守田です。(20150408 10:00)

みなさま。表題に示したように福島第一原発2号機格納容器の温度計が異常な上昇を表示しています。
以下をご覧下さい。

ふくいちプラントパラメータモニタ
http://fukuichi.mods.jp/?p=24&fname=p02.csv&cnt=60&update=%E6%9B%B4%E6%96%B0

マスコミでは毎日新聞が報じています。
短い記事なので全文を引用します。

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福島第1原発:2号機格納容器内の温度計が異常な上昇表示
毎日新聞 2015年04月07日 21時57分
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20150408k0000m040117000c.html

東京電力は7日、福島第1原発2号機格納容器内の温度計が異常値を示したことを明らかにした。
3日午前5時に20.9度だった温度が同11時に70度に急上昇。
5日午後5時には88.5度まで上昇したが、2号機の別の温度計は平常値を示しており、東電は「原子炉の制御に影響はない」として、原因を調べている。【鳥井真平】

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何が起こっているのかまったくつかめません。しかし温度計が異常値を示している限りまずは異常が起こっていると考えて身構えるべきです。
とくに福島第一原発により近い方々は、気をつけて今後の推移を見守っていただきたいと思います。
何度もこういう注意を重ねて、もう本当にお疲れだと思いますが、原発はいつ何時、どこがどうなるか分からない状態です。
というよりすでに激しく壊れていて、しかもどうかどうなっているかはっきりとは分からない状態なのです。だから万が一に備えた被曝防護をそれぞれで考えられてください。

そもそも東電のこの発表の仕方には大きな危険性が孕まれています。記事もそれを無批判的に反映させてしまっています。
「上昇が表示された」という言い方は計器の故障も視野に入れた言い方です。実際、その可能性も十分にあり得ます。しかし一方で計器が危険値を表すと「故障」を疑うのは本来とても危険なことなのです。
異常値が出てたらまずそれを現実として対応を考え、その中で計器の故障が分かったら対応を解除すれば良いし、必ずその手順でことを進めるべきなのです。

そもそも東電は「2号機の別の温度計は平常値を示しており」だから「原子炉の制御に影響はない」と語ったとされていますが、どうしてこの別の温度計が故障している可能性を考えないのでしょうか。
現段階で推論しうるのは、どちらかの温度計が故障している可能性があるということです。しかし実際のところはまだ分かっていないのです。
だからこそこの段階では「原子炉の制御に影響がないかどうか分からない」し、何らかの異常が起こっている可能性をこそ考えなければならないのです。
にもかかわらず、「原子炉の制御に影響はない」と決めた上で、「原因を調べている」と述べています。もう計器が故障していると決めつけているのです。

東電のこの姿勢は災害時に人がかかりやすい「正常性バイアス」の典型例です。
「これ以上、事故が拡大して欲しくない。もう大変なことはごめんだ」「危機と発表して批判を受けたくない」という心象が、「起こっているのは計器の故障であって危機は到来していない」と初めから思い込んでしまうことを促進しています。
そしてとてもやっかいなのは、実際にこれまでも何回も計器の故障が繰り返されてもいることです。

だからこそ危険なのです。これではせっかく計器が異常を知らせてくれても、「あ、また故障だ」と考えて、事態を把握し損ねてしまう可能性が高いです。
今回とてもまだ何が起こっているか分からないのに「原子炉の制御に異常はない」と決めつけてしまっている。そこにこそ巨大な危機があります。
繰り返しますが、事態がはっきりするまで、危機の可能性を考えた対応をすべきです。だからみなさん。ぜひ身構えていてください。

正常性バイアスのことを論じている「災害心理学」では2003年に韓国の大邱であった地下鉄火災事件のことがよく引き合いに出されます。
放火によって駅に停車中の列車が燃え始めたのですが、このときに反対側の線路から近づいてきた乗客満載の車両を、駅の運転指令部が止めることなく構内に入れてしまったのです。
このためこの車両にも火災が移って大火災になり、結局200名近い方が亡くなってしまう大惨事になってしまいました。

実はこの時も、数日前に駅の火災報知器が誤報を発してしまっていました。そのため駅の運転指令部が、実際に火災が起こっているのに「誤報ではないか」と考えてしまったことが列車を入れてしまった要因の一つでした。
その意味で、計器が故障を繰り返す環境はそれ自身が大きな危険性を孕んでいるともいえます。
プラントそのものが大崩壊している福島第一原発の現場では、計器が故障を繰り返すことそのものはもはやむを得ないでしょうから、このような状態こそ、大災害を生みやすいことをしっかりと現場で意志一致し続けるべきです。

そして計器が異常を示した場合は、何度でも最悪の事態を想定して身構える必要があります。
もちろんそれは携わっている人々を疲弊させます。しかし疲弊の重なりから、「大丈夫だよ。またメータの故障だよ」と安易に判断するようになってしまうことが危機を形作ってしまうのです。
以上から、ぜひこの事態への備えを強めましょう。みんなの力でウォッチを続けましょう。