守田です(20171017 10:00)

嬉しいニュースが飛び込んできました。関西電力が、大飯原発1,2号機の廃炉を決めました!
これを報じた日経新聞の記事の冒頭をご紹介します。

「関西電力は大飯原子力発電所1、2号機(福井県)を廃炉にする方針を固めた。東日本大震災後、小型の原発の廃炉が進み始めたが、大飯原発のような100万キロワット超の大型の廃炉が決まるのは東京電力福島第1原発を除くと初めて。
安全対策の費用が膨らむなか、電力各社はすべての老朽原発の再稼働を前提とせず、大型炉でも採算重視で選別する時代に入る。
大飯1、2号機の出力は各118万キロワットで、廃炉は国内の原発で過去最大となる。関電は福井の地元自治体などと調整を進めており、今秋中にも最終決定する。」

関電、大飯原発2基廃炉へ 採算合わず、大型炉も選別
日本経済新聞 2017/10/17朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO22308200W7A011C1MM8000/

記事にもあるように、この間、老朽原発の廃炉決定が続いてきましたが、100万キロワットを超える大型原発の廃炉決定は福島第一原発を除いてこれが初めてのこと、非常に大きな位置性を持っています。
理由は安全対策費用が拡大して採算がとれないからだとされていますが、本来、明らかにすべきことは、採算が見通せなくなったことも含めて、廃炉は私たち民衆の行動が引き出した成果であるということです。
例えば日経の記事で関西電力の2016年の販売電力量が2010年度に比べて約2割も落ちていることが紹介されていますが、これも「原発を使っている関電の電気を買わないようにしよう」というキャンペーンが効果的になされてきた結果です。

それだけではありません。関西電力や各事業者が恐れているのは訴訟リスクです。
膨大な資産をつぎ込んで原発を再稼働させても、連続する住民の差し止め訴訟の中で、いつ原発が運転を止められてしまうかもしれない。実際、関西電力はひとたび稼働させた高浜3号機を大津地裁判決によって停められています。
この判決自身は上級審で覆され、現在は稼働中ですが、しかし差し止め訴訟はさらに次々と提訴されています。これまた経営判断に大きなインパクトを与えているのです。

反原発・脱原発運動の高揚の中で、原発の安全対策費が高騰したために、事業社が原発から撤退していく事態はすでに世界中で起こっていることです。いや撤退時期を誤ったがゆえに崩壊している会社も現れています。日本の東芝やフランスのアレバなどです。
東芝の場合、アメリカでの原発建設に伴う安全対策費がどんどん上がってしまい、追加費用の責任分担をめぐって建設会社の間で訴訟合戦の泥沼が生じてしまいました。にもかかわらずあくまで原発増設路線を邁進しようとしたため、いたずらに傷口を広げ続けました。
挙句の果てに巨額の赤字を発生させてついに原発建設からの撤退を表明し、最も優秀な半導体部門を売却しての生き残りを策すまでに至りましたが、もはやその売買交渉すらなかなかまとまらず、もがきにもがきつつ崩壊を強めています。
そもそも東芝は福島第一原発の原子炉の多くを設計した企業であり、大きな道義的責任を負っています。にもかかわらずメーカー責任が免責されていることをいいことに、何ら反省もせずに原発拡大路線を走り続け、とうとう会社の崩壊にまでいたってしまったのです。

私たちがおさえておくべきことは、こうした原発からのメーカーの撤退や、電力会社による大型原発の再稼働の断念=廃炉の決定は、安倍経済成長戦略の崩壊をも意味していると言うことです。
ここ数年、福島第一原発の反省を横において、原発を経済成長路線の柱の一つにすえ、自ら「トップセールス」で各国に原発を売りつけようとしてきた安倍首相だったのであり、その行き詰まりが次々と現れているのだからです。

東芝が福島第一原発を作った責任企業であるように、同じく日本中で原発建設を進めてきたのは歴代の自民党政権なのですから、自民党も福島第一原発事故に大きな道義的責任を負っています。
しかし東芝と同じで、安倍政権も自民党も、何の反省もしてきませんでした。それどころか、福島原発事故が、まだ収束などされておらず、内部の放射線値が高すぎてまともな調査もできていないのに「福島の教訓を生かす」と嘘をつき、再稼働を進めてきました。
東京オリンピック招致演説では「福島原発はアンダーコントロールされている」とか「汚染水は完全にブロックされている」「東京にはいまも未来もなんの影響もない」などと世界に向けて大嘘をつくことすらしました。

しかしいくら嘘をつこうと現実を変えることなどできないのです。原発は極めて危険であり、安全対策を少しアップしただけで、どこまでも出費が嵩んで、経済的な採算にも合わないようなものなのです。
しかもそれでもなお、深刻な事故のリスクを消し去ることなどできない。絶対に事故を起こさない原発など作れないのです。だから事業者にとってもお金をつぎ込んでもさまざまな要因から安定的に運転できる保証が得られないものなのです。
にもかかわらず、これだけ原発の危険性と将来性のなさが明らかになっているのに、いまなお原発を経済成長路線の柱に据えている安倍自民党に未来はありません。
実はこの点を日経新聞も指摘しています。以下、引用します。

「国内では震災前に電力の約3割が原発でまかなわれていたが、現在は数%。政府は現行のエネルギー基本計画で、30年の原子力比率を20~22%としているが、現状は大きく下回っている。
実現には関電や九州電力、四国電力の計5基にとどまっている原発の再稼働を30基程度まで増やす必要がある。ただ、運転開始から30年を超えている原発も多く、いずれも近い将来に廃炉か運転延長を申請するかの選択を迫られる。
関電のように採算を精査して大型原発でも廃炉を選ぶ電力会社が増えてくれば、原発比率が低水準で推移し政府の計画達成は厳しくなる。」

その通りです。安倍首相は自分にとって都合の悪いことは一切、認めず、強引に持論を押し通すころを常としてきましたが、それで現実を変えることなどできるはずがない。
それゆえにすでに経済界までもが、政府のエネルギー基本計画にそっぽを向き始めていることがこの記事ににじみ出ています。この間、保守の人々の間からも安倍交代論が出てきているのもまた、こうした経済戦略の破たんに根拠があることもここから垣間見えます。

この点を見据えて、私たちは今回の選挙過程で、あらためて世界的に破たんを強めつつある原発建設を経済成長の軸に据えているアベノミクスの限界と無責任性をきちんと批判し抜きましょう。
安倍政権のもとでは私たちの生活は少しもよくならない。命の安全すらまったく保障されません。このことをさらに訴え抜いていきましょう!

なおこれから僕は京都府北部の綾部市に向かいます。今日も日本共産党の演説会に参加します。午後7時から綾部林業センターにてです!お近くの方、ご参加下さい。