守田です(20150322 22:30)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。
今回は最後の五つ目、これまで述べてきたすべてと連動しつつ、憲法9条と平和を守ることについて述べたいと思います。

誰もが感じているように、今、私たちの国は大変な岐路に立っています。
戦後70年、なんとか守り通してきた軍隊に戦争をさせない国、その意味で平和な国として歩んできた足跡が守れるかどうかの瀬戸際にあります。

原発再稼働を推し進めようとしている安倍政権は、戦後のさまざまな遺産を否定し、足蹴にし、この国を戦争ができる国へと変えようとしています。
その姿はまるで明治維新後に、西洋の暴力に追いつこうとし、遮二無二「列強国」入りを目指した過去の日本の姿を彷彿とさせるようです。
実際、安倍首相べったりの三原じゅん子議員からは「八紘一宇こそ日本の理想だ」と、中曽根元首相ですら否定したアジア侵略のスローガンが飛び出したりしてきています。

「慰安婦問題」のもみ消し発言は、ヘイトクライムを繰り返す「ネトウヨ」の元締めそのもののスタイルを貫く安倍政権の姿、それを止められない与野党の姿に多くの方が胸を痛めていると思います。
多くの人々がこの国の未来に不安を感じ、失望を深め、中には放射線被曝のことと兼ね合わせて、海外への脱出を考えている人々もおられるようです。
他方で、安倍首相の好戦的なあり方が、その海外ですら日本人の安全性を損なわされており、出口なしのひっ迫感を感じておられる方も多いのではないでしょうか。

僕が述べたいのは二つの点です。一つにそんなに悲観することはない!ということ。絶対的多数派に見える安倍政権は実は少数者の支持の上に成り立っているのでしかありません。この構造を見据える必要があります。
しかし他方でもう一つ、とても重大なことは日本はこれまでもけして平和国家とは言えなかったこと、アメリカの戦争に何度も手を貸してきた国であり、それに多くの国民・市民が無自覚に従わされてきたのだということです。
その意味では実は平和は守るものというよりも取り戻すものだと僕は思います。安倍政権にいたる歴代自民党政権が良かったわけではけしてないことを反省的に捉えて、私たちは新たな歩みを強めなければならないと思うのです。

まず昨年末の総選挙について振り返ってみましょう。
選挙区の得票は自民2546、民主1192、維新432、公明77、共産704、次世代95、社民42、生活51でした。単位は「万票」です。
パーセンテージでは自民48.1、民主22.5、維新8.2、公明1.5、共産13.4、次世代1.8、社民0.8、生活1.0です。
議席数は自民222、民主38、維新11、公明9、共産1、次世代2、社民1、生活2です。
議席のパーセンテージは自民75.0、民主12.9、維新3.7、公明3.0、共産0.3、次世代0.6、社民0.3、生活0.6となっている。

こうして数字をしっかり見てみると、小選挙区制が明らかに民意と議席数が大きくずれている歪んだ制度であることがわかります。
自民党は約5割の票で75%、222議席の大量議席を獲っている。対して自民党の四分の一強の票を獲っている共産党の議席はなんと0.3%の1議席。これはあまりに酷い。
今かりにこの票を、比例区と同じように単純に票と議席を対比させていくと、本来は次のような議席数の方が民意に近いことが分かります。
自民142、民主66、維新24、公明4、共産40、次世代5、社民2、生活3。

さて民意がより直接に反映されやすい比例区についての得票を見てみましょう。
自民1766、民主976、維新838、公明731、共産606、次世代141、社民131、生活102でした。これも単位は「万票」です。
パーセンテージでは自民33.1、民主18.3、維新15.7、公明13.7、共産11.4、次世代2.7、社民2.5、生活1.9です。
議席数は自民68、民主35、維新30、公明26、共産20、次世代0、社民1、生活0でした。
議席のパーセンテージは、自民37.8、民主19.4、維新16.7、公明14.4、共産11.1、次世代0、社民0.5、生活0でした。
やや自民に有利であり、次世代と生活に議席があった方が良かったとは言えますが、概ね得票率と議席率が同等のレベルにあり、民意のストレートな反映が示されています。

選挙区と比例区を見て一目瞭然なのは、公明党がこの小選挙区制度の歪みを最もうまく活用して独自の位置を獲得していることです。
選挙区では自民党の得票は2546万票、しかし比例区では1766万票まで落ちてしまいます。差の780万もの票はどこにいってしまったのでしょうか。
反対に公明党は選挙区では77万票、比例区では731万票を獲得しています。その差は654万票です。ぴったりは符号しませんがこの選挙区と比例区の公明党票の差が自民党に流れ込んでいるのです。

そうなるといわば純粋な自民党の支持票は1766万票しかないことになる。33.1%です。
そもそも選挙の投票率そのものが戦後最低だった前回の59.32%をすら大きく下回る52.66%だったのですからこの二つの数字を掛け合わせて自民党の支持を割り出すと有権者のなんと17.4%でしかないことがわかります。
それで議席の四分の三を占有しているのです。実際には有権者の六分の一の得票で四分の三ですからあまりに民意との開きがあります。
すべてを比例区だけで見ることはできないかもしれませんが、ともあれ自民党を支持しなかった人は有権者のうちの少なく見積もっても8割にもなることを私たちはしっかりと見据えておくべきです。安倍政権が真の多数派なのでは絶対にありません。

同時につかんでおくべきことはこの選挙制度の中での公明党の戦略が、結果的に自民党の著しい劣化を生みだしているということです。
何せ約700万ぐらいとみられる票が、自民党に流れ込み、各議員にまわされるのです。議員たちがそれぞれで訴えていることなど関係なしにです。
議員にとってこの膨大な票を回してもらう相手は公明党ではなく、票をいわばまとめてもらう自民党執行部です。だから自民党の議員は必然的に有権者よりも自民党執行部の顔色だけを窺うようになる。当然、執行部批判などは論外です。

このことが党内における首相、党執行部の力を強烈なものにしているわけですが、そのことで自民党は実はまったくものを言えぬ党になってしまっている。ようするにもっとも独裁化と空洞化が進んでいるのは自民党内部なのです。
そのために安倍首相がどんなにひどい常識離れしたことを言ったり、嘘をつき続けても、諫めることができなくなってしまっている。諫めるどころかおべんちゃらを言った方が決定的に有利になってしまっている。だから「八紘一宇」発言なども飛び出す。
しかしそのことで自民党はどんどん脆弱化しているのです。選挙でも鍛えられないし、政策でも鍛えられない。おべんちゃら議員ばかりが増えてしまっているからです。

このため自民党はどんどん民意と離反しつつ、内部にも空洞化を抱えて、どうともならない構造にはまりつつあります。本質的にはまったく強くなどなっていない。むしろ戦後もっとも弱体化していることをみすえるべきです。
こんなときに思い起こされるのは次の言葉です。「陰極まって陽に転ず」・・・。あるいは「驕る平家は久しからず」・・・。道義的な正義性にまったく欠ける自民党、また現在の与党連合の支配はけして盤石ではありません。
あまりに非道であるために、必ずいつか崩れ始めます。しかも一度崩れ出したら、誰も支えようとはしないでしょう。そもそも支えるべき信念がないからです。このことを見据えて、私たちは民衆行動を強め、戦争政策と対決していけば良いのです。

続く