難所が過大に見積もられていたことが明らかになりました。
一部でトイレや倉庫などの「非居住スペース」を除外しておらず、2018年時点の収容人数が18000人分足りなかったというのです。
自治体間の協議は難航しており、国内の原発で最大の約94万人の避難計画が、策定開始7年でも「完成」していないと報道されています。


18000人分の不足と伝える毎日新聞

ただしこの計画を良く見ると一人分のスペースはわずか2平米。これで一月も生活せよとの計算です。
国連が勧告しているスフィア基準では一人分のスペースは3.5平米。しかもスペースだけでなくトイレも20人にあたり一つ。男性1に対し女性3にせよとされていますが、これまた全く不足です。
さらにコロナ禍でのソーシャルディスタンスを踏まえたスペースでは日本でも4~5平方メートルが必要とされており、それらを合わせたら不足は18000人分よりずっと多くなります。

いやそもそもこれらの避難所は茨城県内で、事故が起こった時の放射性物質を含んだプルームの動きがそれ以内に収まる保障などない。
一度、避難所に入っても、さらに遠くまで逃げなければならなくなる可能性も大ですが、その時の避難先は想定すらされていない。
つまり不足が18000人分にとどまらないどころか、避難計画そのものが成り立っていないことが示されているのです。

● 原発事故での総員の避難はどれも無理。再稼働をやめるべきだ!

避難の困難性は繰り返し指摘されていることです。例えば2018年11月に日本テレビがNNNドキュメントで「首都圏の巨大老朽原発 再稼働させるのか」という番組を放映しました。
「明日に向けて」で3回にわたって文字起こししましたが、そこから避難にスポットを当てた部分をご紹介します。

明日に向けて(1621)東海第二原発が事故を起こした時、避難できるのか(NNNドキュメントより‐2)
https://toshikyoto.com/press/3054.html

「避難できるのか」と書きましたが、もちろんまともな避難などできません!そもそも東海村には原発だけでなく再処理工場や研究施設など12カ所もの関連施設があり、複合災害になると被害は東海第二にとどまらない可能性すらあります。
また東海第二は北は久慈川、南は那珂川という一級河川に囲まれていて、地震で橋が崩落したら他の橋に車が殺到してしまう。それやこれやでとても94万人(ドキュメント放映時は96万人)のすみやかな避難など不可能なのです。
これらから出る結論は一つ、総員避難はとても無理、再稼働は絶対にしてはならないということです。


NNNドキュメントの映像に守田が加工

● 「とっとと逃げる」ことと総員避難は無理だということの整合性

ここで整理しておきたいことがあります。僕は常に原子力防災の肝として「とっとと逃げる」ことを訴えています。このことと「総員避難は無理」ということの整合性はどうなるのか。
答えはこうです。そもそもどこの原発を考えたって総員が理想的に逃げることは不可能なのです。周辺人口の多い東海第二はもちろん、すでに稼働している川内・玄海・大飯原発とて総員避難は無理です。
だから絶対に原発を動かすべきではないのだけれども、動かされてしまっている以上、可能な中の最善の策として「とっとと逃げる」しかない。

とくに渋滞が予想される地域ほど、まだ事故の規模が分からないうちからとっとと逃げだして下さい。その方が被曝を避けられる可能性が高くなります。
福島原発事故では放射性物質が大量に飛び出すまである程度の時間がありました。同じようになる保証などないですが、それでも稼働原発の事故では、我先にとっとと逃げるのが最善の道です。
もちろん諸事情から逃げられない方もおられるでしょう。それなら立て籠もりの準備をしておいて下さい。そういう方が必ずおられることを考えると、万が一の過酷事故でも深刻な爆発を免れることを祈るばかりなのですが。

こうした記事を書いていると、新規制基準のあやまり、ひどさに改めて怒りを感じます。放射性物質が格納容器から漏れ出す「重大事故」が防ぎきれないことを前提に対策をたてよとなっているからです。
そのくせ原子力規制委員会は「避難計画は管轄外」としている。誰が責任者なのか不明確なまま、現場自治体に責任がおっかぶされています。しかし現場からみたら無理難題そのもので、だからまともな避難計画など作れないのです。
もともとできもしないことが要請されていて、しかも要請した側はなんら責任を取っていない。これが原子力行政の実態です。

事故が起きてしまったらとっとと逃げるしかないけれど、やはり再稼働させないことが一番。そのためにはこの余りの酷さをみんなで広く伝えていかねば。問われているのは、あなたと僕の努力です。


篠山市(現丹波篠山市)の原子力防災ハンドブックより

#東海第二原発 #18000人分不足 #広域避難計画の破綻 #巨大老朽原発 #原子力防災 #総員避難は無理 #とっとと逃げる

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