守田です。(20161016 23:30)

このところ島根原発の取材を踏まえて沸騰水型原発の特有の危険性をレポートしてきましたが、その沸騰水型原発の柏崎刈羽原発を抱える新潟県の知事選で、同原発の再稼働を認めない前泉田知事の路線継承を掲げた米山さんが当選しました。素晴らしい!
7月に行われた鹿児島知事選での三反園さんの当選に継ぐ快挙です。これは全国で原発再稼働反対の声をあげて活動しているみなさんの努力が生み出したものに違いありません。
そのうちの一つである京都駅前にある関西電力京都支社前で毎週金曜日に行わている抗議行動に先週の14日に参加してきましたが、この日で225回を数えるとのことでした。
同じように全国で電力会社前などの抗議行動が200回を超えています。不屈の行動です。この行動が鹿児島県での三反園さんの勝利に継ぐ、今回の選挙結果をもたらしたのです。

私たちはこの民衆の力をさらに成長させていきましょう。そのために三反園さん、米山さんに全国からエールを送り、支え続けましょう。
すでに川内原発1号機は10月6日午前6時過ぎに定期点検のために停止しています。再稼働は12月8日にも予定されているそうですが、原発に厳しい態度をとり続けている三反園さんが合意しなければ困難です。
米山さんの勝利は、保守王国と言われる鹿児島県の中で猛烈に吹いているであろう再稼働に向けた逆風の中で奮闘している三反園さんを大きく勇気づけたことでしょう。
だからこそいま、私たちはより大きな声をあげて、当選したばかりの、再稼働に立ち向かおうとしている知事たちの背中を押していく必要があります。ぜひみなさん、電話、FAX、メール、その他あらゆる手段で三反園さん、米山さんへの激励を続けましょう。

僕にとっては、今回の米山さんの当選は、島根原発を取材して、沸騰水型原発の特有の危険性とあらためて向い合っている時だけになおさら嬉しいものがありました。
ここで米山さんをさらに応援するためにもみなさんと柏崎刈羽原発の構造をしっかりとおさえておきたいと思いますが、まずみなさんに知っていただきたいのは、この原発は合計で7つの原子炉を有し、総合出力で世界最大を誇る原発だと言うことです。
もっとも現状ではすべての炉が停まっているわけで、世界最大であるがゆえに反対に世界の原子力村に与える影響も甚大なのです。何せ、世界で一番ウランを買って使ってくれる原発が動いてないからです。
このためウラン燃料製造の世界4大会社の一つだったユーゼックが2014年3月5日に倒産しました。それほどにこの原発が停まっていること、より正確には私たち民衆が停めている影響は大きいのです。

さて原子炉の構造からみると柏崎刈羽原発の特徴はどのようなものでしょうか。この原発は1号機がマークⅠ型、2号機から5号機までがマークⅡ型改の格納容器を使っています。
さらに6、7号機が前回の記事で、その危険性を指摘した改良沸騰水型原子炉(ABWR)が採用されています。
2007年7月にこの原発を中越沖地震が襲いましたが、そのときに動いていたのは2、3、4、7号機。緊急停止には成功しましたが、その後、2~4号機はそのまままったく動いていません。9年3カ月にもなりますからもはや機械としてダメでしょう。
これに対して1号機と5~7号機は地震から数年経って営業運転を開始しましたが、これらも福島第一原発事故を経て停止中です。

さて柏崎刈羽原発の固有の危険性はなんでしょうか。まずは1~5号機までがマークⅡおよびその改良型を使用していることです。再びアトミカの図で構造を確認しておきましょう。
沸騰水型原子炉の変遷
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02010101/10.gif

実はこのマークⅡはその前のマークⅠよりも恐ろしい危険性を持っています。図から明らかなように圧力容器の真下にプールがあるからです。
おそらくは原子炉内でメルトダウンからメルトスルーに発展することなどあり得ないと思われた時にこのような設計がなされたのでしょうが、ここでもし核燃料が溶けだして、圧力容器下部を突き破るメルトスルーが起きたら破局的なことが起こります。
2000度前後の燃料デブリが直接、プールの中に落下するからです。そうすると一挙にプールの水が蒸気化し、急激に体積が大きくなって爆発を起こしてしまいます。水蒸気爆発です。
そうしたら格納容器は内側から崩壊し、内部の核燃料の多くが環境中に飛び出してしまいます。福島原発事故をはるかに上回る破局がもたらせられます。
僕にはなぜマークⅠ型からⅡ型にステップアップしたときに、Ⅰ型よりも圧倒的に危ない構造にこの原子炉が「進歩」したのか合理的な理由、ないしメーカーが合理的だと思っていた理由が分からないのですが、ともあれ極端に危ないことはよく分かります。

それでは6、7号機ではどうでしょうか。東京電力が再稼働を目指しているのはこの二つのABWRの原子炉ですが、前回、つぶさにみてきたようにこの原子炉はそれ以前のものより格納容器内の空間の体積もプールの容量も相対的に少なくなっています。
出力を大きくするという経済性のみが優先されて、安全マージンが削られてしまった結果であって、出力が大きくなっている分だけ、より危険性も増しています。
そう考えると帰ってマークⅠ型の方が、他の炉よりも安全マージンが高いようにすら見えてくるのですが、そのマークⅠ型を1号機から5号機まで使っていたのが福島第一原発であり、そこであれほどの放射能大量漏洩事故が起こったのです。
これらを考えるならば柏崎刈羽原発1~7号機が極めて危険性の高い原発であることがよく見えてくると思います。

さらに重要なのはこの原発を中越沖地震の際に、設計上の想定を大きく上回る地震が襲ったことです。
それ以降、停まったままの3号機をみるならば、建屋1階で2058ガル(想定834ガル)、地下3階で581ガル(想定239ガル)、3号機原子炉建屋基礎で384ガル(想定193ガル)が観測されています。
どれも設計基準を大幅に上回る揺れでした。その大揺れが原発に与えたダメージが全面的に補修されたとはとても言えないでしょうし、なおかつ同原発が再びこうした揺れに襲われることがありうることもこの数値は示しています。
2007年の地震の時には、幸運にも制御棒が炉心に入って運転が停まりましたが、次のときに同じように停まる保障などまったくない。なんといっても地震の揺れが設計基準を倍以上も上回っていたからです。

ちなみに前知事の泉田さんはこのような沸騰水型原発の危険性を実によく把握して、再稼働反対を唱えられていました。とくに泉田さんが強調されていたのは格納容器の崩壊を防ぐと称したベントは認められないと言うことで、次のように語られていました。
「フィルターベントは放射能を放出する装置ですから、健康に影響ある被曝をするような装置はOKできません。
したがってこれから避難計画との整合性や機器の性能もチェックする。つまり住民の健康が守れないということが明らかになれば、今回の(東電の再稼働に向けた・・・守田注)申請の承認は無効です。
県の了解を取れない限り、ベントの運用ができないということは、稼働できないということなんです」。・・・実に鮮明です!

今回の選挙はそもそもこの前泉田知事が、新潟日報などの執拗な県政糾弾攻撃を受け続け、再選に向けた出馬を断念するという事態を受けて行われたものでした。
自民党、公明党が稼働容認の候補を擁立したわけですが、先にも述べた如く、この背景に世界の原子力村の熱いまなざしがあったことは間違いありません。
これに対して米山さんは、共産党と自由党(旧生活の党)、社民党の推薦を受け、自由投票にした民進党の事実上の支援も受けながら、与党勢力、あるいは世界の原子力村の思惑を打ち破って当選したのです。痛快です。

この流れをさらに強めるために、みなさんと一緒に原発の危険性の構造的把握を続けていきたいと思います。

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連載1300回越えに際して、カンパを訴えています。
三反園さんや米山さんを支えるためにももっと行動力を増して、各地を訪ね歩きたい思っています。今回はそのための資金提供を訴えます。
よろしくお願いします。

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