守田です。(20140123 16:30)

福島3号機の建屋の床にものすごい濃度の放射能汚染水が流れていることが、18日に東電によって発表されました。
ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が、なんと1リットルあたり2400万ベクレルも確認されています。
汚染水は、セシウム134も70万ベクレル、セシウム137は170万ベクレル確認されており、あわせて240万ベクレルのセシウム値を示しています。

これを報じたFNNのニュース映像をご紹介しておきます。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00261568.html

最も重要な点は、この汚染水の正体、どこから流れてきているものかが分からないことです。
つまり福島3号機の中で、何が起こっているのかよく分からないということ。当然にもどのような危険があるのかもつかめていないということです。

これに対して東京電力は、3号機に投入している冷却水の温度が約7度であることに対して、この汚染水の温度が約20度であることから、核燃料を冷やした後の汚染水が、格納容器から漏れているという分析を発表しています。
残念ながら、ほとんどのマスコミが、この東電の分析をそのまま伝えているだけです。読売新聞などは、さらに東電の言葉を以下のように付け加えて、あたかも問題が小さいかのように表しています。
「これまで3号機の建屋地下では、汚染水がたまっていることが確認されているが、1階で見つかったのは初めて。1階では、廃炉に向けて、がれき撤去が進められているが、ロボットを使った遠隔作業のため、当面、障害になる恐れは小さいと説明している。」

これに対して、より優れた分析を出しているのは東京新聞です。東京新聞はまず問題をいかのように捉えています。
「建屋の床には本来、水がないはずで、これまで判明していない何らかの異常があることの証しだ。」

その通り!問題は、これまで判明していない何らかの異常がある可能性が極めて高いことです。

その上で、東京新聞は、以下のように分析を続けています。

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原因として考えられるのは、冷却水が格納容器内の核燃料にまで届かず、途中で漏れていること。雨が建屋に流れ込むことも考えられる。しかし、どちらの水だとしても、床を流れる汚染水ほどの放射性物質を含んでいない。最近は、まとまった雨も降っていない。
使用済み核燃料プールの水は、セシウム濃度がほぼ一致する。問題は位置が離れていること。汚染水が見つかった場所からみると、プールは格納容器の向こう側になる。プールの水位にも大きな異常はない。
ほかに可能性があるのは、溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度汚染水が、格納容器の損傷部分から漏れていること。東電はこの見方を取っている。しかし、容器からの汚染水なら、もっと高濃度の放射性物質を含んでいるとみられる。
しかも、水は隣接するタービン建屋側から格納容器に向かって流れている。格納容器からの漏出なら、流れは逆のはずだ。

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優れた分析だと思います。ただし、きちんと分析する気になれば、おのずと見えてくるような分析でもあります。他の新聞社がこの当たり前の作業を放棄してしまっていることが問題です。

ポイントは、確かに床の汚染水が、冷却のために投入されているものよりも高温であることを考えると、核燃料の持つ熱を何らかの形で吸収していることが考えられるわけですが、しかし流れが、タービン建屋から格納容器方向である点です。
これが、格納容器からのものとは、推論しにくくさせている。どこか他から、水が回っている可能性や、まったく把握されていないところの破断によって、汚染水が出てきている可能性もあるわけです。
ともあれ判明していない異常があるのです。にもかかわらず、東電は「当面、障害になる恐れは小さい」と説明しており、それを読売新聞がそのまま垂れ流しています。

私たちがつかまねばならないのは、福島3号機、いや1号機、2号機と、メルトダウンして燃料が原子炉圧力容器から漏れ出してしまっているこれらの原子炉は、まったく実態が把握できていないということです。
安倍首相は、東京五輪招致演説で、福島原発はコントロールされていると大嘘をつきましたが、実態はコントロールされているか、されていないかの以前の段階です。現状が把握できていないのですから。

しかしこの事態を直視せず、原因も分からないのに「障害になる恐れは小さい」などと繰り返すあり方が、私たちの前に依然としてある大きな危機をより強めているのです。
このことこそが問題の核心です!私たちは、この大きな危機とこそ、きちんと向かい合わなければなりません。
ぜひとも関東・東北を中心に、広域の避難訓練を実行し、現状が把握できていない、この恐ろしく壊れた福島原発が、より破局的な危機に陥る事態に備えなくてはなりません。そのような備えこそがまた、現場の緊張感を高め、危機を真に遠ざける営為につながるのです。

以上の点を踏まえて、原発のウォッチを続けます。
ベータ線核種2400万ベクレルとか、次々と出てくるあまりに高い汚染地に、感覚を麻痺させられてしまわずに、危機と向いあい続けましょう!

なお7月に福島3号機から原因不明の白煙が上がりだしたときの分析を再度、紹介しておきます。

明日に向けて(718)福島3号機は未だ不安定。この現実にいかに向き合うのか・・・。
http://toshikyoto.com/press/914

紹介した東京新聞の記事は以下です。

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福島第一3号機 床の汚染水どこから 東電は格納容器損傷説
東京新聞2014年1月21日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012102000140.html

東京電力福島第一原発3号機の原子炉建屋一階の床を、大量の汚染水が流れているのが見つかった。建屋の床で大量の汚染水流出が確認されたのは、事故後初めて。東電は二十日、格納容器から漏れた水との見方を示したが、濃度からは使用済み核燃料プールなども疑われ、漏出元ははっきりしない。
建屋の床には本来、水がないはずで、これまで判明していない何らかの異常があることの証しだ。作業用ロボットが撮影した動画で確認された汚染水は、三十センチ幅で床を流れ、排水口から地下に流れ込んでいた。大浴場に注がれるお湯のような勢いだった。放射性セシウムの濃度は一リットル当たり二四〇万ベクレル。海への放出が認められる基準の一万六千倍だった。

原因として考えられるのは、冷却水が格納容器内の核燃料にまで届かず、途中で漏れていること。雨が建屋に流れ込むことも考えられる。しかし、どちらの水だとしても、床を流れる汚染水ほどの放射性物質を含んでいない。最近は、まとまった雨も降っていない。
使用済み核燃料プールの水は、セシウム濃度がほぼ一致する。問題は位置が離れていること。汚染水が見つかった場所からみると、プールは格納容器の向こう側になる。プールの水位にも大きな異常はない。
ほかに可能性があるのは、溶け落ちた核燃料を冷やした後の高濃度汚染水が、格納容器の損傷部分から漏れていること。東電はこの見方を取っている。しかし、容器からの汚染水なら、もっと高濃度の放射性物質を含んでいるとみられる。しかも、水は隣接するタービン建屋側から格納容器に向かって流れている。格納容器からの漏出なら、流れは逆のはずだ。

エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「漏出元が格納容器と確認できれば、中の冷却水の水位が分かる可能性があり、今後の廃炉作業に役立つ」と述べる。
現場近くは放射線量が高く、人が近寄れない。今後の調査は難航しそうだ。 (清水祐樹)