守田です。(20120726 22:00)

昨日25日夜半に、京都市の震災遺物(がれき)受け入れが見送られたことが京都新聞に発表されました。京都市は宮城県内からの受け入れを検討していましたが、同県での処理のめどがたったため、環境省からの市への要請がなくなったとのこと。これで京都での焼却の可能性は当面はなくなりました。

京都市民にとっては朗報です。単に「処理のめど」だけではなく、多くの方たちが環境を守ろうとして懸命に行動したことによって環境省が後退したことは明らかで、市民による直接行動の成果に他なりません。このことは、同じく25日にこれを報道した毎日新聞の記事にも次のように記されています。

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宮城県は当初、可燃物についても全国に受け入れを要請していたが、遠方での処理のコスト高指摘や、受け入れ方針を示した北九州市で反対運動が起こったことを踏まえ、方針を転換した。

引用はここまで
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毎日新聞は、環境省に考慮してか、反対運動に考慮した主体を「宮城県」としていますが、ただしくは環境省と宮城県です。それも環境省の方に大きなウエイトがあります。

しかしただこれだけで喜ぶことはできません。共同通信から配信された記事に次のように書かれているからです。(引用は日経新聞より)

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受け入れ先が未定の広域処理量を見直し、全体で5月時点の114万トンから100万トンに減少。うち可燃物と再生利用分は県内処理の加速などで計57万トンと約4分の1圧縮が進み、ほぼ処理の道筋が付いた形となった。

不燃物の広域処理量は43万トンと4万トンの増加。処理にめどが立っていない状況に変わりはないとして、引き続き遠方の自治体を含めて受け入れ先を探す。

引用はここまで
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つまり問題がひとまず決着がついたのは「可燃物」に関してのみであり、「不燃物」に関してはまだ残っているということです。毎日新聞の記事にも「不燃物は全国で引き続き受け入れ自治体を探す」とこの点が記されています。

また全ての「広域処理」計画が白紙になったのではなく、大阪市など、すでに話が進んでいるところでの受け入れはそのまま行われようとしており、そのことで大阪湾での焼却灰の埋め立てなどが認められると、再び関西の広範な地域で受け入れの話が再浮上してくる可能性があります。その意味で関西的には、大阪のことをわがこととして捉え、危険で理不尽な広域処理反対の声をさらに継続してあげていく必要があります。

さらに、それよりも何よりもすでに、青森、山形、福島、茨城、東京ですでに受け入れが行われ、繰り返し焼却が行われているわけで、このことが本当に深刻です。これまでも何度も述べてきましたが、これらの地域では、放射性物質を含んだ廃棄物の焼却が、震災遺物だけでなく、一般廃棄物の焼却を通じても行われており、それを考えると、西日本のことだけで一喜一憂していることはとてもできません。

どの地域での焼却にも等しく反対ですが、せっかく東北の中でも汚染が少なく、東北再生の一大拠点となりうる青森県、山形県に、せっせと放射性廃棄物が運ばれていることに本当に胸が痛みます。いや細かく見ていくと、しばしば放射性物質は、当該の県、地域の中でも、より汚染の少ないところに運びこまれようとしてることが見られます。汚染を均一化しようとしているのではと疑わざるをえなくなる処置です。

これらに踏まえて、私たちは、放射性物質の焼却処置そのものの危険性について、再度、大きく声を上げ、とくに東北・関東での被曝防止、軽減措置をさまざまに重ねるべきことを訴え続けていく必要があります。繰り返し、繰り返し訴えを続けていくことは大変ですが、全国で互の立場を思いやりあい、すべての人を放射線から守る観点で声を上げ続けましょう。(疲れた時は、順番に、ちょっとずつ休みながら、長く、声を上げ続けましょう・・・。)

こうした点については、今度の日曜日(29日)に、京都市右京区の「北部クリーンセンター」関連施設の「やまごえ温水プール2階会議室」でお話させていただきます。「北部クリーンセンター」は、京都市で震災遺物の受け入れを行った場合、焼却が予定されている場で、このことを憂いた周辺自治会の方たちがお話の場をセットしてくださいました。

この場でも今回のこの決定にまつわる分析を行い、焼却処理の危険性を訴えていきたいと思います。お近くの方、ぜひご参加ください。

以下、講演会の案内(地元で回覧されているもの)を先に貼り付け、そのあとに、京都新聞、毎日新聞、日経新聞の記事を示しておきます。

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第二回
☆学習会のお知らせ☆
平岡第六自治会
平六環境を守る会

7月29日(日) 午後1時30分~
やまごえ温水プール2階会議室
(北部クリーンセンター関連施設)

☆フリーライター 守田敏也氏のお話
*放射線内部被曝について
*「がれき焼却」の問題点
*放射能問題をいかに生きるか 等々

フリーライター
守田 敏也さんの紹介

1959年生まれ。京都市在住。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている 。ナラ枯れ問題に深く関わり京都大文字山での害虫防除なども実施。原子力政策に関しても独自の研究と批判活動を続け、東日本大震災以降は被災地も度々訪問。ボランティアや放射能除染プロジェクトなどに携わっている。2012年4月より、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」常任理事に就任。同会の広報委員長も務めている。

参加費無料です。関心のある方是非ご参加ください。

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京都市、震災がれき処理見送り
2012年07月25日 23時00分

東日本大震災で発生した宮城県の震災がれき処理を検討していた京都市は25日、受け入れを見送ることを決めた。同県で処理のめどが立ったため、同日、環境省が市に協力要請しない方針を伝えた。これにより京都府内でがれきを受け入れる自治体はなくなった。

宮城県が同日示した災害廃棄物処理実行計画で、可燃物の協力要請について現在調整中の自治体と、すでに受け入れている自治体(青森、山形、福島、茨城4県と東京都)に限るとし、新たに要請しない方針を決めた。

京都市は市内3カ所の焼却施設で受け入れに向けて試験焼却する方針を示し、5月下旬に処理の安全性を検証する専門家委員会を設置。宮城県内のがれき集積場や焼却施設を視察していた。

門川大作市長は「受け入れの必要性はなくなったと考える。今後とも一日も早い復興を願い、幅広い被災地支援に取り組む」とのコメントを発表した。

京都府内では、舞鶴市と京丹波町もがれき受け入れに向けて準備を進めていたが、岩手県でもすでに処理のめどが立っており、環境省が今月3日、年間数万トン規模の処理能力がある自治体を除き受け入れを見合わせるよう要請していた。
http://kyoto-np.co.jp/top/article/20120725000139

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可燃災害がれき:5都県・1市以外に協力要請せず 宮城県
毎日新聞 2012年07月25日 21時01分

東日本大震災で発生し広域処理が必要とされている災害廃棄物(がれき)について、宮城県は25日、可燃物は既に受け入れ表明している5都県・1市以外に協力要請をしないことを明らかにした。木くずなど再生利用分は東北、関東地方で、不燃物は全国で引き続き受け入れ自治体を探す。

県によると、7月時点での広域処理必要量は100万トンで、このうち可燃物は22万トン、不燃物は43万トン。可燃物は、県内に加え、青森▽山形▽福島▽茨城▽東京の5都県と北九州市での処理拡大で完了させたい考え。

宮城県は当初、可燃物についても全国に受け入れを要請していたが、遠方での処理のコスト高指摘や、受け入れ方針を示した北九州市で反対運動が起こったことを踏まえ、方針を転換した。

一方、埋め立て処分が必要な不燃物は受け入れを申し出る自治体がなく、処理のめどは立っていない。【宇多川はるか】
http://mainichi.jp/select/news/20120726k0000m040064000c.html

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宮城県、可燃がれき処理の委託先増やさず 交渉中自治体に絞る
日本経済新聞 2012/7/26 0:27

宮城県は25日、東日本大震災で発生したがれきを県外自治体に要請する広域処理について、可燃物や再生利用できる分は交渉中の自治体との協議に力を入れ、新たな要請先を増やさない考えを示した。県内市町村が参加する協議会で処理実行計画2次案として公表した。

受け入れ先が未定の広域処理量を見直し、全体で5月時点の114万トンから100万トンに減少。うち可燃物と再生利用分は県内処理の加速などで計57万トンと約4分の1圧縮が進み、ほぼ処理の道筋が付いた形となった。

不燃物の広域処理量は43万トンと4万トンの増加。処理にめどが立っていない状況に変わりはないとして、引き続き遠方の自治体を含めて受け入れ先を探す。〔共同〕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2503O_V20C12A7CR8000/