守田です(20180707 21:00)

昨日、夕方から夜半にかけて福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、兵庫各県と京都府に出された「大雨特別警報」は次々と解除されましたが、なお岐阜県の一部に発令中です。
出されているのは山県市、本巣市、関市、郡上市、高山市、飛騨市、白川村です。
各地でようやく雨脚が収まりつつありますが、しかし今宵夜半から明け方までまだ各地で断続的に激しい雨が降ったり、局地的には豪雨になるところもあると予想されています。

とくに警戒が必要なのは各地の地盤がかなり緩んでいることです。
こんなときは地震にも気をつけたいもの。緩んだ場が一気に崩れ、土砂災害が地震と結びついて発生する可能性もあります。
と、この点を書いていたら実際に午後8時23分に千葉県北東部で震度5弱の地震が起こり、関東全域と静岡県東部が揺れたとのこと。
それぞれの場でぜひもう一度、地震対策も重ねておいてください。

なお今回の豪雨で各地に甚大な被害が出ています。NHKが午後7時半にまとめた情報では亡くなられた方47人、重体5人、安否不明49人だそうです。
最も犠牲者が多いのは広島県で23人。東広島市5人、広島市4人、三原市5人、竹原市3人、呉市3人、府中市1人、安芸高田市1人、福山市1人です。
愛媛県は全体で18人。西予市5人、大洲市4人、宇和島市4人、松山市3人、今治市2人です。
この他、岡山県笠岡市1人、兵庫県猪名川町1人、京都府亀岡市1人、滋賀県高島市1人、福岡県筑紫野市1人、山口県周南市1人が亡くなられました。

重体は広島市2人、山口県岩国市2人、岡山県笠岡市1人。
安否不明は広島県22人、愛媛県7人、岡山県6人、京都府4人、福岡県2人、佐賀県2人、鹿児島県2人、兵庫県1人、奈良県1人、高知県1人、大阪府1人です。

(図表は「時間泥棒」仕置人さん提供)

最も激しい被害が出ているのは広島県で23人亡くなり、2人重体、23人安否不明です。
広島県は2014年8月に広島市北部の安佐南、安佐北両区で起こった土石流で77人が亡くなる甚大な被害が出たばかり。いまは少しでも多くの方が救命されることを祈るばかりですが、一方で「なんとかできなかったのか」とも思わざるを得ません。
それは今回の水害全体にも言えることです。

気象庁は「特別警報」の発令で「数十年に一度の災害が予想される」と繰り返し述べました。しかし「特別警報」は昨年7月にも九州北部に発令されました。
また広島ではわずか4年前に77人も亡くなる災害が起こりました。このときはそもそも特別警報が間に合わなかったのですが、ともあれこうした事態はちっとも「数十年に一度」ではないのです。
だとしたら今回の被害も「規模が大きかったから」「数十年に一度だったから」ではなく、「備えが弱かったから」こそかわし切れなかった側面が大きいのではないでしょうか。

例えばこの点を象徴するこんなニュースが流れていました。

被災者を救うため。全国に1台しかない「レッドサラマンダー」豪雨被害で出動
2018年7月7日 BuzzFeed Japan
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180707-00010002-bfj-soci

「レッドサラマンダー」とは、あらゆる災害現場への人員・物資の搬送や救助救援活動に活用できる特殊車両だそうです。
東日本大震災の教訓を受け、がれきの上や津波の浸水地でも救助活動ができるように作られて、2013年3月末に岡崎市消防本部に配備されたのだそうです。
なぜ岡崎市なのかというと、なんとこの車両、全国に1台しかないのでここにおいておけば東にも西にも出動可能と考えてのことだとか。

今回も総務省の要請を受けて出動。専用トレーラーに載せられて初めは広島に向かっていたそうですが、途中で岡山県でも甚大な被害が出たことを受けて目的地変更。すでに現地で活躍しているとのことです。
岡崎市の担当者は「1.2mの浸水地点でも進んでいけるほか、車両が入れないような土砂やがれきがあるところにも入って、救出や搬送活動ができます。現場がいまどういった状況かはわからないが、1人でも多くの人を救う事ができれば」と語ったとか。
岡崎市消防本部提供の写真を貼り付けておきます。

同じ現場で撮られた動画もご紹介します。

この車を見て「こんなものがあったのか」と思うと同時に「でもなぜたった1台なのだ!」との怒りが込み上げてきました。
「レッドサラマンダー」の代金は1億1千万円だそうです。これに対してオスプレイは約210億円で17機も購入されました。このお金をまわせば「レッドサラマンダー」を大雑把に言っても200×17=3400台ぐらいは配備できたはずなのです!

この車が災害が起こってから豪雨の中をトレーラーで運ばれるのではなく、全国各地にあらかじめ配備されていたらどんなに災害対応度が増したでしょう。
さらには災害対策にこうした投資を行わなければならないことが明らかになってこそ、自治体の災害対策の取り組みも、人々の防災意識の向上も、もっとスムーズになされていくのです。

ところが被害を及ぼす可能性などまったくない「ミサイル」に対するJアラートなどだけはけたたましく鳴らし、イージスショアなど、ものすごい高価な意味のない武器の購入を決めながら「レッドサラマンダー」は全国に1台しか配備してこなかった。
僕はまさにここに政府による災害対策の軽視がにじみ出ていると思います。政府によるこの「本当の国難」たる自然災害への備えの甘さを大きく転換しなくてはなりません。

いまはまだ豪雨の途中ですから、とにもかくにもこれ以上の被害がでないように警戒と対応を続けていただきたいですが、しかし私たちはこの災害の中でこそもっと賢くならなければいけません。
この点を頭に入れつつ、あと数日、災害に立ち向かい続けましょう!