守田です(20180914 02:00)

連投をお許しください。前回に引き続いて「ひずみ集中帯」のことを扱います。

〇 「ひずみ集中帯」の上に多数の原発が

今回、北海道の苫東厚真火力発電所が「ひずみ集中帯」の上にあって損壊したことを見てきましたが、今回の揺れに稼働中の原発が直面していたら、配管破断から冷却材を喪失しメルトダウンを惹き起していた可能性がありました。
火力発電所のためそこまでの大惨事にはなりませんでしたが、しかし北海道がすべての電源を失うという重大な事態が発生しました。これが真冬だったらそれだけでも大惨事でした。
問題は事故で止まるとそんなに大きなリスクを発生させる大きな火力発電所が、なぜ「ひずみ集中帯」の上に置かれていたのかということです。

実はここに現在のこの国が直面している大きな危機の一つがあります。なぜかというとそもそもこの仕組みが分かったのは阪神大震災後なのです。GPS機能が発達し精密な地震観測が可能になってからでとくに2004年新潟県中越地震後に研究が深まりました。
ところがこの国の原発はすべてがそれ以前に土地が決められ、設計され、作られてしまっています。「ひずみ集中帯」などまったく知らずにです。
このため2007年新潟県中越沖地震の際に柏崎刈羽原発が直撃を受けました。地震の揺れは設計基準の2倍をはるかに上回り、3号機タービン建屋1階では2058ガルが記録されました。同原発は激しい損傷を被り、以降、今日まで動いていません。

この地震をもたらしたのは「新潟―神戸ひずみ集中帯」と呼ばれるもので、新潟から日本海側に沿って阪神大震災の震源地へとつながっているのですが、恐ろしいことに福井の原発銀座もそっくりそこに含まれています。
新潟中越沖地震と同じように福井の原発群を直撃する大きな地震がここで起こりうる可能性があるのです。
2016年に起こった鳥取中部地震もまた山陰地方に大きくひずみが生じていることを証明しました。この時、島根原発に大きな影響は生じませんでしたが、しかし同原発もいつ直下で大きな地震が起こるか分からないのです。

〇 危険性を見てみぬふりをしてきたことが一番の問題

問題はこの「ひずみ集中帯」の知見が、原発や火力発電所を作ることに反映できなかっただけではなく、その後もなんら考慮されていないことです。
その一つの象徴が今回の苫東厚真発電所の事故です。同発電所の1号機の運転開始は1980年5月、2号機は1985年10月、4号機は2002年10月でした。(3号機は商用発電としては世界初の新方式を採用し1998年3月に運転開始したもののトラブルが多く2005年に廃炉)
「ひずみ集中帯」など知らずに建設・運転してきたことは明らかですが、しかし2004年以降、この点が明らかになってきて以降もまったくなんの対応もして来ていない。同発電所の直下で地震が起こる可能性を考えてこなかったのです。

そして同様のことが今も稼働している大飯原発や点検後の再稼働が目指されている高浜原発にも言えます。これら両原発も「ひずみ集中帯」の上に立地しています。
いやここには廃炉にしてみたものの、燃料取り出しそのものに大きなリスクを抱えている「もんじゅ」があります。もんじゅの冷却材は液体ナトリウム。空気と反応したら激しく燃えるので、万が一、原子炉が損傷したらもうどうしようもない。
にも関わらずこの国の政府はこの「ひずみ集中帯」という知見を無視し続けているのです。その結果がいま私たちの前に北海道のブラックアウトとして現出したのです。

ここいらでもう本当に事故をちゃんと教訓化しなくてはいけない。「ひずみ集中帯」が危険な地震の巣であることを自覚し、福井の原発群をはじめこの地帯の上にある原発を絶対に動かさないばかりか、燃料プールを守るなどの措置を重ねないといけない。
苫東厚真発電所もただ直すだけであってはいけないのです。もっと安全な地帯に電源を移さなければやがて同じことが起こりえます。
すでにそうしたことは起こっているのです。2007年新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の事故がそれです。これもまた2004年新潟県中越地震が起こったのに、なんら考慮しないままに過ごしたために襲われた原発直撃の地震だったのです。

〇 自然からの警告を受け止め、全国で地震対策を抜本的にあらためよう!

このように見てきた時、この国は、あるいは私たちは、すでに「自然から何度も警告を受けている」とすら言えると思います。
これ以上、見てみぬふりをしていていはいけない。「ひずみ集中帯」で再び次の巨大地震が起こりうることを想定し、備えなくてはいけない。もちろんこのひずみをもたらしている南海トラフや千島海溝の破局的な巨大地震にも備えなくてはいけない。

私たちは本当に巨大な危機の前に立っています。しかしあきらめてはいけません!
すべての命を守るために、また次の世代のために、みんなで声をあげこの国の向かう先を変えましょう!