守田です(20200415 22:30)

● 安倍首相に屈しない「聖域」としての医療界

PCR検査をめぐる政府内部での対立について、日経新聞が重要な記事を配信しました。
「もっと検査せよ」と迫る安倍首相に対し、厚労省の医系技官たちが抵抗してきたというのです。もちろんその後ろに医療界が立っています。人々の命を守ってきたこの方たちは、けして安倍首相に忖度しないのです。
僕は繰り返し「安倍政権と専門家会議や日本の医療界は別物」「安倍首相と専門家会議の串刺し的な批判はやめよう」と語ってきましたが、この記事はそれを裏付けてくれています。

記事を少し読んでみましょう。

「4月上旬の首相官邸。「PCR検査はなぜ増えないんだ」。安倍晋三首相は加藤勝信厚生労働相や西村康稔経済財政・再生相らとの協議で不満を示した。同席した厚労省の医系技官から明確な返答はなかった。

首相「検査なぜ増えぬ」

厚労省は37.5度以上の熱が4日以上続くなどに絞って検査をしてきた。各国の検査数が増える中で異質の対応だった。
理論的支柱となってきたのは医師免許を持つ医系技官らだった。科学的な根拠や専門知識で政策を立案する。国民の生命や健康に関わる技官らは政治から一定の独立性を保つ。人事への政治の介入も限定的だ。

今回の危機対応ではその独立性が動きを鈍くした。重度に応じ区別するしくみを早急に作り検査の数を増やす方向にいかず、軽症者の入院が増え続ければ重症患者に手が回らなくなる「医療崩壊」への懸念という以前からの姿勢が先に立った。」

安倍1強にも医系の「聖域」 検査・薬で厚労省と溝
日経新聞 2020/4/11 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57942260Q0A410C2EA2000/

ちなみに記事は「検査を増やすべきだ」という視点から書かれています。
その点で、安倍首相が「検査なぜ増えぬ」と言っていたことが事実である点に、信頼性があると思います。


写真1 安倍一強の「聖域」について論じた日経新聞

● 検査を増やした各国は失敗し必要な場面に絞ってきた日本は今のところ成功しているのでは?

安倍首相が「検査なぜ増えぬ」と検査を迫る側にいて、厚労省や日本の医療界抵抗してきたこと、オリンピック開催のために「感染者数を低く見せる」ことなどなかったことをご確認ください。
そもそもそんな、命の問題に反することに、日本の医学界はまったく応じません。だからオリンピックがダメになっても、けして検査は大きくは増えてないのです。
あくまでも必要性に絞って行なわれています。ただし今はその必要性に検査現場が追いついていない面もあります。とくに手術現場では、無症状者でも検査を行わないと院内感染の危険が増すばかりですから、そうした必要性のある検査は当然増やすべきです。

さてそんな日本の医療界、ここまでものすごくうまく難局を乗り越え続けているのではないでしょうか?
世界各国のデータを毎日確実に更新しているサイトは無い中で、ここでは以下のものをとりあげます。日本の数だけは、より正確な厚生省のものに頼り109人(都道府県からの報告では132人)とします。この差は陽性の確定判断を待っているためのものです。

Worldometer
https://www.worldometers.info/coronavirus/

ご覧のように、アメリカ26,064人、イタリア21,067人、スペイン18,579人、フランス15,729人 イギリス12,107人が最も死者が多い五か国です。どの国もWHOが示した「検査の徹底化と隔離」を進めた国です。
これらと比較すると、ドイツは一桁小さい3,495人で、評価が高いですが、しかし日本と比べると30倍近い数です。
しかもアメリカやスペインは、病院に収容される前に、自宅や施設で亡くなった多くの方たちがカウントできていないことも表明されています。もちろん隠しているのではありません。命を救うのが優先で確かめきれていないのです。


表1  各国の感染者数と死者数 表の一部を切り抜き

僕は残念ながら各国とも、対策がうまく行ったとはとても言えないと思うのです。みなさん、どう思われるでしょうか。検査の徹底化によって、かえって病院を中心に感染を拡大し、医療がダウンしてしまったが故の、悲しい結果なのではないでしょうか。
この欧米の惨劇を見ながら、厚労省のもとに集う医師たちが、安倍官邸に抵抗しつつ、検査を一気に誰にでも行うような形に拡大することを戒め、それで私たちの多くの命を守ってきたのではないでしょうか。

その点で僕は専門家会議や医療界の努力、また現場の医療者のみなさんの努力に、心から拍手を送りたいと思います。
医療がパンクしなければ、肺炎に対しての日本の救命救急力もすごい。それぞれにぎりぎりのところで病院を守りながら、重症者の多くを助けてくださっているのではないでしょうか。
そのことに、もっと多くの人の、心からの感謝を集めたいのです。そうでなければ、懸命に命を守ってきてくださっている医療者たちに対し、あまりにも過酷です。

● 死者数をごまかしている?検証してしろくろつけましょう!国会議員による調査を!

とくに僕が最も胸を痛めているのは、一部のワイドショーで、「死者数がごまかされている」という言質が飛び交い、これを信じているように思える方が多くいることです。
僕はこれまで、日本の医療界のことを学んできて、深いリスペクトを抱いているので、そんなことはありえないと思っています。
また安倍官邸に抵抗してきた医療界にとって、また命を守ることに尽力してきた人々にとって、そもそも死者数を隠す動機など、考えられないのです。

もし死者数が隠されているのなら、医療界や病院がグルだということになります。しかしそんなことを疑うのは、あんまりなのではないでしょうか?
せっかく死者を増やさないように懸命の努力を傾け、重症化した方に、高度で質のよい医療を集中できる体制を保持し、ここまで頑張って、欧米のような悲惨な状況に至らなくしてくれている医療者たちへの、これ以上ないバッシングなのでは?
繰り返して言います。安倍首相と医療界は別物なのです。財務省は忖度官僚ばかりになり、平気で記録の偽造をしてきましたが(赤木さんは耐えられずに亡くなりましたが)、医療界はそんなことはしてきていません。命を守るために奮闘してくださっています。

そこで日本共産党の国会議員団をはじめ、各党の国会議員のみなさんに、強いお願いがあります。
「死者をごまかしている」という一部の言説に対し、徹底した検証をお願いしたいのです。ぜひともここで、しろくろを付ける必要があります。
このことが今後、私たちがこの感染症と立ち向かう上で、最も大事なポイントになるからです。


写真3 看護師出身の倉林明子参議院議員をはじめ、国会議員のみなさん。ぜひ「死者数疑惑」を検証してください!

いまの109人、ないし132人という死者数が信頼されないなら、医療界がどんなに頑張っても、「それは隠された数字だ」と言われて評価もされない。あんまりな状況が続いて、医療がひっ迫してしまう。
反対に、本当に一部の人々が言うように、死者数が偽造されているのなら、あらゆる対策の前提が崩れます。だからこの点は、けして放置して良い問題ではありません。
「死者がごまかされている」と語られている方も、ぜひそう語る具体的な根拠を示してください。自分が確かな根拠に基づいているかも点検してください。そして根拠を持たない方は、その憶測を今はとどめてもらえないでしょうか?

僕はいま、素晴らしいパフォーマンスを発揮している日本の医療界を、もっとみんなで支える時だと思うのです。
そうではないでしょうか。そのためにも「死者がごまかされている」のかどうか、はっきりさせて、みんなで前に進みましょう。

続く

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#新型コロナウイルス #パンデミック #医療崩壊 #死者数 #PCR検査 @安倍晋三