守田です(20181029 22:30)

前回に続いて明日(30日)の同志社大学での講演で話そうと思っていることを記しておきたいと思います。
なお講演は午後1時から同志社新町キャンパス尋真館21で行います!

● 海兵隊兵士の作り方=優しい心を摩滅させる

憲法9条が長く悲しい戦争の果てに生み出されたことに対し、後半ではいまも戦争を行っているアメリカがどのようにして兵士を作っているのかにフォーカスしたいと思います。
この点で僕がいつも僕が学習会の場で使っているのは映画『フルメタル・ジャケット』の冒頭シーンです。明日もちょこっと観てもらうつもりです。
舞台は海兵隊の新兵訓練の場。教官のハートマン軍曹が兵士たちを「鍛える」のですが、その際、ものすごい罵倒を耳元で繰り返すのです。性的スラングや差別用語が乱発されます。

兵士たちはその理不尽な罵倒に「イエス・サー」と言わされ続けます。そのことで理不尽なことを受け入れられるように作り替えられるのです。
そしてこの「理不尽なこと」の最たるものは人を殺させられることなのです。
第二次世界大戦の時、敵と向かい合ったアメリカ兵のうち、まともに敵に向けて射撃ができたのは2割ぐらいしかいなかったのだそうです。海兵隊は残りの8割にいかに人を殺させるかを考え、この訓練を編み出したわけです。

● 兵士の心の中の両親=良心、とりわけお母さんを殺す!

中でも重要なのは兵士、というより戦争に駆り出された若者たちの心の中の良心を押しつぶすことで、実はその拠り所が両親、とくにお母さんなのだそうです。残酷なことをしようとしたとき「お母さんがどう思うだろう」ということがブレーキになる。
このため海兵隊の訓練では、父親と母親を罵倒する言葉がたくさん出てきます。映画の中ではミニタリー・ケイダンスにそれが現れている。みんなでジョギングしながら教官が口ずさむ歌を復唱するのですが、歌詞はこんな感じです。
Mama and Papa were laying in bed.(ママとパパはベッドでゴロゴロ)Mama rolled over and this is what she said;(ママが転がり、こう言った) oh,give me some…(お願い、欲しいの)…P.T.!(しごいて!)
最後の言葉には性的な「しごいて」という意味と自分たちを軍事訓練で「しごいて」という意味がかけあわされています。

映画には出てきませんが、ベトナム戦争時に実際に歌われていたミニタリー・ケイダンスには以下のようなものがありました。
I wanna Rape Kill Pillage’n’ Burn,annnn’ Eat dead Baaa-bies! (レイプするぞ ぶっ殺すぞ ぶんどって 焼き捨てて 死んだ赤ん坊を 食ってやる!)
なんと海兵隊の新兵たちはみんなで「レイプするぞ ぶっ殺すぞ」と唱和しながらジョギングをしていたのです。ちなみにこの歌を強制され続けたことがPTSDになった兵士経験者もいたそうです。

● 人殺しになるのは過酷なこと

人間はなかなか人を殺せない!・・・どうも私たちには同じ人間を殺すことをためらう心情がそなわっているみたいです。どこまでがインネイトなものなのか分かりませんが、兵士を作るにはこの人を傷つけたくない思いをすりつぶさないといけないのです。
そして一度、その点をすりつぶされると人はなかなかもとに戻れなくなってしまいます。兵士の場合はとくにその点がPTSDの源になるようです。自分が殺されかかった恐怖ももちろんですが、人を殺めてしまった心の傷がずっと続くのです。
実は第二次世界大戦の時の日本兵とてそうだったのです。多くの兵士が人を殺させられることで心がズタズタになっていった。『日本軍兵士』(中公新書)などにそんな実態が書かれています。

またつい先日、ちょっと奇跡のような演劇を見てきました。いま行われている京都国際舞台芸術祭で行われたロラ・アリアスの「MINEFIELD-記憶の地雷原」という作品です。
登場するのは6人の男性ですが、1982年にフォークランド・マルビナス諸島の領有をめぐってイギリスとアルゼンチンの間で行われた戦争の双方の兵士たちなのです。イギリス側が3人、アルゼンチン側が3人。しかもどうも本物の人たちが自分の実際の体験を語っていました。
そのうちの一人、アルゼンチンの元兵士、今はトライアスロンのチャンピオンが一時期はコカ中毒にはまっていたことを告白しました。彼は言いました。「憎しみがないと引き金は引けなかった、そしてそれはその後もなかなか解除できなかった」と。

● 若者を人殺しにしたくない!

それぞれに思いの違い、立場の違いはあれ、それは6人が共有している感情でした。そして舞台の終幕で彼らはロックを演奏しながらシャウトしました。「戦場に行ったことがあるか!人が燃えるのを見たことがあるか!バラバラの死体を見たことがあるか!」


(画像は京都国際舞台芸術祭ホームページより https://kyoto-ex.jp/2018/features/other/falklands-glossary/

観ていてただただ涙が流れました。彼らがとても可哀想でした。国家による命令、人々の熱狂の中で送り込まれた戦場で、彼らは心の中に深い傷を負い、苦しみ、もがきつづけてきたのです。
僕が戦争に反対する原点はここにあります。憲法9条を強く支持するものこの点からです。憲法9条はどう読んだって自衛隊など認めていませんが、それよりも僕は「人殺しを作りたくない」からこそ、自衛隊に反対だし、戦争放棄を支持するのです。

僕は若者たちに、僕を守るために人間の良心を摩耗させる訓練なんか受けて欲しくない。戦場に行って人を殺し、えんえんと苦しみ続ける人生など送って欲しくない。
明日の講演は大学の1年生もたくさん来るとのことで、このことを若者たちに訴えたいと思います。
「君たちは何があっても戦場に行ってはいけない!人殺しになってはいけない!なぜなら一番傷つくのは君たちだからだ!」・・・大人としての責任も込めて明日はそう語りかけようと思います。

終わり

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