守田です(20210219 22:30)

● 千葉県内に避難した人々が勝訴

本日19日に福島原発事故のために千葉県に避難した人々が東電と国を訴えた裁判の控訴審が行われ、東京高裁が東電とともに国の責任を認め、賠償を命じる判決を下しました。
同様の裁判は約30件行われていますが、控訴審判決は今回が三つ目。昨年9月に仙台高裁が東電と国の責任を認め、今年1月に東京高裁(足立哲裁判長)が国の責任を否定、今回は東京高裁(白井幸夫裁判長)が国の責任を認めました。
画期的なのは一審千葉地裁では認められなかった国の責任が認定されたこと。逆転判決です。勝訴を勝ち取られた原告のみなさま、弁護団、支援者のみなさまにお祝いと感謝の拍手を送りたいと思います。

判決は次のように述べています。「平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した長期評価に基づいて津波の評価をしていれば、原発の敷地の高さを大きく超える津波が来る危険性があることを認識できた。防潮堤の設置などの対策を取れば、すべての電源を喪失する事態にならなかったと認めるべきだ」「元の居住地へ帰るために暫定的な生活を続けるか、帰るのを断念するかといった意思決定をしなければいけない状況に置かれること自体が精神的な損害だ」。
事故に対する国の責任の明確化とともに、避難生活に対する慰謝料だけでなく、生活の基盤が大きく変わったことも賠償対象としていて素晴らしい。みんなでこの勝訴を喜びたいと思います。


原告勝訴を報じるNHK

● 避難者の率先避難こそが被害を軽減し原子力政策に待ったをかけてきた

福島原発事故からもうすぐ10年になりますが、改めて確認したいのはこうした避難者みなさんの率先避難とその後の努力が、被曝影響を少しでも減らしてきたし、原発廃炉促進の力ともなってきたことです。
「率先避難」とは災害に際して先んじて逃げ出すこと。それが正常バイアスなどの罠にとらわれ、逃げ出すことができずにいる人の避難を促すのです。
あるいは避難できなくても、せめて水や食べものに気をつけるなど、多くの方に放射性物質からの被曝を防護する意識を喚起することになりました。

残念なときにあのとき、日本のどの政党も、革新団体も、宗教団体も、組織としての避難の呼びかけをしてはくれませんでした。この点はぜひ捉え返していただきたいです。社会変革にとってとても大事な点だからです。
しかしそんな中でも多くの人々が自主判断でどんどん動きだしたのでした。あっという間に政党も、組織も越えられました。
さらにその後、全国に散った避難者の方たちが、原発事故の恐ろしさと被災することの悲しみを各地で語りだし、それぞれの地域の脱原発運動の大きな推進役となったのでした。

廷に向かう千葉訴訟原告・弁護団 朝日新聞

● さらなる裁判勝利で原子力政策を止めていこう 

これらの結果、現在、稼働可能な原発は33基まで減り、そのうち再稼働しているのは9基(ただしたった今の実働は川内2基、玄海1基、大飯1基のみ)です。福島原発事故前の54基から大きく減りました。
原発の稼働をめぐる裁判でもたびたび運転停止命令が出されて、これに加えて原子力規制委員会の設置許可を取り消す判決も出ています(昨年12月大阪地裁)。
これらにより電力会社も国も原子力政策の展望を失うばかりで悶絶しています。社会的に罰せられ、賠償を課せられることも大きな痛手。しかもそんな中で時間を稼ぐ予定だった海外への輸出計画もすべてとん挫してしまいました。

もちろん原発はまだ稼働していて危険だし、核廃棄物の問題はこれから未来にわたって長く続いていきますが、それでもこれだけの原発がとまり、廃炉になったことで私たちの安全マージンは大きく広がっています。
その展望を大きく切り開いてくださったのが率先避難者のみなさんでした。私たちは私たちみんなと未来の人々の命と幸せを守ることに貢献してくれている率先避難者の活動に、再度、感謝とリスペクトの拍手を送りましょう。
また、だからこそ、後続の裁判も上告審も共に勝ち、その中で原子力政策も止めていきましょう!


原子力発電所の現状 2021年2月8日時点 資源エネルギー庁
 
#原発賠償千葉訴訟高裁勝訴 #国の責任を認める #原発再稼働反対 #率先避難者に感謝を

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