みなさま

守田です。(20110312 17:40)

福島第一原発1号機については、一進一退の攻防を繰り返していましたが、さきほど、1号機で爆発がありました。NHKの映像では、1号機の建屋の外壁が完全に吹っ飛んでなくなってしまいました。
すでに大量の放射能が大気中に出ている可能性がきわめて高いです。
このことを踏まえて、早急に放射線と放射能について踏まえておくべきことをまとめてお知らせします。

放射能とは放射線を発する能力のことを指します。これをもった物質を放射性物質と呼びます。

放射線にはいくつかの種類があります。代表的なものはアルファー線、ベータ線、ガンマー線、X線、中性子線などです。
それぞれが原子の中の物質により構成されますが、最も粒子が大きいのがアルファー線、小さいのが中性子線です。

人体への打撃はアルファー線がもっとも高い。エネルギー量が大きく、電離作用(人体を構成する分子と分子がつながっている電子をたたいて、分子のつながりを壊してしまうこと)が強いためです。
実体としてはヘリウム原子核と同じで、粒子が大きく、飛ぶ距離はごくわずかです。数ミリか数センチぐらいでしょうか。このため紙一枚でもふせぐことができます。
ベーター線は次に打撃力を持った物で、アルファー線ほどではないものの、やはり強い電離作用を持っています。ベータ線の実体は電子です。これは1センチのプラスチック板でも防ぐことができます。

これに対して、レントゲンに使われているのが、X線です。実体は電磁波です。ガンマー線もほぼ同じ物と考えてよいかと思いますが、これは遠くまで飛びます。その場合、発生源からの距離にもよりますが、厚いコンクリートでなければ防げません。
中性子線はさらに透過力が強く、なんでも通ってしまいます。しかしエネルギー量はアルファー線に比べれば格段に小さく、電離作用もそれだけ小さいです。

放射線を避ける場合に、これら違った放射線があることを知っておく必要があります。ちなみに放射線計測器と一般にいいますが、これら全てを一つで万能に計れるわけではありません。
いわゆるガイガーカウンターは、事実上X線対策のためのものです。アルファー線やベータ線も計れはするのですが、それぞれあまり長い距離を飛ぶわけでないので、発生源に近づけなければ、感知できないからです。
つまりガイガーカウンターは、アルファー線やベータ線を放射しうる物質がどれだけ浮遊しているかを計るものではないということです。
中性子線の測定はさらに特殊な装置が必要です。JCO事故では、中性子線が発生し続けていたのですが、これを測定する機器の到着が遅れたこともあって、長らく測定できず、救急隊や報道陣がそれと知らずに現場にむかって中性子線をあびてしまっています。

さて放射線が外に漏れたという場合、実は、原子炉内から放射線が外に出ている場合と、放射性物質が外にでて、それが放射線を発生している場合とがあります。
万が一の爆発があった場合も同じですが、この場合の恐ろしさは大量の放射能(放射性物質)が出ることです。

放射能(放射性物質)はウランの核分裂によって出来た物質です。
ウランの割れ方によりいろいろな物質ができます。その中でも恐ろしいのが大量に炉心内に作らている放射性ヨウ素です。これはベーター線を発する物質の固まりと考えるとわかりやすいです。大気中に放射性ヨウ素が出た場合、物質として浮遊します。
このとき雨が降ると、水滴に混じって落下してきて人体と接触し、体内に取り込まれてしまいます。そうするとヨウ素は人体の甲状腺などに集まる性質を持っています。あるいは人体がヨウ素をここに取り込むようにできているともいえます。
そうすると甲状腺に濃縮されたヨウ素から、ものすごい高エネルギーのベーター線が、周辺をたたき続けます。このため発生するのが甲状腺がんで、チェルノブイリではたくさんの人々、とくに子どもがかかりました。

対処法としては、原発事故直後に、放射性ではないヨウ素をさきに飲んでしまい、甲状腺を埋めてしまう方法があります。
これに使えるヨウ素剤としては、ヨウ化カリウム剤を一般の薬局で購入することが出来ます。(ただしほとんど在庫はしてなくて取り寄せになるでしょう)

ただ医師達が出しているガイドラインによれば、放射性ヨウ素は若い人にほど打撃を与えます。なので非放射性ヨウ素を服用するのは子どもが優先ですが、高齢者にも害はないわけではありません。。
これについては以下のページを参照して下さい。
http://kokai-gen.org/information/6_015-1-1y.html#

このほかにもアルファー線やベーター線を発する物質はたくさんあります。
劣化ウラン弾の粉末もアルファー線を発する物質ですが、ともあれアルファー線やベータ線は、放射線として飛んできて、体の中に入ることは少なく、放射能として運ばれてきて、体内に取り込まれ、そこで周辺に壊滅的な打撃を与えるものです。

それではX線などは怖くないのかというと、そうではなくて別種の怖さがあると考えた方がよいです。
透過力は断然上で、量が多いと、レントゲンの強いヤツを何度も浴びるのと同じコトになり、当然このことでも電離作用が生じて、ガンなどが発症する可能性が生まれます。

このため、原発事故にあたっては、放射能を体内に取り込まないことが大切で、とくに雨にうたれることは絶対に避けるべきです。
そのためには大量の放射能がやってくる前に遠くに逃げることです。
しかし「場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいい」とも言われます。爆発がおこって放射能雲が迫ってきているのなら、とりあえず室内にこもり、窓に目張りをし、換気扇をとめて、密閉性を高めるなどして身体に浴びないことが大事です。
とはいっても福島原発は、今後、さらなる爆発を起こすかもしれませんし、その方がたくさんの放射能が出てきてしまうので、やはり優先するのは遠くに逃げることです。

このため放射能対策にあっては、物質として飛んでくる放射能と、放射線として飛んでくるものへの対処の双方が必要になります。
マスコミ報道では放射線と放射能がしばしばごちゃごちゃになりますので、とにかく放射能漏れとか放射線漏れが伝えられたときには可能な限り、発生源から離れることと、同時に雨に注意し、放射能に触れないように注意することが必要です。
この点で、放射能雲の下では、屋内の方がまだまし=被曝量が少なくなりうるというわけです。

あと全ての放射性物質には半減期というものがあります。放射線を発する能力が半分になるまでの時間です。
これらが放射能力が弱くなる一つの目安としてありますが、この時間は、エネルギー量の大きいものほど早い傾向があります。
つまり放射線のエネルギーの大きい物、人体にダメージの大きいものほど、たくさんのものを出しているので、それだけ放射能力が早く失われていくということです。

ちなみにヨウ素の半減期は8日間です。8日たつと能力が半分になり、また8日たつとその半分になりますので、時間とともに脅威が少なくなっていきます。
ちなみにチェルノブイリ事故ではこうした情報を政府が伝えなかったため、事故直後に放射線ヨウ素で汚染された牛乳が出回り、多くの子ども達が飲んでしまったと伝えられています。
この場合は、牧草→牛→人間という経路をたどったということです。

このほか、よく話題にあがるのがセシウムやストロンチウムによる土壌汚染ですが、こちらの場合の半減期は30年です。
これらは植物、昆虫、キノコ等々に取り込まれますが、そのたびに濃縮されてしまいます。
チェルノブイリの周辺の数百キロでは、土壌汚染の上に汚染されていない土をかぶせる作業が延々と続いています。100年はかかると言われています・・・・。

このように放射性物質の中には、1日のうちにも半減期に達する物質もあれば、半減期が何万年超というものもあるものの、ともあれ安全性は時間とともに高まります。
このため逃げることができずにやむをえず屋内待避をするなら、屋内の気密性を高め、とくに雨には最大の注意を払ってサバイバルすることです。

こうしたサバイバルについて詳しい情報を閉めているページを上げておきます。参照してください。
とにかく今、私たちは戦後最大の危機に直面しています。
http://www.lohasworld.jp/yomimono/atomdez2.html

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注 この記事を書いた時の僕はまだ「とっとと逃げる」方針を確立しておらず、「場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいい」という判断も紹介しています。
まったく間違っているわけではないですが、しかし福島原発事故の現実を振り返るなら、この記事の後に15日に3号機を爆発がおき、漏れ出した放射能量はそれ以降の3週間の方が多くなっています。
事故が時間とともに深刻化したのです。これを踏まえるならばやはり「屋内退避」ややむを得ない場合の対処とし、とにかく遠くに逃げることを最優先にすべきです。
当時、この点を明確化できていなかったことを心からお詫びします。なおあやまりが含まれているものを放置するのはよくないので本文にはすでに訂正を加えましたが、歴史的事実を大事にするため、原文を以下に残しておきます。

このため、原発事故にあたっては、放射能を体内に取り込まないことが大切で、とくに雨にうたれることは絶対に避けるべきです。
場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいいというのはこうした判断に基づくものです。とくにすでに爆発がおこって、放射能雲が迫ってくるときは、一刻も早く室内にこもり、窓に目張りをし、換気扇をとめて、密閉性を高めた方が良いです。