守田です。(20120725 12:30)

僕も常任理事の一人として所属する「市民と科学者の内部被曝問題研究会(ACSIR)」より、「原発事故の影響を受けたがれき等の広域処理に関する提言」が7月20日付けで発表されました。自画自賛ですが、非常によく書けているのではないかと思います。ぜひみなさんに読んでいただきたいと思い、HPに掲載されている文章を全文転載をします。

ちなみに少しだけ楽屋裏の話をすると、この提言は、私たちの会の理事会での討議を経て発信されていますが、細部にわかりかなりの激論を経てきています。私たちの会には、物理学者・化学者・生物学者など、さまざまなジャンルの方たちが参加されていますが、それぞれによって視角が異なり、ときには見解が分かれたりします。また同じジャンルの方の間でも見解が分かれることがあります。

それらの激しいやりとりを見ていると、それ自身がもの凄い勉強になるので、提言が練り上げられる過程そのものをおみせできないのが大変残念ですが、同時に非常に強く実感するのは、放射性物質の挙動について、したがってまたその危険性の実相について、これまで当然にも社会的に解明されてくるべき多くのことどもが放置されてきている現実です。

だからこそ、どうしても推論に頼って考察せざるをえないものも多い。これに対してどういう立場をとるのか、つまりどれだけ推論の介在を許し、あるいはデータ的な実証を必要とするのかということ自身が、科学の中でよって立つジャンルによって微妙な違いがあったりして、一歩外側にいるものからすると、失礼ですが面白い。というか、こうした学際的な論議の必要性、重要性を痛感します。

放射線はまずは物理的に解き明かされるものですが、それの体への作用は、物理的に解き明かされる側面と、生物学的な側面に分かれてきます。生物学ジャンルでも分子生物学的な知見から、医学的な知見までさまざまな知がある部分を重ねつつ、住み分かれて存在していますが、それらがトータルに重なってみえてくるのが放射線の実相です。

にもかかわらずあまりにも多くのことが検討されずに、実証もされずに来ている。なぜでしょうか。このことを詳細に検討すれば原発や原爆の危険性、違法性、非人道性が明らかになってしまうからです。だからこの構造そのものが、内部被曝隠しの構造なのです。そのために多くの学問にすでに確立している「前提」の再措定をしなくてはいけない。あるいはICRP(国際放射線防護委員会)によって作られてきたいつわりの前提の、解体・再創造をしなくてはいけない。

だから今は意見が分かれることが多くある。反対に言えば多くの面で新たに見解を練り上げていかなくてはならないのです。これを国家権力やその関係機関、またこれに追従ばかりを繰り返している既存の科学機関ではなく、市民サイドのイニシアチブで行っていくこと、市民サイドにたった科学者の知見を重ね合わせ、より合わせて、あらたな知見を作り出していくことが本当に今、問われています。今回の私たちの会の提言も、目指すべきものとの関係では本当にささやかですがしかしそのための確かな一歩だと思います。

さらに震災遺物(がれき)の問題などでは、社会的な問題がたくさん入ってきます。その意味では自然科学的領域だけでなく、社会科学的な分野が非常に重要ですし、あるいは震災遺物をどう捉えるのか、それへの被災者の思いをどう感じていくのかなど、文学や芸術が問題にするような領域も大きく含まれてきます。

失礼なことを言わせていただければ、こうした領域については、ともすれば純粋自然科学の中に折られる方には届かない視角も多い。しかもその中には、問題の現実的な処理においては欠くことのできない知見も多くあるように思えます。だからこそ、この作業にはあらゆる立場の方が必要です。まさに市民と科学者が寄り集まって、科学を国家や官僚の手から私たちの手に取り戻す必要があるのです。

その意味で、よりたくさんの方とさらに知見を練り上げたいという思いを書き置いて、みなさんに、以下の提言をお送りしたいと思います。
どうかじっくりとお読みください!

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原発事故の影響を受けたがれき等の広域処理に関する提言
2012年7月20日

市民と科学者の内部被曝問題研究会
理事長 沢田 昭二

目次

はじめに

1.人工放射性物質には特別な危険が
2.公害の原則
3.放射能汚染がれき処理の原則
(1)放射能に汚染された物は「拡散してはならない、燃やしてはならない」
(2)アスベスト等との一括処理はできない(これは複合汚染です)
(3)(バグフィルターの性能を考えれば)放射性セシウム除去能率は低い
(4)(実際上の問題としての)運搬、汚染管理、法律で定められた管理責任免許者
(5)(望ましいがれき処理として) 住民自治に基づく再建計画を
(6)(子孫や地球に恥じない支援)汚染のない地域を保全することが基本
4.市民のいのちと環境を守る誠実な政治を望みます
(1)(棄民政策の数々で)日本はとても野蛮な国になりました
(2)一人一人が大切にされる国とするために

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はじめに

福島第一原発事故後、放射能汚染が全国的に広がっています。住民の不安が高まっているのも当然のことです。そもそも、現行法体系において、「放射性物質及びこれによって汚染された物」は、「一般廃棄物」でも「産業廃棄物」でもなく、「放射性廃棄物」として取り扱うべきものです。しかし、被災地におけるがれき等の除去方針が定まらず施策が遅れることを口実に、国は、がれき処理特別措置法(東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法案)に基づいて、廃棄物の処理について暫定方針を定めました。しかし、がれきの広域処理は、小規模、大規模を問わず、福島事故を全国的に、人為的に繰り返すに等しい行為であり、放射線汚染を拡散し、国民・住民全体にさらなる被曝を強要する危険なものです。このような方策は、世界で確立された公害の基本原則「閉じ込めて隔離する」に反しており、国際法の基本原則に真っ向から違反し、根本的に誤っています。なお、いわゆる「がれき」は、被災された方の遺品類でもあり、現場近くに「埋葬」する心構えで取り扱うことが必要と考えます。しかし、共通に理解できる適切な言葉が見つからないため、「がれき」を使用します。

1.人工放射性物質には特別な危険が
原発事故により原子炉から放出された人工の放射性物質セシウム(Cs134,Cs137)は、自然放射性物質カリウムK40とは同じベクレル数でも生体内での挙動が異なります。人工の放射性物質であるセシウム134,137は心臓、脳、腎臓など重要な臓器に蓄積し、これらを傷つけ健康を破壊します。そのため、放射性セシウムの方が少量でもカリウム40よりも危険です。臓器への取り込まれ方が異なるからです。

人体へ影響が出るセシウムの放射能(ベクレル数)がベラルーシのゴメリ医科大の研究によって明らかになりました。体重1kgあたり20から40ベクレル(Bq)で心電図などに異常が出ます。これは心臓の障害を表し内部被曝にとって極めて重要な知見です。実際、心不全から突然死が起きています。日本でも突然死が心配されます。

このセシウムの蓄積は、子供の体内に半分がとどまる期間(生物学的半減期)を40日として、毎日20Bq摂取すると200日で1200Bqに達し、体重が20kgの子供であれば60Bq/kg、60kgの大人(生物学的半減期70日)でも約30Bq/kgとなり危険域に入ります。それほど大きな被曝影響をもたらすものです。その他、ストロンチウムやプルトニウムなどもがれきに含まれ、内部被曝はいっそう危険です。

2.公害の原則
水俣病はじめ多くの公害の犠牲の歴史の上に得られた公害の原則は「危険な汚染物質を決して希釈して拡散してはならない、閉じ込めて総量で規制すべきである」ことです。これは全ての環境問題の原則です。 

3.放射能汚染がれき処理の原則
(1)放射能に汚染された物は「拡散してはならない、燃やしてはならない」これが人間の命と環境を保護する鉄則です。

①汚染されたがれきを汚染地域外に持ち出すと、生命に危害を及ぼす地域が広がるからです。原発では放射性物質を「封じ込める」ことに務めていたはずが、いったん爆発して外に出てしまうと、これを「拡散させる」、ではいかにも見識が無く乱暴な行為です。

②焼却処理すると2次被害を作り出します。焼却という2次被曝の操作は福島事故の放射能汚染を繰り返すことであり、決して行ってはなりません。

③(汚染地帯のがれき)宮城、岩手のがれきは汚染されています。政府が宣伝する「汚染されていないがれきだけを処理する」というのは事実に反します。海岸のがれきが波しぶきによってより強く放射能に汚染された可能性もあり、これからも汚染が強まる可能性があります。

対象となっている宮城・岩手は高度汚染地域です(文科省汚染マップを見てください。また、それぞれの自治体のクリーンセンターなどの残留灰の放射能汚染度を見れば一目瞭然です。放射汚染地帯にある野積みのがれきには、放射性物質が必ず入っています。

実際は汚染されているのですが、ある限度以下の汚染は「汚染されていないとみなす」というからくりがなされているのです。「汚染されていない」宣伝には空間線量率が提示されていますが、これにはがれきの放射能汚染はほとんど反映されていません。なぜなら、空間線量や表面線量より、内部の汚染物質とその量が問題だからです。

(2)アスベスト等との一括処理はできない(これは複合汚染です)
加えて汚染は放射能だけではありません。アスベストやダイオキシンや重金属他の毒物・劇物が含まれています。それぞれの処理にはそれぞれの専用処理施設が必要です。客観的にみて、もし受け入れるのならば、放射能汚染、アスベスト汚染、ダイオキシン等に対応する焼却炉を作らねばなりません。家庭ごみと一緒に燃やすのは大変危険です。

もしアスベストが含まれていたらどうなのでしょう?
アスベストは溶融処理する必要があり、アスベストの融点は1521℃なので、800℃程度の燃焼温度では溶融できません。汚染ゴミは通常の家庭ごみに混入して焼却されることが計画されているので、放射能汚染とアスベスト汚染の二つだけをとっても、安全な汚染処理はできません。各作業工程で、それぞれ専門の機械を使ってこそ、安全処理ができます。

(3)(バグフィルターの性能を考えれば)放射性セシウム除去能率は低い放射性物質の主成分はセシウムです。一般焼却炉では、800~900℃で燃焼させられた後、煙は温度を約200℃に下げられてバグフィルターに掛けられます。燃焼後のセシウムの状態は定かではありませんが、多様な化合物の形態をとると考えられます。私どもが警戒して考慮しなければならないことは、多様な状態にあるセシウムの、バグフィルター通過温度での蒸気圧です。また、200℃というバグフィルター通過温度でのセシウム除去率です。それに、微粒子を形成しないでガス状でいるセシウム化合物がどれほど存在するかという危険です。これらについての実証的なデータがほとんどありませんが、これらを十分考察し最大限の防護をする必要があります。

「バグフィルター通過後のガスにはセシウムは存在しなかった」というような実験結果は、測定のプロセスと精度に重大な疑義があります。飛灰中のセシウムを計測するのと同じ精度でフィルター通過後のガスを計測しようとするならば、その飛灰の通過時間中(1日中)の全ての放出ガスを検出器に通して測定しなければなりません。発表されたガスの検査は、測定したガス量があまりにも少量で、短時間すぎます。「実験さえすればそれが本当の姿だ」とは決して言えないのです。ずさんな非公開の検査は「過小評価あるいは危険無視」の常套手段であることを恐れます。

煙突から出たセシウムの微粒子は静かな空気中では毎秒0.1mmから1mm程度しか落下しない性質があります。煙突周囲の風がそよ風であっても風速は毎秒数メートルです。ですから放射性セシウムはずいぶん遠くまで運ばれます。危険区域は数十キロメートル~数百キロになります。処理場から遠いところでも危険です。

(4)(実際上の問題としての)運搬、汚染管理、法律で定められた管理責任免許者
私たちは広域処理に絶対反対ですが、万一実施が強行される場合や、実際に取り扱う場合には、少なくとも次の点が考慮されなければならないと考えます。

①運搬・分別・焼却等作業員の安全のためにきちんと汚染防護をする。安全処理ということはそれぞれの専門資格を持つ者がいて初めて、作業する人の健康も、作業上の安全も、市民の健康も防護できます。広域がれき処理は乱暴なやり方だと私たちは表現しますが、処理責任者であるがれき受け入れ自治体はそのような人事配置をし、訓練も行って、市民と作業員の安全に配慮しているのでしょうか?

②放射能に対しては、入口、中間、出口に計測設備を設ける必要があります。たいていの処理場は、この放射能処理施設として設けるべき放射能監視装置を持っていません。必要な装備も持たなくて放射能を含む可能性のあるがれきを処理していいのでしょうか?

③処理を終了した時に施設の内部も清掃処理をする。もしそれをしないと放射能が含まれていないごみを処理するだけで、残留している放射能が漏れだしてしまい、内部清掃には莫大な費用が掛ります。

④灰の処理、溶融金属等の処理、最終処理施設等々、安全対策を施す、あるいは今までの処理方法を変更する必要があります。今まで放射能はないとした前提の処理施設を、放射能が拡散しないように変更する必要があります。住民の安全を言うのならば、そこまで誠意を持ってやらなければなりません。

⑤市民の健康保護、作業員の健康保護、放射能やその他の汚染にそれぞれ対応した処理責任者免許保持者を配置するのが、自治体等の管理者責任です。法治国家として市民と環境の保護に万全を尽くした方法が必要です。すでに阪神淡路大震災で生じたがれきの処理でアスベストによる中皮腫被災者が発生していたということが報じられています。今回も同様にアスベスト被害が発生する心配があります。

(5)(望ましいがれき処理として)住民自治に基づく再建計画を
私たちは被災地のがれきについては、住民が主体になってその地の総合的な再建計画を作成し、がれきの再利用とその処理を考える必要があると考えます。廃棄物としては十分な放射線管理は行われない恐れが強いと思われます。あくまでまずがれきを資源として、放射線の汚染度をきちんと測定することです。発生源でその地域の住民が放射性廃棄物の濃度を測定し、分類し、自分たちの地域の再建計画と共にその処理、利用を考えるということです。

冒頭に延べましたが、「放射能汚染物は、拡散してはならない、焼却してはならない」が原則です。いろいろ知恵を出し合い、理にかなった、方法を採用することが必要です。がれきと言っていますが、被災された方の遺品類です。現場近くに「埋葬」するに等しい心が必要です。

①がれきのまま封じ込める。

②がれきを積む底部をコンクリートで遮断して排水処理をする。

③がれきの上から雨水等が浸透しないように遮蔽をする(雨による放射能汚染の滲出を防ぎ、腐敗によるメタンガスの発生等を防ぐ)。

④植樹による木の根からの放射能物質の吸引を防ぐため、根を深く張る木の植樹はしない(放射性物質が葉や花粉に濃縮されて再び環境汚染をもたらす)。

⑤ ①から④を基本構造として津波対策として、高い堤防や防波丘陵の造成、などに応用する必要があります。

(6)(子孫や地球に恥じない支援)汚染のない地域の保全が基本
国民・住民の「被災地の皆さんの力に何としてもなりたい」、という気持ちは尊いものです。しかし、「広域がれき処理」への協力はしてはいけません。「放射能汚染を拡散してしまう協力」は、将来にわたって子や孫に危害を及ぼす危険を導入することです。人類の安全という観点からは愚かな行為です。被災者と非被災者の両方に、「本当の利益を生み出す人道上に恥じない支援」をすることが大切です。
そのために、次のような視点を持つ必要があります。

①これから何十年も継続する放射能汚染による惨劇を、日本として耐え抜くために汚染の少ない西日本はそのままに保つことが大切です。

②汚染されていない土地で食糧大増産を行い、逆に、汚染地帯では基本的には食用作物は当分の間作らないで、土地の除染処理の研究・除染用作物やバイオ燃料の栽培などによる工夫に徹する必要があります。それを実施して初めて日本の市民の食の安全が保障されます。遊休農地がすぐ役立ちます。遊休農地を整備して、汚染地域の農家を招きましょう。そうすることにより生業の継続できる避難を保障することができます。

③新基準の限度値は極めて高すぎます。今の基準の100分の1程度の低い基準を「食料品」に適用して初めて“人の健康を守る基準”という意味合いが出てきます。
現在、国が採用する基準は市民の健康保護を基本に決めた値ではありません。経済的社会的要因を考慮して決めているのです。具体的に言えば、人の健康を守るために限度値を決めてしまえば、原子力を維持することが出来なくなるので、人の健康を犠牲にした高い値を設定しているのです。

ドイツの放射能汚染防止令を適用すれば、セシウムで8ベクレル/キログラム(おとな)、4ベクレル/キログラム(子ども)です。この程度が健康を守る上で意味のある値となります。人の命が守れる国にしなければなりません。

④避難者の支援や、保養の機会や場所を提供するなど、非汚染地でなければ実施できないこと行うのが、非汚染地の務めです。市民は正道に立つ支援を実行しましょう。

「広域がれき処理」のような国際的ルールを踏みにじる乱暴な、「本質的支援でない『支援』」は行ってはなりません。

4. 市民のいのちと環境を守る誠実な政治を望みます
(1)(棄民政策の数々で)日本はとても野蛮な国になりました。
これ以上野蛮になってはなりません。政府は原発爆発事故以来、どのようにして市民を守ってきたのでしょうか。

まず、汚染物処理基準はどうでしょう。
①以前は、原子炉等規制法に基づく基準をIAEA(国際原子力機関、国際的な原子力推進体)の基準100ベクレル/キログラムとしていました。事故の際に(2011年6月)突然それを放射性物質汚染特措法により8000ベクレル/キログラムと80倍に引き上げました。さらに管理処理できる場合は10万ベクレル/キログラムまで引き上げました。

②公衆(一般市民)の年間被曝限度(これ以上被曝すると政府の責任で防護しなければならない基準)を、1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げました。「日本人は事故の時は放射線に対する抵抗力が20倍になる」のでしょうか。

③チェルノブイリ周辺国(ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)は、住民の保護基準を年間1ミリシーベルトで「移住権利(住んでいても良いが移住しようと思えば、国が保障する)」、5ミリシーベルトで「移住義務(危険だから移住しなければならない)」地域に設定しています。日本のこれに相当する基準は何と20ミリシーベルト(計画的避難区域)および50ミリシーベルト(避難区域)です。日本の住民はチェルノブイリ周辺国より20倍も放射線に対する抵抗力が高いのでしょうか。とんでもありません。ひとえに、東電の賠償責任を軽減することと政府の責任を軽減するためだけなのです。現在1ミリシーベルト以上の汚染状況は、北は盛岡から、南は東京全域、千葉の半分を含む広大な面積です。5ミリシーベルト以上の汚染は福島県のほぼ全域を含み、茨城、栃木や、東京などでもホットスポットが多数含まれる土地です。チェルノブイリ周辺3カ国では「住民は住んではいけません」と保護されているのを日本は逆に避難から戻りなさいと言われているのです。

④主食の米の放射能汚染限度値は500ベクレル/キログラムと極端に大きな値が設定されましたが、ドイツの100倍程の高さを設定しているのです。日本政府は「基準以下ならば安全」と宣伝していますが、そうではありません。汚染食品を食べることにより、チェルノブイリ周辺では大量の健康破壊が起きています。チェルノブイリ周辺では「貧しいために人々は汚染地帯の産物を食べざるを得なかった」のです。現在日本では、政府の強制によって汚染食品を全日本人が食べさせられています。政府はチェルノブイリ周辺の健康被害を率直に認め、正確な実態を国民・住民に示さなければなりません。

⑤爆発直後、安定ヨウ素剤を政府は蓄えがあるにも拘わらず与えませんでした。何ということでしょうか! 人の命は切り捨てられ踏みにじられているのです。

(2)一人一人が大切にされる国とするために
子や孫に胸を張れる、主権者を守る品格のある政治を行う必要があります。がれきの広域処理は、人の命と環境を守るためでしょうか。いや全く逆で、市民の生活の場に汚染被曝を強制し、人の命と環境を犠牲にして、大企業の東電・原子力産業と政府の責任を可能な限り少なくし、ゼネコンや流通業者など関連産業の利益を謀ろうとするものです。そして、被曝を当然のこととする社会的風潮を強権的に醸成し、今後も原発事故が起こることを前提として原発を運転し推進する方針を正当化しようとするものです。さらには、劣化ウラン弾や核バンカーバスター爆弾の使用など、アメリカの核戦略の下に、実際に戦える核戦争の準備を、米日協同で進めようとする一環であるとしか考えられません。

憲法の基本精神である「個の尊厳」、とりわけ25条で保障されている健康で文化的な生活を保障している生存権に対して国は大きな責任があります。がれきの広域処理は根本的に「人のいのちと環境を守る」ことを破壊する行為です。決して国家がしてはなりません。

国民・住民が自らの命を守るためには、知恵をつけ力を合わせ、このような国のあり方を変えなければなりません。私たちは半永久的に続く放射線汚染の惨劇を避けるために、「個の尊厳」を基本にする憲法を持ち、国の主人公として大切にされなければならない存在です。自分もお互いも大事に尊重される、理にかなった方法を取って、がれきも処理しましょう。「明晰に、楽天的に、最大防護を!」が日本の市民が生き残れるためのスローガンです。

私たちは半永久的に続く「放射能汚染のもたらす惨劇」からの防護を真剣に、大局的な施策として実施すべきだと考えます。とりわけ、放射能その他に汚染されているがれきを広域処理することは、基本的人権を守る憲法と地方自治の基本原理に反し、放射能汚染の処理原則に反することとして、受け入れないよう全国民・住民に訴えます。

http://www.acsir.org/info.php?14