守田です(20190629 09:30)

● 空母の保有は憲法違反(ただしそもそも自衛隊そのものが違反だけれど・・・)

自衛隊のことを論じるときに大前提として僕が押さえたいのは憲法9条をどう読んでみても自衛隊は存在そのものが許されないということです。だから僕は自衛隊そのものに反対で、災害救助隊への転換を求めています。
その上で、でも「専守防衛までは合憲だ」という方と一緒に問いたいのです。空母は合憲でしょうか。とんでもない。当たり前です。防空のために必要ないからです。空母はどこか遠くで敵を攻撃するためにしかいりません。
これに対して「かが」や「いずも」は攻撃性が弱いので「攻撃型空母」とは言えず違憲ではないという論がこの間登場しています。

二つの反論を行いたいと思います。一つはかつて政府自身が、1万トン級であっても空母に垂直離発着できるような飛行機を搭載したらそれはもう攻撃型空母で憲法違反だと国会で答弁していることです。
「同じように1万トンの船でありましても、これが例えば(垂直離着陸攻撃機の)ハリアのようなものであって・・・海外の領域を攻撃するような任務を与えられるようなものとして設計され、造られておるということであれば、これは一種の攻撃型空母に変質するということではなかろうか」(1972年年5月31日、衆院内閣委員会、久保卓也防衛庁防衛局長=当時)。
これを引き出したのは日本共産党の宮本徹衆議院議員です。以下、しんぶん赤旗の記事をご紹介します。

主張「いずも」の改修「攻撃型空母」への変質は明白
しんぶん赤旗 2019年3月12日
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2019-03-12/2019031201_05_1.html

もう一点。より重要なのはそもそもこのF35Bの登場や、ミサイル艦などの発達の中で、海上軍事戦略が大転換されつつあり、「空母時代の終焉」すらが言われだしていることです。
この点を指摘しているのは海上自衛官です。海上自衛隊の交流組織「水交会」の機関誌『水交』に寄せられた論文の中においてです。それによれば米軍の中で「規模の大きな空母はもういらない」と言われだしているのだとか。
前方にもっと小さな規模のF35Bを搭載できる軽空母をおきF35Bを出動させる。そうするとF35Bは瞬時に全軍にデータを送れるので数百キロ後方の潜水艦やイージス艦にキャッチさせ、そこから巡航ミサイルを撃てば良いというのです。

F35Bの出現と空母時代の終焉
雑誌『水交』No.645号 平成29年新春号から 岩﨑洋一 幹候29期執筆
http://www001.upp.so-net.ne.jp/KG4210/Contents/F-35B-iwasaki.pdf


護衛艦「かが」 日経新聞20190528掲載のweb動画より

● トランプの日米安保への「不満発言」は自衛隊の米軍へのより強固な一体化を狙ったもの

つまり電子機器が発達した今では、最前線にステルス性の強いハイテク機を飛ばして「敵情」をキャッチし、後方に控える艦船から命中精度の高いミサイルを撃ち込めば良いのであって、F35Bはその最先端に位置するのだということです。
これをたくさん日本に買わせるならばぜひ積極的に米軍の一部として運用しようとの戦略をトランプ大統領は持っており、だからこそいま「安保同盟に不満足」=日本がもっと攻撃面を担え=アメリカが買っている恨みを分担しろと言い出しているのでしょう。
例えばたったいま、アメリカは大型空母をイランに向かわせていますが、このようなときの穴を埋めるものとして「かが」「いずも」が使おうとしている。日米の軍事的一体化、そのためのセレモニーが「かが」への両首脳の乗船だったのです。

これらを考えたとき私たちは「欠陥飛行機F35を爆買いするのか」という批判だけに終わらせることなく、井上議員が昨年から早くも指摘していたようにこの飛行機の攻撃性に大きな批判を行わねばです。
海上軍事戦略が転換しつつあるいま、かつての「空母」のイメージはもう古くなりつつあり、ハイテクステレス戦闘機を最先端においた巨大艦隊としての運用が進められつつあることも見なくてはいけません。その点では1970年代の政府答弁に頼り切れない。
おそらくこれらは中国の軍事転換、ミサイルの性能の向上のもとで「中国・台湾海峡における米軍の優位性が低下している」などとも言われていることへの対応でもあります。

私たちが問わなければならないのは「国の交戦権は認めない」と憲法に書かれているにも関わらず、安倍政権が自衛隊を米軍にまるで吸収させるように一体化させつつあることです。安保法の具体化、拡大強化であり、国の歩み方の大転換です。
そのもとで自衛官が他国の人々を殺害する可能性そのものを摘み取らなければなりませんが、さらに言えば、そんな最悪のことが起こったら、この国の「国防」状況はむしろ一気に悪化します。
福島原発事故すら収束しておらず、海岸線に無防備に原発を並べているこの国は攻撃にものすごく弱いからです。にも関わらず世界の果てで人殺しを行い、アメリカが受けている怒り、恨みをも進んで買おうとする愚かさこそを止めなければなりません。


トランプ大統領の「日豪への不満」を報道する毎日新聞20190627

連載終わり